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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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103話 北へ

 ウッダレジオンを後にして、フォーレスタへ向かう事になった。

 けれど、フォーレスタの情報は全くと言っていいほどに無かった。


 ブリンクランドの書庫でも見つからなかったし、もちろんブリンクランドの宰相さん達も知らなかった。

 僕らを召喚する時に境の頂の塔で7ヶ国が揃ったはずなのに、お互い挨拶とかしなかったのかと不思議に思う。

 でも、塔では接触が殆ど無かったんだって。


 商人さんの間でも、国名さえまちまちに伝わっていたくらいだ。


「ポレスタ王国と聞いたぞ?」

「コーレストじゃないか?」

「俺は20年ほど前に親父からホラステル国から来た商人に会ったと聞いた」



 国名があやふやのままでも今後交流をする予定はなかったので、気にしなかったって。


『フォーレスタ』という名前は、日向君や董明さんのひらめきから出た名前だった。


「森でしょ? フォレスト王国じゃないかしら?」

「それだと捻りがないな。フォレスタ。フォレスターかフォーレスタとかどうだ?」


 どうって、よその国の名前を勝手に。

 でも、ポレスタとかコラスタより森っぽく聞こえる気がする。


 それでイチクミでは『フォーレスタ』と呼んでいた。

 境の頂の塔の7階、石盤に書かれた使用中の国名。僕らは耳から入る言語は自然に通訳されるけれど、文字は読めなかった。僕は、読めなかった。


 でも、董明さんとか日向君とか頭の良い人達は、耳から得た知識で文字も読めるように勉強したんだって。凄いな。

 それでも固有名詞? 名前とか国名は細かいニュアンスが難しいって言ってた。


 それに耳から入る情報が無ければ単語も読めないって。

 だから商人さんから集めた情報で7階を使用している国が『フォーレスタ』に決定した。

 僕は塔の7階行きの石盤の端っこに小さくフォ〜レスタとペンで記入した。遺跡に落書きしたって怒られるかな。



 勝手な命名については、ブリンクランドもウッドランドもハッキリ知らない国名だったから、問題ないって日向君が言ってた。決めた者勝ち?


 そもそも、宰相さん達がしていた適当な呼び方を、聞いた日向君達が『フォーレスタ』呼びして、いつの間にか『フォーレスタ』呼びが宰相達に広がった。

 この世界ってアバウトすぎない?



 それで僕らも当たり前のように『フォーレスタ国』を口にしていたら、ウッダレジオンのエルフさんが驚いていた。



「そうだ! そうです! フォーレスタ国、そんな名でした。あまりに森の奥深くから出てこない一族の国なので、名前がある事すら忘れていましたよ」



 お隣の国にさえ、忘れ去られた国『フォーレスタ国』、どんな引き篭もりエルフ国なんだよ。


 国名を忘れていたくらいだから、もちろん国交などない。と言うか、森には数多くの種族や国がたくさんあるが、交流せず暮らしているのがほとんどらしい。

 引きニートの森…………。何だろう? そんな言葉が浮かんだ。


 商人ロードも無いらしい。自給自足?

 じゃあ、どうやって行くの?

 獣道を進めば、だいたい辿り着ける、ただ、どこの種族の村かはわからないって。



「召喚を行うくらいだから、それなりには大きな国、だよね?」


「そうだな。どこかの中学が召喚されたくらいだ。国というより部族の集まりかもしれないな」


「それなら、森を進めればどこかの一族に引っかかるな」


「日向君達の話だと、森のうんと北の方って言ってた」


「北へ、行きましょうか」


「そうだな。北へ」




------


 森を進む。ひたすら北へ。

 ウッドランドからウッダレジオンへ向かった時と同じ、ウッダレジオンからフォーレスタへ。

 途中休憩したり、野宿したり、罠を仕掛けたり、お肉を獲ったり、採取したり採取したり採取したり。


 森って楽しいな。

 採取出来る物が山盛りなんだ。

 それに僕のスキルが亜空間倉庫なので、容量を気にせずにもう取り放題!!!獲り放題!採り放題!


 鑑定スキルもあるから、毒のある物もちゃんと見分けられるし。


 ウッダレジオンのエルフさんに貰った紋章の付いた旗とかペンダント。

 これをさげておけば、知らないエルフに襲われる事は多分ないんだって。って、持ってなかったら襲われるって事?


 とにかく目的地の場所がわからない僕らは、向こうからの接触を待つしかない。

 でもなー。引きニートエルフさんだからなぁ。出てきてくれるかな。


 せめて、召喚された中学が森で魔物討伐とかしていてほしい。そしたら僕らを見つけてもらえるのに。



 森の中で仕掛けた罠は、近くの木に文言を刻んでおく。

『獲物がかかっていたらご自由にお持ち帰りください』

 僕には書けないので、タガセンか高田の爺ちゃんに書いてもらう。それと日本語で『ハロー』と。

『こんにちは』は字数が多くて僕には彫れなかった。


 気がついたエルフが僕らを追ってくるか、召喚人を呼んできてくれないかなぁ。




 呼んできてくれた。

 召喚人じゃなかったけど、何と!フォーレスタ国のひとつの部族のエルフを呼んで来てくれた!


