101話 まず一歩
例の物語の件をウッドランドに問い合わせもらった。
現在、三国はとても忙しい、なのに、答えは割と早くに返ってきた。
タガセンが宰相さんと部屋にきた。
僕は熱が下がったのにまだ部屋から出してはもらえなくて、退屈していたので聞く耳を立てた。
「ウッドランドとウッダレジオンが大昔、ひとつの国であった事は事実だそうです。が、王家内で何事かがあり、半分に割れたそうです。北側がウッダレジオンに、南側はウッドランドの名前のまま」
「ほらぁ、やっぱりだ。兄弟喧嘩。と言うか姫の取り合いでお兄ちゃんの負け。そんで軍勢付きの妹と打算で結婚したけど意外と仲良くなっちゃったやつ」
って、やないさんが言ってた。
以前に森林地帯の国へ送った密偵が連絡を途絶えたのは、その国に捕えられたわけではなく、森の魔物にやられていたせいだったらしい。
ウッドランド側の魔物を帰還前の生徒達が協力してだいぶ減らしたおかげでウッダレジオンとの国境近くまで問題なく行けるようになった。
ウッダレジオン側の魔物は変わらず減っていないみたいだけど。
「ウッダレジオンに召喚された人達は魔物退治してないのかな」
イチクミの生徒達も帰還してしまい、魔物討伐も難しくなった。 けれど、僕のスキル生産(狩猟)はトリプルだ。
罠を仕掛けるスピードもかなり速くなった。
レベルも上がり、3個ずつ仕掛けられるようになった。
「ここに罠がある、と、発見されても、一歩横を踏んづけたらそこにもあるんだ。ふふふ。3個のうち真ん中は、わざとちょっとだけ見せてる」
森の中の移動中でも何かしら採取している。常に色々とやる事で自然にスキルレベルも上がってきている。
「何でも拾っておけば、罠の材料に困らないから。材料を考えて拾うのは面倒だしさ」
「大倉庫さまさまだな。偉いぞ、坊」
高田の爺ちゃんは笑いながら褒めてくれる。
「うん、ほんとー。もらえて良かった。大倉庫ぉ〜」
「正しくは亜空間倉庫だがな」
タガセンがボソリと呟いたのが聞こえたけど、どっちも大して違いはない。ただの呼びかた〜。
僕が寝込んでいる間に、タガセンは遠出をして大物をテイムしていた。
タガセンの生産(育成)はダブルスキル(スキル2個)のせいか、日向君達より成功率が高いと前に聞いた。
それにテイム出来る数も多い。
現在のタガセンの従魔は大きなコンドルのイチゴーとニゴウ。それから毛の長い巨大な牛、バイソンのマイキーと、体調3メートル以上はあるオオトカゲのティラ。
それと、一番最初にテイムした森狸。名前は付けていないけどモッキーと呼んでいるのを聞いた事がある。
まだテイム枠は残っているけど、移動先でゲットするんだって。
「ディサート国へ行くには砂漠を渡る事となる。蒼井達が砂漠を越えられたのは、一緒に逃げた仲間が砂漠オオトカゲをテイム出来たからと聞いた」
砂漠を渡る時、ティラやマイキーはどうするんだろう。置いていくのかな。
別れるのは寂しいけど、危険な砂漠には連れていけないよね。
自分でご飯を摂れるなら、砂漠の少し前で待っててもらえばいいんじゃない?
