78.リサイクル?
私は、ルフィナの部屋に通された。
この時、ルフィナは眠っていたけど、呼吸が辛いのか、結構、咳が出ていた。しかも、生体反応が非常に弱くて、いつ死んでもおかしくないようにも思えた。
この状態で、本当に魔石を入れる日まで……二週間も持つのだろうか?
一週間も持たなそうだけど?
私は、
「スキャン!」
診断魔法を発動した。
どんな容体なのかを把握するためだ。
その直後、私は愕然とした。
彼女の身体は、見た目以上にボロボロだったんだ。
呪いに起因すると思われる悪性の腫瘍が身体のアチコチにできていたし、肺と気管支が炎症を起こしていた。
「症状が出たのは何時くらいからですか?」
「二週間ほど前です。アースロプレウラ大聖殿に行って、ルフィナの身体に魔石を入れる申請をした翌日からでした」
「そうですか」
やっぱり、ドロフェイは、
『魔石を入れる前にルフィナを殺してしまおう』
って考えたと見て間違いなさそうだね。
先ず、私は、
「結界!」
取り急ぎ、ルフィナの身体を魔力結界で覆った。
他人の魔力を遮断するため、つまり、これ以上、呪いによる負のエネルギーが彼女の身体に注ぎ込まれないようにしたってことだ。
ただ、私の魔力だけは通せるようになっていた。
でないと、ここから先、私の作業が進まなくなるからね。
当然の措置だよ!
既に彼女の体内には大量の呪いが込められていた。
これを取り除かなければ、彼女の身体は病に蝕まれ続ける。
それで、私は、
「浄化&高次治癒魔法照射!」
彼女の体内から負のエネルギーの除去と呪いに起因する腫瘍の完全除去、さらに肺や気管支の炎症を鎮めた。
さらに私は、
「再スキャン!」
腫瘍の転移が無いかを確認した。
現状では大丈夫そうだ。
ステータス画面にも腫瘍ゼロ&転移無しと出ていたよ。これで山は一つ越えた。
ルフィナの表情が良くなってきた。
でも、まだ顔色は悪かった。悪性腫瘍が摘出されようが、呼吸器の炎症が治まろうが、すり減った体力は、まだ取り戻せていない。
と言うことで私は、
「体力復活!」
魔法で彼女の身体にエネルギーを注入した。これで、ようやく彼女の顔に赤みがさして来た。健康体を取り戻せたようだ。
恐らく、結界魔法に守られている間は大丈夫だろう。
でも、ドロフェイが結界魔法に気付けば、仲間を集って集団で呪いをかけて来る可能性がある。
それも、結界を突き破るレベルの強力なヤツをね。
そうなったら元の木阿弥だ。
急がないと。
向こうに気付かれる前に、こっちも次の手を打たないとイケナイ。
私は、ルフィナの母親に、
「大神官ドロフェイの居場所は分かりますか?」
と聞いた。
「大神官様でしたら、アースロプレウラ大聖殿にいらっしゃると思います。アースロプレウラ大聖殿は、このコルダイテス市の中央よりも少し北側にあります」
「そうですか」
「でも、どうして大神官様が?」
「ルフィナ様に呪いをかけた張本人だからです。これもギガンテア様からの確認をとっています」
「やっぱり……。そう言う噂はありましたけど、まさか、本当だったなんて」
「今すぐ大神殿に行ってきます。ルフィナ様の身体に結界を張ったことを気付かれる前に、こっちもやるべきことをやらないとなりません。では、また来ます!」
そう言うと、私はアースロプレウラ大聖殿に向けて転移した。
本当に、今回は転移魔法を授けていただいて感謝だよ!
もし、授けてもらえなかったらマズかったんじゃないかな?
絶対に、こっちの動きが遅くなってドロフェイに結界がバレちゃう気がするよ!
…
…
…
アースロプレウラ大聖殿前に到着。
別に入場料を取られるわけでもないみたいだし、私は何食わぬ顔で大聖殿の中に入って行った。
そして、
「(ステータス画面チェック)」
と心の中で呟き、ステータス覗き見魔法……じゃなくて診断魔法を発動した。
実質的には、大聖殿の中にいる人達のステータス画面を覗き見したわけだけどね。
勿論、全てを見ることは出来ないよ。診察&治療に必要な部分と名前、職業、役職くらいに限られる。
それから、私にとって必要な情報であれば、特別に備考欄を使って開示してもらえることもあるか。
でも、名前と役職が分かれば十分。
近くにいる人達から順にステータス画面を見せてもらった。
そして、ちょっと遠くの方に偉そうな顔をしたジジイを発見!
