38.再現性試験!
昼食の後、私は、巨大ワニガメの死体と、二つに切り裂いたゴムボールもどきをアイテムボックスに収納した。
これらを退治した証拠としてギルドに提出して鑑定してもらわなくちゃならないからね。
そうそう、このアイテムボックスにも感謝しているよ。
持ち運びにムチャクチャ便利だもんね!
それにしても、ゴムボールもどきを斬ったのはナツミだけど、既に軟体生物は戦力ゼロの状態だったし、あれって、誰でも倒せる状態だったよね?
私は、ハーブを魔法で出したのと、探査魔法を使って場所を特定したけど、直接ハンティングしたわけじゃないし。
結局、ハンティングしたのはハルだけか。
なんか、ナツミは『ハンター・ハル』のタクシー係で、それでもって私は『ハンター・ハル』の給食係って感じ。
これで賞金を三等分って、なんだかハルに悪いなぁ。
「ねえ、ハル。本当に賞金は三等分でイイの?」
「うん。イイけど、なんで?」
「なんか、ハル一人で倒しているのに申し訳なくて」
「別に、私は今の環境が気に入っているから。ラヤが美味しいモノを出してくれるし、ナツミが美味しいメニューを決めてくれるし」
これを聞いて私は、『ふーん』って思ったけど、その直後、ふと思ったんだ。
メニューを決める……って何?
あっ!
そう言えばナツミが、あれ食べたいこれ食べたいって言うと、いつもハルは、
「私も!」
って言うだけだ。
自発的にメニューを決められない娘なの?
いや、でも、普通は好きな食べ物くらいあるでしょ。
だから、普通は何が食べたいって聞かれたら、何回かに一回は、単に好きな食べ物を答えるはずじゃない?
もしかしてハルは、世の中にどんな料理があるかを知らないのかも?
そんな疑問が私の中で浮かんできた。
でも、もし、そうだとすると、ハルって今までどんな生き方をしてきたんだろ?
とんでもない魔力を持っているけど、食べ物の知識が全然ない。少なくとも、一般的な人間の幼少期を送って来たとは思えないよ。
さて……。
私達は、その辺を少し時間つぶしの散策……と言うか時間調整した後、ナツミの転移魔法でハンターギルドに戻った。
受付の女性からは、
「またしても随分と早いですね」
って言われたんだけどね。
やっぱり、即日達成だと早いってイメージなのかな?
たしかに普通のハンターだったら、現地まで徒歩か馬で移動して、やっとのことでハンティングして、再び徒歩か馬で帰還する。
移動だけでも、それなりに時間がかかるし、ハンティングだって、もっともっと時間がかかるのが普通だろう。
次回から、一日置いてから出発しようかな?
もしくは現地で観光してから仕事をするとか。
一先ず私は、掲示板をチェックした。
すると、あの湖近辺の住民からの依頼の中に、巨大軟体生物の依頼があった。
間違いない! 多分、これだ!
私は、その依頼の紙を手に取った。
そして、私は受付カウンターに行くと、
「成果物を出しますので鑑定・評価をお願いします」
アイテムボックスの中から、カウンターの前に、順にブツを置いて行った。
ハーブ五種を、しょいカゴ二つ分ずつ。
巨大ワニガメの切り裂かれた頭部。
さらにナツミとハルに手伝ってもらって巨大ワニガメの胴体部分を出した。
ただ、これだけでは終わらない。私は、
「これも追加でお願いします!」
さっき掲示板から取った依頼の紙を添えて、真っ二つに切り裂かれたゴムボールもどきをアイテムボックスの中から取り出した。
「これって?」
「ワニガメ退治のついでに、これも倒してしまいましたので」
「またですか?」
「またって……」
「だって、最初の依頼の時もサーベルタイガーと巨大熊を追加で出してきましたし」
「そう言うこともありましたね……」
「では、早速鑑定します」
と言っても、鑑定には少し時間がかかるけどね。
何はともあれ、これで本日の仕事は終了!
急に手持無沙汰になってしまった。
なので、今日は、近くの海で泳ぐことにした。
取りあえず水着は、ギルドの近くの店で購入した。
異世界の水着は布面積が大きい……つまり露出が少ないってイメージがあったけど、この世界の水着は地球のとデザインが大差なかった。
そう言えば、私って女性ものの水着を着るのは初めてじゃ!
生きてて良かった。
一旦、私達は宿に戻って水着に着替えた。
私はオレンジ色のビキニ。こんなのを着られるなんて!
嬉しくて涙が出そう。
ハルは紫の水着だった。でも、なんか渋くない?
本当は、私もナツミもハルにピンクの水着を勧めたんだけど、ピンクだけは絶対にイヤだって頑なに拒否られたんだ。
でも、なんでピンクがイヤだったんだろ?
頭の中がピンクって思われるのがイヤなのかな?
それからナツミは、異様なほどに布面積が少ない白のビキニを着用。
間違いなくナツミは、自分のスタイルに自信があるんだろうね。じゃなきゃ、あんな水着をセレクトできないもん。
早速、私達はナツミの転移魔法で海岸に移動した。
そして、私は、海岸でキャッキャウフフと遊ぶのかと思いきや、
「泳ぐよ!」
「うん!」
ナツミとハルは、マジで泳ぎ始めた。
ただ、ハルの水着はともかく、ナツミの水着は泳ぐ用じゃなくて観賞用オンリーな気がするんだけど?
勿論、観賞するのは野郎共ね。
あの馬力で泳いで、水着の方が持つのかな?
