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36.塩!

 それにしても、転移魔法って便利だね。

 一瞬でカスモ村に到着したよ。


 道の両脇には畑が広がっている……はずなんだけど、完全に荒れ地と化していた。

 三体の魔獣に食い荒らされた後ってとこだね。



 村長さんを訪ねようと、早速ナツミが、近くにいた男性に声をかけた。

「あの、済みません」

「おお、姉ちゃん、一緒に遊ばねえか?」


 この男、ソッコーでナツミに反応したよ。

 と言うか、ナツミの身体に食い付いたとでも言うべきか。


 この顔にこの身体だからねぇ。まさに男性ホイホイとでも言うべき存在だね。

 勿論、その男性ホイホイは、そんな誘いに乗るはずが無い……と思う。


「遊ぶ余裕なんて無いんじゃありません? 最近、この村は三体の魔獣に畑を食い荒らされているって聞いたんですけど?」

「俺は農業やってねえから直接被害はあってねえけどな」

「私達は、村長さんの家に行きたいんですけど」

「なら、その道を北に一キロほど行ったところだ」

「ありがとう。じゃあ」


 と言うことで、私達は、ナツミの転移魔法で、その場から早速、一キロ北上した。

 歩いて行ってもイイんだけど、その男がしつこく付きまとってきそうだからね。要は転移魔法で逃げたってとこだ。



 転移終了。

 そこには、数軒の家が立ち並んでいた。

 この辺に村長さんの家があるはずだけど。


 近くに男性を発見。

 今度は、私が男性に声をかけたんだけど……。


「あの、済みません」

「おお、そっちの姉ちゃん、色っぽいねえ。遊ばねえか?」


 私のことは無視。

 やっぱりナツミ狙いかよ。

 連続でこう言われるのもムカつく。


「私達は村長さんの家に用事がありまして」

「なら、あの家だ」


 その男が三軒先の大きい家を指さした。

「ありがとうございます」

「で、マジで遊ばない?」

「急いでますので」


 この手の男には塩対応でイイよね?

 私達は、その男に会釈すると、早速村長さんの家を訪ねた。


「すみません。ギルドから派遣された者です」

「はーい」

 家の中から出てきたのは初老の男性。この男性が村長っぽい。


 でも、やっぱり、

「姉ちゃん、俺と遊ばねえか?」

 ナツミの身体に目が食い付いていたよ。



 毎回こうだと頭にくる。

 こっちにもカワイイ系美少女がいるのに!


「私達は、ギルドから派遣されてきました。三体の魔獣が畑を荒らされているとの話を聞き、その退治に来たんです」

「姉ちゃん達が?」

「そうです」

「アンタ等にはムリだろう? その辺で薬草でも取って帰りな」


 女性ハンターだからって、完全に力量不足って決めつけているよ。

 まあ、その気持ちも分からないでもないけどさ。でも、もし達成不可能ならギルドが派遣するわけないでしょ?


「正式にギルドから依頼を受けております」

「ギルドが?」

「はい」

「じゃあ、しょうがねえな」

「これでもサーベルタイガーとか巨大熊を倒した実績があるんですよ」

「姉ちゃん達が?」

「はい。だからここに派遣されたんです。ここに来る途中、畑が荒れているのを見ましたけど?」

「あの魔獣共は、食欲旺盛で、畑の作物もその辺に生えている草も根こそぎ食ってしまうんだ。頭に三本の角を持っていて、追い払おうにも、その角で攻撃してきてな。串刺しにされてしまう。もう、何人もの若い連中がヤツ等に殺されたよ」

「いつ頃からですか?」

「一月前くらいに村に来るようになってな。西の方にある池の近くを根城にしていて、数日に一回、村に来て畑を食い荒らして帰って行くんだ」

「そうですか。では、その根城まで案内していただけますでしょうか?」

「分かった」


 私達は、村長さんの案内で、早速、その池の近くまで来た。

 たしかにいたよ。

 池のすぐ近くに三体のトリケラトプスを発見!


 まさか、この目で生きたトリケラトプスを生で見ることが出来るとはね。

 村人達には不謹慎で申し訳ないけど、異世界転生万歳だね!