ソイツのステータス画面に、
『名前:ドロフェイ』
『役職:大神官』
『備考:魔石が体内に十個埋められている』
と書かれてあった。
余裕の表情を見せているってことは、多分だけど、まだルフィナに張った結界に気付いていないっぽい。
私は、ドロフェイに近付いて行った。
そして、
「(診断&異物確認)」
彼の全身をスキャンして、体内にある異物……つまり魔石の位置を確認した。
たしかに両腕に一個ずつ、両足に二個ずつ、胸部に二個、腹部に二個の計十個の異物を発見した。これらが魔石ってことか。
トモティ世界でイリヤ王子から頂いた指輪に付いていた魔石とは、見た目が全然違う。
あっちのは紫色だったけど、こっちのはルビーみたいだ。
さらに私は、
「(この手の中に集まれ!)」
物質転送魔法で、ドロフェイの体内から魔石を抜き取った。
今、彼の体内にあった魔石は全て私の手の内にある。
これで彼は、魔力が大幅に低下するから、呪いのパワーが激減するはずだし、ルフィナの結界にも気付けなくなるんじゃないかって思う。
仮に結界の存在に気付けても、もう、ルフィナは呪いが効かない身体になる。いや、そうなってもらう!
と言うわけで、
「転移!」
私は、再びルフィナの家へと急いだ。
次の瞬間、私はルフィナの家の前に到着した。
マジで転移魔法って有難いよ。
もの凄い時間短縮になる。
再び、私は玄関の扉をノックした。
「ごめんください」
「はい?」
玄関の扉が開き、ルフィナの母が顔を出した。
「ラヤです。ルフィナ様の身体に呪いがかからないよう、最後の仕上げに参りました」
「分かりました。どうぞ」
そのまま私は、ルフィナの部屋へと通してもらった。
ルフィナの母親の顔からは、少し前まで見せていた怪訝な表情が消えていた。ルフィナの表情も和らいだし、顔色も良くなったんで、私のことを信じてくれたようだ。
私は、ドロフェイから奪った魔石を、
「入れ!」
物質転送魔法で、次々とルフィナの体内に埋め込んで行った。
ワザワザ、私がルフィナの家に戻って来たのは、十個の魔石をルフィナの体内に埋め込んで魔力を増大させ、自己防衛的に呪いを撥ね退けられる身体にすることだったんだ。
それに、二週間後にはルフィナの体内に魔石が埋め込まれる予定だけど、申請先が大聖殿だったってことは、それをやるのは大聖殿の連中だよね?
ドロフェイがやるか、ドロフェイの手下がやるかは分からないけど、少なくともルフィナにとって信用できる相手じゃない。
なので、私が先に入れてやろうって思ったんだ。
ドロフェイが使っていたモノのリサイクルで悪いけどね。
魔石を入れた後だけど、念のため私はチャットボット機能を立ち上げた。
一応、確認だ。
『Q:これでルフィナは呪いを受けない身体になった?』
『A:なった』
『Q:魔石を新品に変える必要は?』
『A:特にない』
『Q:拒否反応とかは?』
『A:起こらない』
『Q:魔石を入れた場所に問題は?』
『A:特にない』
これでOKだね。
でも、まだこれで終わりじゃない。
続いて、私は彼女の結界を解いた。
結界の外から中には、私以外の人間の魔力は入ってこないけど、その逆もある。
つまり、結界の中から外には魔力が漏れない。
完全に魔力を結界の内外で分断しているってことだ。
そのため、結界を張ったままだと、万が一、ルフィナの体内で魔力が暴走した時に結界の外に魔力を放出できない。それだとルフィナの身体が危ないって思ったんだ。
それに、今のドロフェイの力じゃ、恐らくルフィナの体内に魔石が入っていることを見抜けないだろうし、万が一、気付かれても既にルフィナの身体は呪いを跳ね返すからね。
結界を解いても特に問題は無いだろうって思ったんだ。
「では、これから儀式の日まで、数日に一回、ルフィナ様の様子を確認させていただきますけど、よろしいですか?」
「は……はい……」
「それから、今日のことは、くれぐれも他言なさらないようお願いします」
「分かりました。あと、治療代は?」
「不要です。今回、私は女神ギガンテア様に遣わされて行なったことです。ルフィナ様がギガンテア様のご期待に沿えるよう、ご活躍されることをお祈り申し上げます」
それだけ言うと私は転移魔法でコルダイテス市中央付近へと移動した。
ルフィナの家に、そのままご厄介になるのも一つの手だけど、そんなに裕福な感じじゃなさそうだったからね。居候しても悪いって思ったんだよ。
それに、折角なら、このカルボニフェラスの世界を観光したいと思ってさ。
と言うわけで、観光第一弾として、このコルダイテス市を色々と見て回ることにする!