見ていてマジで泳いでいるのが良く分かる。
凄いスピードだよ。
ちょっと心配だけど、水着が損傷して脱げても自業自得だよね?
ハルは、変な泳ぎ方している。
身体を左右にくねらせて、ウナギか何かみたい。
あんな泳ぎをする人は初めて見たよ。
結果的に、私は海岸に一人取り残された。
「ねえ君」
ナンパしてくる少年は大勢いたけど、
「失格!」
私は次々と塩対応で断った。だって、イリヤ王子ほどイケてないんだもん!
そう言えば、イリヤ王子は元気かな?
レイラは、ちゃんとイリヤ王子を落とせたかな?
ちょっと気になるな。
ふと、私の目に『やきそば』の文字が飛び込んで来た。
少し先の出店で売っていたんだ。
ちょっと食べてみたいな。
と言うわけで私は、その出店に行って、
「焼きそば一つください」
「五百Xenです」
早速、焼きそばをゲット!
でも、口にして思ったことは、
「(激マズだね、これ)」
後悔のみだった。
前にハルが、
『まあ、こんなもんよ。ラヤが出す食事の方がずっと美味しいんだから……』
って呟いていたあの日の出来事……激マズのコースメニュー……の再現性試験を行ったようなものだよ、これ。
やっぱり、食べ物は自分の魔法で出そう。
しばらくして、ナツミが私服で戻って来た。
いつの間に着替えたんだろう?
「ナツミ、水着は?」
「破けちゃった」
やっぱりか。あの運動量に耐えられなかったんだね。
どうやら転移魔法で宿に戻って着替えて、改めてこっちに来たてくれたらしい。勿論、私とハルを転移魔法で連れて帰るためにね。
一方のハルだけど、何処に行ったんだろ?
見当たらないんだけど?
ちょっと心配。
でも、それから数分後、巨大な何かを引きずりながら私達のところに戻って来た。
「ちょっと遠洋漁業してきちゃった」
彼女が引きずっていたモノ……。
それは、体長六メートルにも及ぶホホジロザメだった。
いったい、どこまで泳いできたんだろ?
普通は、ホホジロザメの方に驚くだろうけど、ハルのハンティングをずっと見て来たからね。
巨大な獲物を見るのには、もう慣れたよ。
ホホジロザメは、既に絶命。
念のため、私は、そのホホジロザメをアイテムボックスに収納した。
一応、ハンターギルドに持ち込んでみようって思ったんだ。
依頼があるかどうかは分からないけどね。
換金できなかったら海に返せばイイや。
…
…
…
結局、ホホジロザメは依頼が無くて換金できなかったよ。
なので、ナツミにお願いして再び海に転移して来て、ハルにお願いしてホホジロザメを沖の方に戻してもらった。
投げ入れたって言った方が正しいかな?
…
…
…
数日後、私達はハンターギルドで翼竜退治の依頼を見つけた。
私もナツミも、
「異世界で翼竜って言ったら」
「もしかして、これって?」
「「ワイバーン?」」
って期待したんだけど、ギルドの受付の女性からは、
「プテラノドンです!」
って言われた。
一蹴された感じだよ。
まあ、それはそれで興味深いターゲットだからイイけどね。
でもさぁ。ここは異世界なんだから、ワイバーンにして欲しかったな。
トリケラトプスとかサーベルタイガーとかプテラノドンとか、地球の古代生物じゃん?
それに、巨大ワニガメとか巨大熊とか、地球に現存するヤツの巨大版だし。
地球サイズのホホジロザメもいたか。
人々の雰囲気とか建物とかは異世界って感じなんだけど、なんか、獲物だけ異世界って感じがしないよ!
受付の女性からの説明では、今回の依頼は、最近、数日に一回、プテラノドンが村に出現するようになり、羊を連れ去って行くとのこと。
まあ、プテラノドンは軍団ではなく一頭だけみたいだけどね。
と言うわけで、私達は、その依頼を受けることにした。
現地には、毎度の如くナツミの転移魔法で移動するんだけど、たまには依頼達成まで日をかけてもイイよね?
と言うわけで、私達は現地にダイレクトに入るんじゃなくて、一旦、現地から少し離れた温泉街に寄ることにした。ここで骨休めに一泊する。
そう言えば、異世界に来て温泉って初めてじゃない?
それで、せっかくなら露天風呂に入ろうって思ったんだけど……。
何故か急遽、私の探査魔法が発動した。
ん?
なんか、壁の向こうに数人の人影が……。
もしかして、あれって?
覗きだ!
と言うわけで、私は壁に向けて電撃魔法を放った。
「「「ギャー!」」」
覗き野郎達は、これで感電して気を失ったっぽい。
ハハハ。これでしばらく動けまい。
ざまぁみろ!
その後、私はナツミとハルと一緒に露天風呂でゆっくりさせていただいたよ。
部屋に戻ると、食事の用意が整っていた。夕食付なんだよね。
一応、食べてみたけど……。
ナツミが渋い顔をしている。
ハルは見向きもしない。
かく言う私も……一口で食べる気が失せた。やっぱり、この世界の食事はマズイ!
かと言って、丸々残すのも宿側に失礼だし。
仕方ないので、私は、物質創製魔法で日用品と言うことでポリ袋を出し、これらの料理をポリ袋に入れるとアイテムボックスの中に収納した。
ゴメンね、食材達。
そして、
「ナツミ、何が食べたい?」
「とりあえずパエリア!」
毎度の如く、追加注文前提だね。
「ハルは?」
「私も!」
うーん……。再現性が取れちゃったね。
やっぱり、ハルの回答は『私も!』だった。




