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92.横取りされる前にサッサと拾わないとね!

 ムカデ型魔物の死体がドロップアイテム化して、金貨五枚に姿を変えた。

 一先ず、これらも私がアイテムボックス内に収納したけど、本当はアデラとエルマの収入にするべきなんだろうな。

 まあ、後で考えよう。



 ふと思ったんだけど、このダンジョン内では、死んだ生き物は全てドロップアイテム化するんだよね?

 だとすると、魔物達のエサって何だろう?


 喰い殺そうとしても、食べる前か、食べている最中かは分からないけど、結局はドロップアイテム化しちゃうってことでしょ?

 それで、私はチャットボット機能を立ち上げた。


『Q:ダンジョン内の魔物達のエサって何?』

『A:エサは不要』


『Q:どうしてエサ無しでいられる?』

『A:魔物達は、ダンジョン内に溢れる魔素エネルギーを吸収して生きている。これは、ダンジョン内だけで生じる特殊現象』


 そうなんだ!

 ってことは、魔物達は、飽くまでも自己防衛本能によってのみ戦っているだけで、捕食が目的ではないってことか。

 魔物達が、ドロップアイテムを欲しがるとも思えないし……。



 さらに私達は先に進んで行ったんだけど、所々に硬貨が落ちていた。

 銅貨や銀貨が多かったけど、たまに金貨や小金貨も落ちていた。


 これらの硬貨は、基本的に魔物の死骸に由来するモノなんだろうけど、もしかしたら、一部は、このダンジョン内で命を落とした人間の成れの果てなのかも知れない。


 そんなことを考えながらも、私達は、それらの硬貨を有難く回収していったけどね。

 貴重な生活費だもん!



 下の階層に入った。

 その直後、私は探査魔法で大量の魔力源……つまり魔物の存在をキャッチした。

 これは半端な数じゃないよ。大丈夫かな?


 そして、数分後、私達は巨大なカマキリ型魔物の軍団と御対面した。

 大きさは、体高大体5メートルくらい。

 しかも、その数、数百匹! もう数えきれないや!



 例の如く、護衛のためにエルマが私の前に立ち、アデラが突撃する態勢を取った。

 ただ、いくらアデラが強くても、この数に向かって突進するのは自殺行為だよ。


 それに、エルマはマジで私を守る気でいるみたいだけど、アデラが前方で食い止められる数だって限界がある。

 当然、エルマの方にも、相当な数の魔物が押し寄せてくるのは目に見えている。

『撤退しましょう』

 って言ってくれてもイイのに。


 二人が引かないなら、取るべき方法は一つかな?

 と言う訳で、

「結界!」

 私は、人間一人がやっと入れる程度の大きさの円筒型の結界……と言うかバリヤーを二つ張って、アデラとエルマを、それぞれの中に閉じ込めた。


 これなら、二人がカマキリ型魔物に襲われることは無い。

 結界を張られていないのは私だけ。

 ここは、私一人で戦う。



 ただ、急に結界内に封じ込められたからね。

「ラヤ様。何をされるのです?」

 声を大にしてアデラが私に聞いて来たよ。

 当然の反応だろう。


「さすがに、この数だからね」

「そうです。だから、私とエルマでラヤ様をお守りしないと!」

「二人とも死なせないって言ったでしょ」

「しかし、それではラヤ様が」

「さっき、アデラがムカデ型魔物に噛まれるようなことをしちゃったお詫びだよ」

「そんなこと、私は気にしておりません。早く出してください。ラヤ様!」


 アデラは主人思いのイイ騎士だよ。

 バリヤーを両手でドンドンと強く叩きながら、私の身を案じて涙を流してくれている。



 一方のエルマも、

「ご主人様。早く出してください。私がご主人様を守るんですから……」

 自分の使命感を持っている。

 本当にイイ子だ。

 だからこそ、二人を絶対に死なせない。



 ここで私は、例の最凶魔法を解放する。

 二人を結界内に閉じ込めた一番の理由は、二人が私の前方に立たないようにするため。つまり、ターゲットの枠内から除外するためなんだ。


 私の魔法の仕様は、飽くまでもシルリア世界の装備プラスアルファ。

 つまり、最凶魔法は、

『シルリア世界の人間には発動しない』

 って状態のままなんだよね、きっと。


 それだと、この世界の人達を殺せてしまうってことだよね?