先ず、手近なところでアースロプレウラ大聖殿。
さっき入ったところだけど、建物の中をキチンと見ていないんだよね。
なので、今度こそ見学!
再び私は、何食わぬ顔で大聖殿の中に入って行った。
中は、もの凄く広くて、トモティ世界のヘクチオイデス大聖殿を思い起こさせるよ。
天井には御使い達の絵が描かれていたし、窓はステンドグラスが入っていて、ムチャクチャ綺麗だった。
それから大聖殿の中央には女神ギガンテア様の像が置かれていた。
一応、女神様にお祈りと御報告をしておこう。
私は両手を合わせると、
「(ルフィナの呪いは解きました。もう、呪いを跳ね返せる身体になりましたし、第一関門はクリアです)」
と心の中で強く念じたんだけど……。
この言葉が、ギガンテア様にキチンと届くとイイな。
私は、アースロプレウラ大聖殿を出ると、少し街を散策した。こんなにゆっくりするのって久し振りな気がする。
そう言えば、ここはダンジョンがある世界だってギガンテア様は仰ってたな。
ちょっと確認してみよう!
私はチャットボット機能を立ち上げると、早速、質問した。
『Q:ダンジョンってある?』
『A:ある』
『Q:手近なところでは何処にある?』
『A:コルダイテス市と王都の間』
『Q:入るのにお金はかかる?』
『A:無料』
『Q:ダンジョンの中に魔物はいる?』
『A:いる』
よし、決まり!
私は、
「転移!」
そのダンジョンに向けて移動した。
…
…
…
次の瞬間、無事、ダンジョン前に到着。
ダンジョンの入り口の脇には受付小屋があり、その中には一人のアラサーっぽい女性がいた。多分、受付嬢(?)だね!
私は、その女性に声をかけた。
「こちらがダンジョンの受付でしょうか?」
「受付と言うか、入った人の数をカウントする係りね」
「じゃあ、勝手に入っても大丈夫ですか?」
「入るのは構わないけど、一人?」
「そうです」
「お嬢ちゃん危険じゃないかしら? 一応、魔物もいるし、大抵、お嬢ちゃんくらいの人だとパーティーを組んで入るわよ」
「でも、一人の方が楽ですし」
「失礼だけど、歳はいくつ?」
「十四歳です」
「うーん……。ただね、このダンジョンに女性が一人で入るのは、正直、お勧めできないのよね」
「でも、まあ、自己責任ってことで」
丁度この時だった。
背後から、私に誰かが声をかけて来た。
「なら、俺達のパーティーに入らないか?」
私が振り返ると、そこには男子五人の姿があった。
コイツ等でパーティーを組んでいるってことか。
ステータス画面には、五人とも冒険者って書いてあった。
それから彼等が使える魔法も書いてあったけど……。
一人目は小さなファイヤーボールが出せる程度。
全然大したこと無いね。
二人目は治癒術師か。
ただ、ランクはF未満だね。
ちょっとした怪我を治すだけでも時間がかかりそう。
三人目は風魔法を使うっぽいけど……。
せいぜいスカートめくりが出来る程度か。
四人目は、どうやら氷魔法を使うらしいけど、レベルとしては、かき氷を出すのが精一杯ってとこだね。
だったら、いっそのこと、かき氷屋をやった方がイイんじゃない?
五人目は剣士か。
魔法を使えないっぽい。
ただ、剣の腕前は、剣道で言えば三級か……って段じゃないの?
むしろ、コイツ等と一緒の方が不安だよ。
それに目付きが怪しい。
絶対に私の貞操を狙っているよ!
と言うわけで、ダンジョンに入る前に、コイツ等を私から遠ざける方法を考えないといけないな。
さて、どうしようかな……。




