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79.スライムを見たのって初めてじゃない?

 今の私が使える魔法は限定されている。

 エディアカラ世界……チョンマゲ男達がいた世界ね……あの世界にいた頃の私なら巨大なファイヤーボールも出せた。

 なので、コイツ等を脅かして遠ざけることくらい簡単だった。飽くまでも、あの世界での魔法装備ならね。


 でも、今の私が使える攻撃魔法は『首ちょんぱ』だけだもんね。

 いくら何でも、いきなり首を刎ねるわけには行かない。


 と言うわけで、

「(物質転送、服脱げろ!)」

 私は、物質転送魔法でコイツ等の服だけ十メートル先に移動させた。つまり、コイツ等は今、全裸だ。


 ただ、何気にナニが反応しているのが気になったよ。

 既に、私相手にヤル気……厳密には襲う気マンマンだったってことじゃない?



 取り敢えず私は、

「キャー!」

 ワザとらしく悲鳴を上げてみた。


 更にダメ押しの一言。

「犯されるぅー!」

 すると、アラサー受付嬢が、全裸男子達に、

「アナタ達、いったい何を考えているの? この娘と私を集団で襲う気?」

 と怒鳴りつけながら手元の手動サイレンのハンドルを力強く回していた。

 ただ、悪いけどアンタを襲う気は無いと思うよ。



 激しく鳴り響くサイレンの音。

 すると、アチコチから兵士達がゾロゾロと集まってきた。

 さすがに、これには全裸男子達も焦った様子だ。


 Fランク未満の治癒術師が、

「いえ、そんなことは……。俺達も勝手に服が消えて驚いているんです」

 と弁解していたけど、

「言い訳無用! そんなとこオッ勃ててナニ言ってるの!」

 アラサー受付嬢は全然聞く耳を持たない模様。

 全裸男子達は、そのまま兵士達に連行された。



 一方の私は、このドサクサに紛れてダンジョンの中に単身で入って行った。

 危険な魔物がいても、首ちょんぱ魔法で対処できるから問題ないもんね!


 一先ず、私はチャットボット機能を立ち上げた。

 何かあっても、すぐに質問できるよう、備えたってことだ。



 ダンジョンに入って数分後、私の目の前に現れたのは、一匹のスライムだった。

 そう言えば、スライムの実物を見るのって初めてじゃないかな?

 今まで、いくつかの異世界を巡ってきたけど、出会ってきた魔物とか魔獣って、ゴツイのばかりだった気がするもん!


 カワイイなぁ。

 ちょっと触ってみたいけど、大丈夫かな?

 と言うわけで、早速、チャットボット機能に相談した。


『Q:スライムに触っても大丈夫?』

『A:やめた方が良い』


『Q:何故?』

『A:この世界のスライムは、触れた生物を見境なく溶かして吸収する』


 えっ?

 それって、結構怖いんですけど。

 スライム最弱って話を根底から覆しそう。


『Q:溶かさせなくする方法は無い?』

『A:従魔法で従魔にすれば良い』


『Q:私は従魔法が使える?』

『A:一応使える』


 知らなかった……。私って従魔法が使えたんだ。

 だったら、私の配下にしてしまえばイイってことか。


 でも、私はこの世界にずっといるわけじゃないしなぁ。

 シルリアの世界に戻る時に連れて帰っても大丈夫かな?


『Q:スライムを従魔にしてシルリア世界に持ち込んでも大丈夫?』

『A:異世界間外来種として問題になるため、絶対に持ち込むべきではない』


『Q:シルリア世界にスライムは存在する?』

『A:希少種として存在する』


『Q:生息地は?』

『A:イアペトゥス町の北の森』


 そうだったんだ!

 今まで、一度も見たことが無かったから居ないんじゃないかって思っていたよ!

 だったら、シルリア世界に帰ったらスライムを探すことにしよう。


 私は、スライムをそのままスルーして先に進んだ。

 別に魔物だからってムリに殺す必要は無いもんね。

 カワイイし。



 次に私が見たのは頭に鹿のような立派な角を生やしたウサギだった。

 これって、ジャッカロープじゃない? 