タガセンの従魔なんで、僕がどうこう言えないけどさ。
僕の出来る事は、マイキー達のご飯をたくさん用意して大倉庫にしまっておく事。
ほんと、大倉庫スキルがあって良かったぁ。
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僕の体調が良くなって少しした時、僕ら3人はウッダレジオンを目指して、ブリンクランドを出た。
まずは馬車でブリンクランドからウッドランドへ向かう。
ウッドランドの国の中を突っ切るように、北側へと出る。
今まで行った事がない、森林の奥深くへ。
あ、そもそも僕はあまり遠くには行った事がなかった。討伐チームじゃなくて生産チームだったからね。
漆原さんとか魔法移動スキルの人に連れて行ってもらって、ウッドランドやコスタルの街中に行く事はあった。
けど、国の外側を通って行くのは今回が初めて。
ウッドランドまでは他のブリンクランドの人や商人ギルドの人達もいたので、商人ロードを馬車何台もでの移動だ。だから、特に怖くはなかった。
でも、そこから先は僕ら3人だけになった。
タガセンと高田の爺ちゃんと僕。
僕らは森の狭い道を通れる小さい馬車で移動していた。
本当に小さい馬車。日本のミニバンよりも小さい。前にテレビで観た、東南アジアのどこかの国の街中を走っていた三輪車に近いかも。
前にひとり、後ろにかろうじてふたり乗れる。前がタガセンで、それを引くのがバイソンのマイキー君。横をティラがついてくる。上空にはイチゴー、ニゴウが飛んでいる。モッキーはタガセンのお腹にくっついている。
「爺ちゃん、ごめん。僕が太いから狭いよね?」
「わっはっは、大丈夫。そんな事、気にすんな」
草木がぼうぼうの森の中をそれなりのスピードで走り抜けるのは、後部座席に座っているだけでも怖かった。
日本にいた時は、バスや電車に乗ると揺れが気持ちよくてすぐに寝てしまった。
けど、ここでは違う。
三輪車が木の根っこを踏むたびにガコンっと飛び上がるし、窓は無いから横から枝葉がビシバシと飛び込んで殴ってくる。
景色を楽しむゆとりもない。
そんなこんなで緊張して座っているからか、めっちゃ疲れる。タガセンがちょくちょく休憩を入れてくれるのが有難い。
トイレとお茶休憩だけど、たまに採取をしたりする。何でも拾っておくんだ。
それと罠も仕掛けた。…………帰りもここ、通るかな?
タガセンのティラが周りをウロチョロしてくれているので、小物の獣や魔物は近寄ってこなかった。
ウッダレジオンまでは1日では着かない。途中で野宿する事になる。
でも寝る時は、高田の爺ちゃんが土魔術で周りに壁を作ってくれたので、安心して休めた。
翌日、森の中を突っ切っていたら地面の草が倒された道のようなところに出た。
獣道よりも若干だけ広い。
「ウッダレジオン側の商人ロードだろうか」
「たぶん、そうじゃろ。あそこ、木が削られているのは獣の爪ではなく、刃物で削ったあとじゃろな。綺麗すぎる」
草が倒された道を進んだ。
少しして木々の隙間から壁のような物が見えてきた。
その壁の前でタガセンが三輪を止めた。
「国境だろうか?」
「ウッダレジオンの国を囲んだ聖女の壁、じゃないかね」
えっ、あの魔力を吸うと言われている壁?
僕とタガセンのスキルはあまり魔力を必要としなものだけど、高田の爺ちゃんは土魔術だ。
魔力を吸われたら魔法が使えなくなっちゃう。
「ふむ。吸われている感じはせんのう……」
「機能は失われているという事か」
「壁だけ残ったんじゃろな」
壁の途切れているところまで歩いて移動した。
タガセンが壁の向こう側を覗いていた。
「特に、兵はいないな。国境を守る警備もいないのか」
マイキー君の手綱を引いてタガセンが三輪車ごと壁の向こうへと入っていった。
僕と高田の爺ちゃんも後に続いた。
「失礼しまぁす」
特に看板とかがあったわけではないけど、僕らはウッダレジオン国に入ったのかな?
「どうするか、このまま進んでいいものか」
こっちにも森の中へと続く道がある。この道を進むとウッダレジオンに着くのかな?
「向こうから誰か来てくれればいいんだが」
「電話とかないの不便だね」
タガセンがティラを連れてこの辺りの様子を探りに出ていった。
僕と高田の爺ちゃんは壁のところで留守番だ。
手持ち無沙汰だったので壁近辺に罠を仕掛けた。
ウッドランド側より魔物が多い気がする。
三輪車に繋がれたマイキーが居てくれるおかげか、魔物は寄ってこないけれど、木々の隙間から顔を覗かせこちらを伺っているのが見える。
あ、踏んだ。
設置した側から罠にかかっちゃってる魔物がいる。
罠にかかった魔物をいちいち倒すのが手間なので、そのまま放置。
「帰りに腐ってなかったら持って帰ろう」
「罠にかかっても自然に死にはせんだろ。獣でも飲まず食わずで数週間は生きる。魔物だと下手すると数年は生きているかも知れないぞ」
「ご飯なしで1年放置と可哀想〜。帰りにちゃんとトドメをさしていこう」
やがてタガセンが戻ってきたので、三輪車で移動を始めた。
「行ってみるしかない」
ウッダレジオン……。どんな国かな。
ウッドランドとは昔に兄弟国だったって言ってたから、きっと美形エルフの国なんだろうな。
性格の良いエルフさんの国だったらいいなぁ。




