100話 4国
イチクミのみんなが居てくれた時はボヨヨンと過ごす事が出来ていたけど、今は僕と高田の爺ちゃんとタガセンの3人しかいない。
結構、気を張って生きている。
これ、僕にしては頑張っているな。
だって、誰かが話をしている時も、聞き逃すまいと集中していないとならない。
僕は、授業を45分全部聞くなんて出来ないのに、今はタガセンと一緒の時は常にピシっとしている。じゃないと重要な事を聞き逃してしまうからだ。フォローしてくれる太郎君もやないさんも居ないから、全部自分で聞かなくては。
頑張らなくちゃ。
そう思ったら熱を出してしまった。
みんなが帰って10日くらいかな。僕ひとりでイチクミ24人にはなれない。なれなかった……。ダメダメな僕。
色々と忙しいのに、高田の爺ちゃんが僕のベッドの枕元に居てくれる。ごめんなさい。
タガセンは宰相さんのとこ。
「そんなに焦らなくてもええんじゃよ。今のわしらにはもう『360日』というタイムリミットはないからな」
高田の爺ちゃんは、ゆっくりと色々な話をしてくれる。
「別に覚えんでもええ。あとで試験にも出んからな」
笑いながら言った。
今は、ブリンクランド、ウッドランド、コスタルの3国がしっかりと手を合わせて、色んな事に取り組み始めたんだって。
壁造りとか、特産物のやりとりとか、あと、魔物討伐とかも。
それから、一緒に召喚をした他の4国へのアプローチも進めているんだって。
ディサート国、アンブリア国、フォーレスタ国、ウッダレジオン国。
「うぅ……、国名覚えられるかな、ここテストに出る?」
「出ないよ」
「良かった……」
僕が熱で寝込んでいる間に、4国の場所がだいぶ明らかになったんだって。
こちら3国の商人ギルドとは別の商人と連絡が取れたんだ。
滅多にかち合わない商人グループが、ギリギリの境界線で偶然に出会ったって。
森グループの商人一団と、それとは別に山岳グループとも。ブリンクランドの商人ギルドが根気強く遠方へと足を運んでくれていたって。
一部途切れて危ない場所を通りはするけど、すぐにあちら側の商人ロードに出る事が出来たって言ってた。
僕らのために危ない橋を渡ってくれて本当にありがとう。でも無事で良かった。
それで、4国に行く計画を立て始めているんだって。タガセンはそれで席を外している。
まだ向こうの国内の情報までは入ってこないけど、道が判れば行く事が出来る。
「蒼井達の話からも、ディサートはかなり荒れた国のようだな。本郷中の生徒の扱いも酷いものだと聞いた。わしらが帰還するためにもそこに向かうのは必須なんだがな……」
「ジャイアントとその取り巻きも一緒に帰還?」
「む、出来れば、だが。蒼井達の話だと自らクラスメイトに手をかけたと聞いた」
「戻りたがるかなぁ。戻ったら殺人犯になっちゃうよね」
「まぁ、接触の機会があれば、帰還する意思があるのか聞ける。本人が選べばいい」
「そっか……。そうだね」
「あとは森林地帯と山岳地帯か」
タガセンが部屋に戻ってきた。僕はベッドから起きあがろうとしたけど、高田の爺ちゃんに布団の上から抑えられた。
「森林地帯はウッドランド国側からの国境を越えて森を進むしかない」
「こちらの3国が同盟を組んだ事、それから国交を開いて欲しい事をどうやって知らせるか」
「宰相から書簡は預かった」
「我々の帰還はディサートの召喚陣からになりますよね。聞いた話ですとその国の国交を開くのは大変そうですな」
「そうだな。簡単に召喚陣を使わせてもらえる気はせんな。本郷中は蒼井達と一緒に逃げた2人が亡くなっている。その前に5人が処刑されたとも言っていた。少なくとも帰還の席が10人分の空きはある。果たして残り15人のうち、何人が生き残っているか」
「かと言ってこの国、ブリンクランドにディサートと戦争してくれとは言えない……。言うつもりもないが」
「山と森……どっちが行きやすいかな」
距離で言うと……どっちが近いんだろう。
タガセンが布団の上に地図を広げてくれた。
「ここがブリンクランドだ。その上にウッドランド。ブリンクランドのこの辺りからもう森林だな。下側にコスタル」
「平原の左側が徐々に山脈になり、この大きな畝の向こう側が山岳地帯のアンブリア国ですか。距離的にはアンブリアが近く見えますが、山脈越えは厳しそうですな」
「こっちは?」
「右側は聳り立つ山脈で遮られて、国があるのかも知られていないそうだ」
「昔は12ヶ国あったそうだから、国は滅びても小さな村はあるかもしれんな。だが今回そちら側は無視だ」
「となるとやはり、ウッドランドを通過して森林の中の国境を目指すのが進みやすいか」
「森林の先にあるのはウッダレジオン国、その先にフォーレスタ国か」
「ウッドランドとウッダレジオン……名前が似てるね。昔は一緒の国だったのかな。途中で仲が悪くなったとか」
あれ?
なんか、どこかで聞いたような、見たような?
ランド……ランド……国。レジオン………あ、ああ!
「思い出した! 何かの文献に載ってた。やないさんが小説っぽいーって言ってたやつ」
「何だ?」
「昔、ウッドランド国で、仲良しの兄弟が美しい姫を争って、負けた長男が国を追い出されて、奥の森に引き篭もったとか言ってた。やないさんが読んでた文献のお話。長男の名前がレジオン……じゃなくてレギオンだ」
「うん? ただの物語じゃろ?」
「それがね、第一章は弟の裏切り編で兄が国を追放されたんだけど、第二章があって、追い出された第一王子を追いかけて姫の妹が軍勢連れて押しかけて、そこに出来た国がウッダレジオン!」
「それで、どうなった? 第三章はあるのか?」
「あった……はず。なんだったかな、僕あまり興味なくて流して聞いちゃってた。ええと確か第三章で完結だけどイマイチとかやないさんが言ってた。兄王子×妹姫、弟王子×姉姫でなんかイチャイチャの章で、山場が無いとかなんとか」
「ただの物語か」
「ウッドランドとウッダレジオンが昔はひとつの国だった。しかし途中で仲違いで別れた、となると尚更、国交の復活は難しいんじゃないかね」
「え、でも、第三章でそれぞれベタベタの仲良しでハッピーエンドが、もしも現実でも本当の事なら、お互いに何で仲悪くなっているのか、今生きている人は知らないんじゃない? それにイチャイチャで子供も孫もたくさんいたら、案外、森を越えて結婚している子孫もいたり、しないかな?」
「あー、どうだろな?」
「そんなに単純じゃないとは思うが、一度ウッドランドの王族に聞いてみるか」
聞いてみると言いつつも、タガセンはそっぽを向いた。高田の爺ちゃんには子供のように頭をぐりぐりと撫でられた。
やないさんから聞いた話なのにぃ。




