39.やっと治癒魔法発動!
翌朝も、私が朝食を準備。
でも、なんでこんなに、この世界の食事はマズいんだろう?
ハッキリ言って、トモティ世界の方がマシだったよ!
宿をチェックアウト。
その直後、私達はプテラノドン退治を依頼してきた村に到着した。
ナツミの転移魔法があるからね。移動に時間はかからないんだ。
でも、村の連中の反応は、いつもの通り。
私達を見るなり、
「おお、姉ちゃん、色っぽいねえ」
「俺と遊ぼうぜ!」
「いや、俺だ!」
早速、男共がナツミ狙いで近づいて来たよ。
カワイイ系美少女の私ですらナツミの引き立て役だもんなぁ。
悔しいけど。
「私達は翼竜退治に派遣されて来たんですけど」
「姉ちゃん達が?」
「ムリムリ!」
「そんなことより、俺達と遊ぼうぜ」
ここでも、女性ハンターだからって、私達じゃ力量不足だって一方的に決めつけられているよ。
トリケラトプスの時もそうだったけどさ。
でも、もし達成不可能なレベルのハンターなら、ギルドがワザワザここまで派遣するわけないでしょ?
全く、失礼しちゃうよね!
たしかに、私達は三人共ゴツイ身体をしているわけじゃないし、第一印象で私達じゃ無理じゃないかって思われても、仕方が無い部分はあるんだろうけどさ。
もし、私達が依頼者の立場だったら、同じようなことを考えるかも知れないもんね。
「ギルドから正式に依頼を受けています」
「マジで?」
「はい。これでもサーベルタイガーとか巨大熊とか、トリケラトプスとか巨大ワニガメを倒した実績があるんですよ」
「信じられないけど」
「その実績があるから、ここに派遣されたんです。翼竜が出るようになったのは、いつ頃からですか?」
「二か月くらい前からかな。北の方にある岩山に巣を作っていて、数日に一回、村に来て羊をさらって行くんだよ」
「(なんだか、トリケラトプスとパターンが似ているなぁ)」
「俺達も退治しようと岩山に向かったけど、ヤツは飛ぶからな。あれじゃぁ矢を放っても届かないし、どうにも手の出しようが無くてな」
「分かりました。では、その岩山まで案内を……」
丁度この時だった。
私達の上空をプテラノドンが横切った。地上、三十メートルってところかな?
「ラヤ、ハル、あれっ!」
「あれだね。ねえ、ハル。あれ、撃てる?」
「この距離なら問題ない」
そう言うと、ハルはプテラノドンの方に右手を伸ばして人差し指で指さすと、
「えいっ!」
人差し指から光の弾丸を連射した。まるで機関銃だよ!
そして、プテラノドンの翼に何発……いや、何十発も命中。見る見るうちに、プテラノドンの翼はボロボロになっていった。もはや、穴だらけだよ。
これじゃ、さすがに飛べない。プテラノドンは、真っ逆さまに地上に墜落した。
続いてナツミが、地に落ちたプテラノドンの首を、
「そりゃっ!」
巨大な剣で刎ねて終了!
なんか、呆気ないな。解決が早過ぎるよ。
もっとも、ハルがいなかったら、ここまでのスピード解決は出来なかったけどね。
マジで、ハルさまさまだね!