 一か八かで北へ進んでいた僕らは無事(?)にフォーレスタ国へと引き入れられた。



 正確には『フォレスタ集合部族中央国』だそう。

 フォーレスタ国は、国とはちょっと異なる、やはり部族の集まりっぽくて、お城は無かった。

 森の中の大きな木の、大きな節の穴の中に作られた隠れ家のような家があちこちにある。

 めちゃくちゃファンタジーっぽい。


 部族長という人の家に案内された。

 ウッドランドもウッダレジオンも美形エルフ(ぽい)だったけど、フォーレスタはひと味違うエルフ(?)だった。


 人間味が少ない? 無機質……と言っても機械とかではなく、そう、植物っぽい。


 見た目じゃなくて、醸しだす雰囲気が?

 血が通っていないとか息をしていないとか、なんか蝋人形みたいだ。

 笑わないし、喋る時に口も少ししか開けない。歯が見えない。

 歯が無い……?

 気になってジッと口元を見てしまったけど、歯はあった。


 それと髪の毛も物凄く長い。地面に引き摺るくらい長い。細くてサラっとしてストンと地面に流れている。

 毎日お風呂が大変そう。お風呂あがりのドライヤーも時間がかかりそう。ドライヤーあるのかな? 無かったら自然乾燥? 自然乾燥で乾くのかな?


 こっちがじろじろと見たせいか、向こうも僕をジッと見ている。あっちからもこっちからも視線を感じて居心地が悪い。

 じろじろ見てすみませんでしたぁ。



 タガセンが前に出て話している。その横に高田の爺ちゃん。僕はふたりの背中に隠れるように移動した。

 けど、背後にいるエルフさん達からの視線も背中に感じる。警戒されているのかな。僕らが怪しい動きをしたらすぐに捕まえる気かも。とにかくジッとしていよう。



 緊張してジッと固まっている事に集中していたので、タガセンの話を全然聞いていなかった。



「会わせていただきたい!」



 タガセンの大きな声で我に返った。何の話?



「次郎坊、近くに日本から召喚した中学の生徒さんらが居るらしい」 



 良かった。

 まだ帰還してなかったんだ? みんな無事なのかな。



「しかし、お疲れではないですか? 今日はもう休まれては?」


「いえ。出来るのならば今、会わせていただきたい。こちらから伺ってもいいのですが」


「そうですか。わかりました」

「呼びに行くより案内した方が早い」



 エルフさん同士で話していた。

 タガセンは僕を振り返った。



「もう少し頑張れるか? ポチャ次郎を休ませてやりたいが、ここで二手に別れるのは危険だ。一緒に行動するぞ」


「あ、はい。大丈夫です」



 僕らはエルフさんの案内で、召喚された中学の生徒がいる場所へ向かった。



 遠い。

 すぐ近くって言ってたのに。

 エルフの1メートルってもしかして僕らの100メートルくらいかも。


 地面を移動していた時はタガセンのマイキーの背に乗せてもらっていたけど、途中から木の上での移動になった。マイキー達はそこで留守番。


 太い木の中は空洞になっていて、階段があった。そこを登って穴から外側へ出る。

 木の周りに足場があって、他の木へと、蔓や枝で繋がっている。

 ここからは空中を移動して行くんだって。


 大丈夫なの? 僕が踏んだらあの枝の渡り橋……折れない? 僕、重たいよ?

 小学生の時、体育館への渡り廊下の板を踏み抜いたのは僕です。先生には怒られなかったけど、クラスの友達にはずっとイジられ続けた。

『お前、石橋を叩いても渡るなよw』

『草凪は橋禁止なw』

『体育館へも端っこのコンクリのとこ歩けよ』


「大丈夫だ。ポチャ次郎、来い」



 タガセンは僕が怖くて渡れないと誤解している。違う、重くて渡れないんです。



「ほら。次郎坊、一緒に渡ろうか」



 高田の爺ちゃんも誤解してるぅぅ。

 僕ひとり分でも重いのにふたりで渡ったら、絶対に足場の枝が折れちゃう!千切れちゃう!



「あの、あの、重いから! 僕重いから枝が……」



 言い終わる前に誰かに抱えられた。

 エルフさん!

 僕を小脇に抱えたエルフさんが、枝通路を軽快に渡った!!!


 良かった。枝通路は壊れなかった。見た目よりずっと頑丈なのかな。

 それなら自分で渡れる、と思ったけど、結局そのままずっとエルフさんに抱えられてあっという間に目的の木に到着した。


 タガセンと爺ちゃんが慌てるように追いかけてきてた。追いついたタガセンがエルフさんから僕を引っこ抜くように取り返していた。

 まるで荷物………はぁっ! これってまさに『お荷物』状態?

 僕って、どこに行ってもお荷物状態……。ちょっと凹む。



 落ち込みつつタガセンの後ろについて爺ちゃんと一緒に木のウロへと入った。

 そこには2人の女の子が居た。


 エルフじゃない、確実に日本人。黒髪黒目の中学生がふたり。

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