 私のステータス画面が開いた。

 このトリケラトプスは、一番大きいヤツで全長九メートル、体重十二トン。地球にいたとされるトリケラトプスと同じサイズだ。


 トリケラトプス達が、私達の存在に気付いた。

 自分達の根城に見知らぬ侵入者が来たってことで、それなりに警戒……と言うか敵視しているようだ。


「じゃあ、ナツミ。剣を」

「ありがとう」


 私は、アイテムボックスに収納した巨大な剣をナツミに渡した。

 ハッキリ言って、私が使うには重過ぎる剣ね。



 村長さんには、その場に待機してもらい、私達は、ナツミの転移魔法で、トリケラトプス達を挟んで反対側に移動した。

 村長さんがいる方に突進させないためだ。


 トリケラトプスまでの距離は二十メートルくらい。

 うち一頭が敵意丸出しの雰囲気で私達に向かって突進してきた。


 先ずナツミが、そのトリケラトプスに電撃魔法を放ち、怯んだところに左横から剣を突き刺した。

 なんか、もの凄く鮮やかだね。

 ナツミのヤツ、手応えありって顔をしている。

 これは、決着ついたかな?



 私が、そのトリケラトプスのステータス画面を覗き見する限り、剣は心臓まで到達……いや、心臓を貫いた模様。

 って、魔獣のステータス画面も覗けるんだね、私!

 そう言えば、魔獣を魔法で診断は出来たんだっけ。

 昨日、初めて知ったんだけど。



 でも、剣が突き刺さった状態なのに心臓は動いていたよ。

 さすが魔獣!


 なので、ナツミは、この状態で再び電撃魔法を放った。

 完全にダメ押しだよ。

 見ていて本当にえげつないなぁって思う。

 心臓に向けて剣を通じて膨大な電力が供給される状態だもん。そのトリケラトプスは、完全に心停止したよ。



 残る二頭が、私達に向かって突進してきた。

 そのうち一頭は私の担当。

 もう一頭はハルに任せた。


 私は、先ず電撃魔法を最大にしてターゲットに撃ち込んだ。

 これを受けて、トリケラトプスは真横に倒れた。感電したんだから当然だよね?


 さらに私は、

「出ろ!」

 物質生成魔法で、その魔獣の腸内に合計五十キロの塩を発生させた。


 このトリケラトプスの体重は十二トン。

 塩の半数致死量は体重一キロ当たり五百ミリグラムから一グラム。つまり、トリケラトプスの半数致死量は六キロから十二キロ。

 それを遥かに超える量を強制的に食わせてやったに等しい状態だ。


 トリケラトプスは、これで完全に動かなくなった。

 でも、まだ生きている。

 即死ってわけじゃないんだね。


 なので、えげつないけど、私は、

「追加、出ろ!」

 トリケラトプスの血中に、新たに数キロの塩を生成させた。


 さすがに、次の瞬間、ステータス画面で死亡の文字が確認されたよ。

 塩の結晶が血管に詰まって死んだのか、純粋に塩分過多で死んだのかまでは書かれていなかったけどね。



 最後の一頭はハルの担当。

 ハルは、

「えい!」

 余裕の笑顔で、昨日、巨大熊の左胸を貫いたのと同じ光の矢を放った。これくらいの魔獣じゃ全然怖くないってことか。


 光の矢は、トリケラトプスの頭を貫いた。

 避けることも出来なかったようだ。


 ただ、脳を破壊するには至らなかった模様。

 脳が小さいから当たらなかったんだね!


 でも、これでハルの攻撃が止まるわけではない。彼女は、魔法で光の剣を出すと、そのトリケラトプスの真横に回り、

「えーい!」

 トリケラトプスの腹を横からぶつ切りにしたよ。完全に絶命だね。



 村長さんは、この光景に唖然としていたよ。

 まさか、こんな小娘三人衆が、巨大な魔獣を一瞬で倒すなんて、想像を遥かに超えていただろうからね。

 人は見かけによらないってことだよ。


「これは、恐れいった。ただ、誰の目から見ても完全に絶命した分かるようにしてもらえんか? 村人の不安を完全に払拭するために」

「分かりました。じゃあ、ハル。お願い!」

「了解!」


 ハルは、私が倒したトリケラトプスとナツミが倒したトリケラトプスを、光の剣で、順に横からぶつ切りにした。

 これなら完全に死んだって分かるよね?