村人達も驚いているよ。
まさか、こんな小娘達が一瞬で、残虐な肉食翼竜を葬り去るなんて思いもよらなかっただろう。
結局、今日は、私の出番は一つも無かったな。
強いて言えば昨夜と今朝の給食係ってとこかな。そうそう、あと、プテラノドンの死体の運び屋か。運送業者ってとこだね。
それで……、私はプテラノドンの死体をアイテムボックスの中に収納したわけだけど、これを目の当たりにして、再び村人達は驚いていた。
「嬢ちゃんは収納魔法が使えるのか?」
「えっ? あっ! はい!」
厳密には収納魔法と違う気がするんだけど、まあ、第三者視点では似たようなものか。
「それでは、依頼完了のサインをお願いします」
「ああ。それにしても、姉ちゃん達、凄いな」
「まあ、これが仕事ですから」
「良し! これから祝宴だ!」
「俺達と飲んで食って遊ぼうぜ!」
「そうだそうだ!」
これって、どんな遊びを想定しているんだろう、この野郎共は……。
なんか、身の危険を感じるよ。
ろ言うわけで、私達は依頼書にサインをもらうと、
「転移!」
ナツミの転移魔法で、急いでギルドへと戻った。貞操の危機を感じたものでね。
一瞬で、ギルドに到着。
依頼達成の証拠として、私はアイテムボックスからプテラノドンの死体を、受付カウンターの前に出そうとしたんだけど……、丁度この時だった。
「い……医者を呼んでいただけませんか?」
慌てた表情で、一人の女性が泣きながらハンターギルドに駆け込んで来た。小さな男の子を抱っこしている。
受付の女性が、
「どうされたんですか?」
と尋ねると、
「子供が馬車に轢き逃げされて……」
とのこと。
緊急事態だ。
受付の女性は、
「少々お待ちください」
医者を呼びに出ようとしたんだけど、
「行く必要はありません。私に任せてください」
と私の方から、その子供の治療担当を申し出た。これは、久々の得意領域だもんね!
絶対に私が何とかする。
「その子を、カウンター前に寝かせてください」
「は……はい……」
そして、診断魔法を発動!
結構、派手にやられたね。
どうやら、両足を骨折している。
念のため、その子のステータス画面を覗き見した。
記載された症状は、
『両足複雑骨折』
とのこと。
今のところ、他には問題は無さそうだ。
では、
「治癒魔法照射!」
この世界で治癒魔法を初公開した。
完治まで五秒程度。
すっかり元気になった息子を見て、その母親が、
「ありがとうございます!」
私に何度も頭を下げていたよ。
受付の女性もこのスピード治療には、かなり驚いていた。
「一番得意なのは治癒魔法って、本当だったのね!」
「そうです」
「じゃあ、何でハンターをやってるんですか?」
「医院を開くための資金を稼ぐためです」
「そうですか。治癒魔法使いとしての登録はされてますか?」
「いいえ」
「だとすると、今回の医療行為には報酬請求は出来ませんね。公的な免許が必要になりますので」
「免許が必要なんですか? まあ、報酬自体は、今回は無くても全然構いませんけど」
「でも、これを機会に登録されたらどうです? パーティに治癒魔法使いを入れる場合もありますので、ハンターギルドでも登録できますけど?」
「分かりました。お願いします」
これを聞いて、さっきの母親は、
「もしかして、タダですか?」
治療費がかからないと知って喜んでいたよ。
まあ、両足骨折だと、結構なお値段になるみたいだからね。
私の辞書機能によると、この世界の一般的な相場……って言うか両足複雑骨折の平均的な治療代は、三百万Xenになるって書かれていた。
基本的には、治癒魔法使いが勝手に価格を決めてイイってことになっているけど、それ故に結構な医療費を要求してくる輩も多いようだ。
『一生、両足が動かないままでいるよりは、三百万Xen払う方がイイよね?』
って感じでね。
完全に患者さんの足元を見ているよ。
と言うことで、この後、私はハンターギルドで治癒魔法使いとしての登録手続きを行ったんだけど……。
ハンターの時と違って、治癒魔法使いの場合は適性検査と魔力測定があった。その能力が無いのに治癒魔法使いを詐称する者がいては困るからだ。
ハンターの場合は、獲物を狩ってくるかどうかだから、成果は見て分かる。なので、書類提出だけでOKらしい。
だけど、治癒魔法の場合、医療内容によっては素人目には分からないからね。
詐欺行為ができてしまうってことだ。
適性検査は、治癒魔法が発動できることの確認。
これは、魔法の水晶球に手をかざして検査できるようだった。
当然、これは余裕でパス。
そもそも、さっき治癒魔法を発動しているわけだからね。
ここで失格が出たら、絶対に水晶球の方がおかしいよ。
魔力測定は、紫色をした水晶の棒を握らされた。
すると、水晶の色がたちまち無色透明に。
どんな色になったかでレベルが判定できるそうだ。
一応、私の魔力は、最高レベルのSランクと判定された。どうやら、完全無職……じゃなくて、完全無色透明になるのが最高レベルらしい。
でも、私が最高レベルの魔力ってことは、それを遥かに凌ぐハルって、やっぱりトリプルS級とか言ってもおかしくないよね?