 だから、万が一にも二人に余波が行かないようにする必要があったんだ。



 敵は多数だけど、私は、たった一言叫べばイイ。

 それで全てが解決する。


 私は、アデラとエルマの前に出ると、

「死ね!」

 と唱えた(?)。

 そして、当然の如く、次の瞬間、カマキリ型魔物の首が次々と胴体から切り離されて宙を舞った。


 まさに一瞬の出来事だ。

 この後、すぐに私は探査魔法を発動したけど、この辺り一帯からは魔物の反応が完全に消えていた。

 この一撃で、全滅したようだ。



 私は、二人の結界を解いた。

 アデラは、脱力してその場に座り込んでいた。

 信じられない光景だったんだろう。ある意味、衝撃映像だもんね。


 一方のエルマは、私の方に全速力で駆け寄ると!

「凄いです! ご主人様!」

 その勢いに乗って私にダイブして抱き付いたよ。



 カマキリ型魔物の死体がドロップアイテム化して銀色の大きな硬貨に姿を変えた。

 でも、これって何?


 すると、これを見てエルマが、

「この魔物って、白金貨になるんですね!」

 と言った。


「白金貨って?」

「金貨十枚分の貨幣です」


 ってことは、十万TEN?

 日本円にして一枚当たり百万円ですか?

 さすがにこれは、一枚たりとも見逃せない。


 私は急いで、

「結界!」

 この近辺に他人が侵入できないように結界を張った。


 そして、

「アデラ、エルマ。急いで回収!」

「は、はい!」

 私達は、大急ぎで白金貨を拾い集めた。正直、これだけあったら、しばらく遊んで暮らすのが普通だろう。


 ハイリスク・ハイリターンとはよく言ったものだ。

 たしかに、冒険者が命を懸けてダンジョンに来るのが理解できる。



 一通り拾い終えた後、私は、

「探査魔法。ターゲットは白金貨!」

 念のため探査魔法を発動した。


 これは、探査と言うよりも金属探知だね。

 白金貨の拾い漏れがないかを念入りにチェックした。

 多分、大丈夫。

 これで白金貨は全て回収し終えた。


 そして、結界を解除。

 すると、この直後、アデラが私に聞いて来た。


「さっきの魔法は、いったい何なのでしょうか?」

「首ちょんぱ魔法のこと?」

「はい」

「異世界の堕天使様にいただいた魔法でね」

「堕天使なのに、様付けですか?」

「ラフレシア様って言って、私の人生を大きく変えてくれた恩人なんだ」

「堕天使なのに、恩人……ですか?」

「うん。それで、様付け。その後、私は女神様の依頼で、いくつかの世界を渡り歩いて来たけど、女神様は必要に応じて、この魔法を使える状態にしてくれているんだ」

「そうでしたか。ただ、思ったのですが、魔法で食事が出せて、強力な結界魔法も使えて、武器も出せて、その上、こんな一撃必殺の魔法を与えられていて、ラヤ様が私やエルマを奴隷にした意味が分からなくなりましたけど? 正直、奴隷を抱える必要性が無いように思いまして」


 やっぱり聞いて来たか。

 たしかに、そう思われても不思議じゃないよね。


 実を言うと、今回は長丁場になりそうって思ってね。

 だから、仲間が欲しかったんだよ。

 アデラとエルマを選んだのは、たまたま出会いがあったからだけど……。


「んーとね。立場上は主人と奴隷ってことになっているけど、私は二人のことを奴隷だなんて思っていないから」

「えっ?」

「私は、この世界に派遣されてきた身だから、この世界のことを余り知らないし、仲間もいない。なので、二人には私の心強い仲間になって欲しいって思っているよ」

「そんな、滅相もございません」

「それとね。私が、この世界に来た理由だけど、昨日話した通りマジで魔獣討伐だから」

「えっ?」

「当然、危険なところに行くことになるでしょ? それで、魔獣から自分の身だけでも守れる人じゃないと困るって思って、それで、このダンジョンに来て確かめさせてもらったんだ。二人共、これなら大丈夫って思えたよ」

「……」


 魔獣討伐の話が戯言ではないことが分かって、二人共、固まっちゃったみたいだな。

 さすがに魔獣相手じゃ怖いよね?