 地球では剥製があるけど、実はウサギと鹿を合わせて作っていたなんて話もあるし、実物が死体で発見されたって話もあったけど、それは通常のウサギが『ウサギ乳頭腫ウイルス』に感染して角状のイボが頭から生えていたって結論付けられたんじゃなかったかな?


 でも、ここは異世界だし、きっと本物だよね?

 面白いモノを見させていただきました!

 これもカワイイし、目の保養にはイイね!


 まあ、これも私に襲い掛かって来たわけじゃないし、スライムと同様にスルーして、私はさらに先へと進んで行った。


 別にダンジョンで宝探しするつもりも、ムリに魔物を討伐するつもりも無い。

 兎に角、どんなものか見てみたかっただけだよ。

 ジャッカロープのお陰で『兎に角』って言葉がシャレっぽく見えるよ。

 まあ、それは置いといて、私に危害を加えてくる魔物がいたら容赦しないけどね。



 次に出会った魔物はゴブリンだった。

 ただ、妙に私のことを警戒している感じだ。


 ゴブリンと言えば、女性を犯すイメージだけど、何気に私から視線を外して怯えているように見えたんだけど、何で?

 これについても私はチャットボット機能に聞いてみることにした。


『Q:もしかして、このゴブリンは怯えている?』

『A:怯えている』


『Q:何故?』

『A:ラヤが殺人魔法を持っていることを本能的に察知しているため』


 それって、さっき私を誘って来たパーティの連中よりも賢いんじゃない?

 アイツらは私の危険度を見抜けなかったわけだし。

 まあ、別に、私に危害を加えなければ、何もしないから怖がらなくてもイイよ!


 でも、やっぱり怖いんだろうなぁ。私が小さく足を一歩踏み出したら、スタコラサッサと逃げて行ったよ。



 それにしても、罠とか仕掛けてないのかなぁ?

 ちょっとチャットボット様に聞いてみよう!


『Q:このダンジョンに罠は仕掛けてある?』

『A:ある』


『Q:どんな罠?』

『A:踏んだらスタートゲートの外まで戻される』


『Q:他には?』

『A:ない』


 うーん。

 何だか、全然命がけって感じが無いんだけど?


『Q:このダンジョンの等級って?』

『A:超初級の初心者向け』


『Q:このダンジョンで最強の魔物は?』

『A:ゴブリン』


 おいおい。マジそれ?

 じゃあ、私は、あの受付嬢(?)に初心者向けのダンジョンに入るのすら危険だって思われたってこと?

 私って、そんなにカヨワク見えたんだ。


 でも、ゴブリンと言えば女性を性的に襲うってイメージがあるし、私には超危険って思われても不思議じゃないか。

 永遠の十四歳の身体だし、成人していない女性一人じゃ、尚更お勧めできないってことだね。


 でも、超初級で納得。

 じゃなきゃ、私を誘って来た男子達のレベルで相手になるわけないもんね!