試験結果は、言うまでもなく合格。
「では、免許発行まで少し待っててください」
「じゃあ、それまでの間にプテラノドンの方の鑑定をお願いしたいんですけど」
「あの依頼、もう終わったんですね」
「はい」
と言うわけで、私はカウンター前に仕留めたプテラノドンの首と身体をアイテムボックスの中から出した。
勿論、身体を出す時にはナツミとハルに手伝ってもらったけどね。
それから、依頼完了のサインの入った書類も提示。
鑑定結果は、当然だけど依頼完了の判定……のはず。最終的な判定は、スタッフが現地確認してからだけどね。
でも、これで間違いなく賞金ゲット!
そして、少し時間がかかったけど、無事に治癒魔法使いとしての免許も発行された。
「こちら、無くさないでください。万が一、紛失した場合は、至急、ギルドまで連絡くださいね」
「分かりました」
治癒魔法使い免許って、地球の運転免許証くらいの大きさだった。
敢えて携帯できるサイズにしたってことなんだろうけどね。
無くさないように、これはアイテムボックスの中に急いで収納したよ。
これが他人の手に渡ったらマズイからね。
その人が、免許を提示して治癒魔法使いを名乗れちゃうし、堂々と医療詐欺ができちゃうもんね。
ただ、この様子を見ていた他のパーティから、
「ラヤちゃん、俺達のパーティに同行してくれない? 勿論、ナツミさんとハルちゃんも一緒で」
「いや、俺達のパーティに入ってよ」
「俺達のところに是非!」
治癒魔法使いとして誘われたんだけど……。
でも、何故か顔がイヤラシかったんだよね。
絶対に怪我の癒しだけじゃなくて、Hな方の癒しも余裕で求めてきそうだよ。
なので、パーティ入りは全部断ったけどね。
でも、翌日から私のところには、
「腕を魔物にやられてさ」
「背中を刺されて」
「足をやられて」
ハンター達の怪我の治療依頼が舞い込むようになった。
まあ、いずれ医院を開設するつもりだし、そのための宣伝になるって思えばイイか。
でも、野郎共ばかりだったな。女性で治療依頼に来た人は、殆どいなかったよ。これをきっかけに、私達をパーティに誘おうって魂胆なのかも。
しかも、そのパーティって、ハンターのパーティじゃなくて、Hな方のパーティじゃ?
もし、そうなったら電撃魔法を発動するけどね。
数日後のことだ。
ナツミが掲示板に張ってあった依頼を手に取って、
「これってどう?」
って私とハルに言ってきた。
内容は、海水欲情……じゃなくて海水浴場に出没するモササウルスの退治。
ええと……、海水浴場って、大半の若い男女にとっては海水欲情で合ってるよね?
絶対そうだよね?
まあ、それは置いといて。
ちなみに陸の王者がティラノサウルスなら、モササウルスは海の王者って比喩する人もいるらしい。つまり、ジョーズ真っ青の恐ろしい怪物なんだ。
海中の作業か。
だとすると、巨大ワニガメを退治した時と同じで、私が探査魔法で位置を特定して、ハルが光の銛を打ち込むってパターンかな?
じゃあ、ナツミはタクシー係オンリー?
別にイイけどさ。
「私は構わないよ」
「私も!」
と言うわけで、私達はモササウルス退治の依頼を受けることにした。