 実は、私が、この世界に来たのは魔獣バランスを戻すためなんだ。

 五つの種族の交流のため、女神ロリダ様は、五つの大陸を合体させて一つの超大陸を形成したけど、これによって問題も発生していた。


 大陸が大きくなり過ぎたため、中央部は、かなりの陸面積が砂漠化して、人が住める面積が狭まったってのはあるけど、女神様からすれば、それは大した問題じゃない。

 五大陸がぶつかったことで、部分的に地場の狂いが生じていて、それが原因で自然界の魔力の流れにも歪が生じているんだって。



 少し前までは、その地場の狂いも大したことは無かったけど、ここ数年で一気に状況が悪化して、今では魔力の流れが大きく歪み、この世界では魔獣が大量発生しているらしい。

 要は一部の地域で魔力過多の状態となり、魔獣の成長と繁殖が早いってことだ。


 女神様からすれば、そっちの方が砂漠化よりも問題らしい。

 それで、魔獣の数を本来の数以下まで間引いて欲しいって言うのが、ロリダ様から私に来た一つ目の依頼だった。



 大量発生個所は、特に地場の歪みが大きい三か所で、そのうちの一か所が、ヘリコプリオンの街から東方に百キロ程離れたところにあるアカントーデス平野だそうだ。


 それだけ激しく大陸がぶつかっているんだったら、

『何故、平野部? 派手に盛り上がって山になっているんじゃないの?』

 って思ったけど、元々海底数キロにあったところが、大陸同士の衝突によって押し上げられて平野になったらしい。

 そこには、今、森林や平原があって、多数の魔獣が生息している。


 当然、魔獣大量発生地域では沢山の怪我人がいるし、魔獣と戦って身体の一部が欠損した人達も決して少なくない。

 それで、その人達を上位治癒魔法で救って行くことが、私に来た二つ目の依頼。

 こう言った背景から、今回は上位治癒魔法を与えられたってことだ。



「二人共、私と一緒に魔獣討伐に来てもらえるかな?」

「わ……分かりました。既に私は、一度死んだも同然の身です。この命、ラヤ様に捧げます。ラヤ様とご同行させていただきます」


 そう言いながら、アデラは片膝を地についていた。

 まだ半分ビビっている感じは見え隠れしているけど、一緒に来てくれる覚悟を決めてくれたんだね。

 本当に有難いよ。


 一方のエルマも、

「私もご主人様とご一緒させていただきます」

 と言ってくれた。

 本当は怖いだろうけど、私への忠誠心の方が大きいってことだろうね。

 本当に律儀な娘達だよ!


「じゃあ、今日は、ここで一旦引き上げようか? 旅費も滞在費も十分手に入れたし」

「分かりました」


 本当は、もうちょっとダンジョンで稼いでもイイかなって思ったんだけど、本来、私が向かうべきところは、ヘリコプリオンの街を挟んで、ここから反対側にあるんだよね。

 なので、私達は、ここで撤収して、ちょっと遅くなったけど、ダンジョンの外で昼食をとることにした。

 ただ、ミスリルの剣と防具は目立つな。


「二人共、収納魔法は使える?」

「アイテムボックスなら一応使えます」

「私も使えます!」

「じゃあ、剣と防具を収納してもらえるかな? さすがに、他の冒険者達に狙われるって言うか、盗まれそうだし」

「たしかにラヤ様が仰る通りですね。では、失礼致します」


 二人が剣をアイテムボックスに収納した。

 さらに、防具を外してアイテムボックスに収納してくれたけど、そう言えば、まともな服が、今、身に着けている一着しかない状態だったんだっけ。

 あとで、いくつか見繕ってあげよう。



「昼食は何がイイ?」

「私は何でも構いません」

「エルマは?」

「BLTサンドが食べたいです!」

「じゃあ、それにしようか。出ろ!」


 と言う訳で、エルマの要望により、私は物質創製魔法食料バージョンでBLTサンドを出した。

 勿論、三人で美味しくいただきました!



 その後、私達は、三時間かけて、ヘリコプリオンの街へと戻った。

 帰りは徒歩だよ! アデラとエルマが馬車に乗るのが辛いみたいだから仕方なくね。

 でも、その分、きっと夕食は美味しく感じると思うよ。



 ちょっときつかったけど、ヘリコプリオンに到着。

 それ相当に疲れたけど、まあ、回復魔法をかければ、何の問題も無く復活できるだろう。

 回復魔法は怪我や病気からの回復だけじゃなくて、体力もしっかり回復させてくれるからね。


 エディアカラ世界では、プルプップ星まで空間移動した時に、完全ガス欠状態まで行っちゃって、回復魔法すらかけられなくなっちゃったけど。

 もう、あんなヘマはしないよ!



 昨日泊まった宿はチェックアウトしちゃったので、別の宿を探すことにした。

 それと明日は、早速だけどアカントーデス平野に向けて出発する。

 しかも徒歩だよ!


 なので、私達は、アカントーデス平野のある側……東側のゲートに極力近い宿に宿泊することにした。

 今日の宿は、昨日の宿に比べると数段ランクは落ちたけど、アデラとエルマは、これくらいの方が落ち着くみたいだ。


 ただ、二人共、質素と言うよりも、私に余りお金を使わせたくないって感じなんだよね。

 三人分の宿泊料って、バカにならないから。

 でも、今日のダンジョンでの稼ぎを考えたら、全然問題無いんだけどなぁ。

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