 ただ、その後、私は超初級ダンジョンってことで、急に警戒心が解けてしまったんだ。

 多分、それが災いしたんだろう。

 それから僅か数分後、

「ブー! ブー!」

 突然、私の周りで激しくブザーが鳴り始めたんだ。


 そして、その数秒後、私は瞬間移動でダンジョンのスタートゲートの前まで強制的に戻されていた。どうやら罠を踏んだらしい。

 完全に気のゆるみが原因だね。

 これが、マジで危険なダンジョンだったら命とりだよ。反省しないと。



 もうちょっと先まで見てみたかったけど、そろそろ一旦、コルダイテス市に戻って宿を探さないといけないし、時間的には丁度良かったかも知れない。

 まあ、このダンジョンには、また後で来ればイイや。


 と言うわけで、

「転移!」

 私は、転移魔法でコルダイテス市の中央付近まで一気に移動した。


 さっき、コルダイテス市内からダンジョンまで移動するのに、市のゲートを通らなかったからね。

 なので、最初に入った時に発行された証明書を持っているから、ダンジョンの前から、ここまで直通で来ても問題無いんだ。



 そして、宿探し。

 幸運なことに、大聖殿から百メートルくらい離れたところに、ちょっとお高そうな感じだけど宿を発見した。


 取り敢えず、ここでイイか。

 私は、その宿にチェックインした。



 ルフィナの身体に魔石を埋める儀式が行われる日まで、私は、この世界にいることになるだろう。

 二週間後だけど、さすがに、その間ずっと同じ宿に連泊ってわけにも行かないかな。

 なので、この宿には三泊することにした。


 …

 …

 …


 次の日、私は、コルダイテス市から三千キロ離れたエデスタスと言う町に来ていた。

 実は、ここには最上級者向けのダンジョンがあるからなんだ!


 早速、私は意気揚々と入ろうとしたんだけどさ。でも、ダンジョンの前にいた兵士に、

「ちょっと君。ここは一人での入場は禁止だよ!」

 入場拒否された。

 しかも、複数人で肉のバリケードを作るが如く、完全に入口を塞がれたよ。


「でも、記念に中を覗いてみたいんですけど」

「ダメダメ。ここはS級冒険者でも一人で入ってはイケナイことになっているんだ。例外は認められないよ」


 うーん。残念だな。

 転移魔法でチャッカリ入れるんなら、既に入っているところなんだけど、実は、この世界のダンジョンには特殊な結界が張られていて、個人の転移魔法での出入りは出来ないようになっているらしいんだよ。


 ダンジョン側から強制退場させられる場合には転移させられるけど、これは個人の魔法じゃないから有効ってことね。



 まあ、後で隙をついて入ることにしよう。

 出来るかどうかは分からないけど。

 仕方が無いので、その後、私はエデスタス周辺の観光地巡りで時間を潰したよ。


 …

 …

 …


 その二日後に、私はルフィナに会って様子を見させてもらった。

 特に問題は無し。


 その足で、私はアースロプレウラ大聖殿に行き、ドロフェイの様子を伺って……と言うか覗いてみたけど、特に慌てた様子は無かった。

 多分、魔石が抜かれたことにも、ルフィナが呪いを跳ね返していることにも全然気付いていないみたいだね。


 もっとも、ルフィナの呪いは跳ね返されているけど、呪いをかけた人に戻ってくるわけじゃなくて、単にルフィナの体内に呪いが届かなくなっているだけみたいだね。

 なので、ドロフェイにカウンターパンチが飛んでくるわけじゃないし、それ故に、もうルフィナに呪いが効いていないことに気付いていない部分もあるんだろう。



 そして、ルフィナを治療してから丁度一週間が過ぎた。

 私がルフィナの家の近くまで来ると、ルフィナの家を覗いているドロフェイの姿があった。しかも、この時、彼はムチャクチャ驚いた顔をしていたよ。


 本来なら、ルフィナはドロフェイの強力な呪いによって、遅くとも今日あたりには死を迎えているはずだった。

 それが元気な顔をしてピンピンしているんだから、ドロフェイとしては信じられない光景だろう。


 普通ならここで、

『何故だぁ! 何故死なない!』

 と大声を出したいところじゃないかな?


 でも、絶対に外で口に出すことは出来ない台詞だ。

 彼は、口から出かけた言葉を押し殺して、何食わぬ顔でその場を立ち去った。



 もし、ドロフェイの体内に魔石が残されていたら、多分、ルフィナの身体から湧き上がるオーラを見て、彼女の体内に、魔石が埋め込まれていることに気付いただろう。

 ところが、今、ドロフェイの体内には魔石が一欠片も残っていないし、先ず、コイツ自身が魔石を失ったことに全然気付いていない。


 と言うか、周りの神官達は気付いているはずだよね?

 少なくとも、ドロフェイから放たれる魔力量が以前とは全然違うはずなんだからさ。


 それでいて、何も言われていないって?

 もしかして、ドロフェイは部下達からメチャクチャ嫌われているんじゃないかって、ふと思ったよ。

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