 それから、トリケラトプスを仕留めた証拠として、最低限、ギルドにトリケラトプスの角を提出する義務がある。

 これがギルドの依頼書に記載されていた。


 なので、

「ナツミ、お願い」

「うん」

 巨大な剣で、ナツミが合計九本の角を根元から切断した。



 これで依頼完了……のはずなんだけど、魔獣相手なので、これでも村長さんは納得されない様子。

 どうも、魔獣は想像を絶する生命力を持っているって変な先入観があるみたい。

 仕方が無いなぁ。


 なので、

「出ろ!」

 私は、物質創製魔法で、とんでもない量の食用油を出して、三体のトリケラトプスの死体にジャバジャバとかけた。

 それこそ、空中に食用油を発生させて、豪雨のように降らせたって感じだ。


 さらに私は、物質創製魔法で『日用品』としてマッチを出すと、それらの死体……と言うか油に火をつけた。



 業火に包まれる魔獣の死体。

 これで、完全に死体は焼け焦げて炭になり、やっと村長も魔獣が死んだと認めてくれた。


「ご苦労。ギルドには、こちらからも連絡を入れる」

「ありがとうございます。では、こちらにサインを」

「おお、そうだな」


 村長は、快く依頼完了のサインを記入してくれた。

 ただ、魔獣は倒せたけど、この村の問題は完全にクリアされたわけではない気がする。

 畑が壊滅状態だからね。これから先、村人達は、どうやって食べ物にありつけば良いのだろうか?


 少なくとも、畑を復活させても、収穫が期待できるのは最速で来季からだ。今期は収穫なしになる。

 もっとも、それは私達の仕事とは完全に別件だし、介入すべきことじゃないんだろうけどね。

 でも気になる。


「当座の食糧はあるのでしょうか?」

「その辺は、領主様が何とかしてくれるそうだよ。君が心配する必要はない」

「そうですか。安心しました。では、私達はこれで失礼します」

「おお、達者でな」

 そして、私達はナツミの転移魔法で、一気にハンターギルドまで移動した。



 ハンターギルドに到着すると、依頼完了の証拠として村長さんのサインが入った書類とトリケラトプスの角を受付に提出した。

 また、改めて村長さんより連絡をいただける旨も報告した。


 もっとも、ギルドの方で転移魔法を使えるスタッフが現地に行って依頼完了の確認をするらしいけどね。

 なので、その確認が成された段階で、本当の意味で依頼完了となるそうだ。



 私達は、一旦、宿に戻った。

 そして、

「ナツミ、ハル。ちょっと相談があるんだけど……」

 一応、親しき中にも礼儀あり。私は、賞金の割り振りについてキチンと決めておかなければならないって思ったんだ。


 ハルからは、

『食べ物が無料支給してもらえるし、宿代だけ払ってもらえればお金は要らない』

 って言われたけど、そう言うわけには行かない。

 少なくとも、昨日の巨大熊はハルが倒したんだし、ハルの功績だ。私とナツミは運搬以外に関係していない。



 色々話し合った結果、昨日の分も合わせて、全て三等分する所で落ち着いた。

 厳密には、サーベルタイガーとスティービア・ビロサの件には、ハルは一切ノータッチだけど、巨大熊の分と交換ってことで。


 それと、お金は私が管理することになった。

 アイテムボックスがあるし、ナツミもハルもイチイチ細かいことを考えるのがイヤみたいだからね。


 で、その辺の打ち合わせが終わるとナツミから、

「夕飯!」

 早速来たよ。


「どうする? 一回くらい外食してみる? どんなものか食べてみたいし」

「賛成!」

「ハルは?」

「うーん。二人が食べたいって言うなら、それでイイけど……」


 今一つの反応だな。

 なんでだろ?



 でも、正直、この世界の食べ物に興味がある。それで、私がステータス画面の検索機能で、この界隈で最も美味しいとされる飲食店を調べて、三人でその店を訪れた。


 そして、コースメニューを頼んだんだけど、私もナツミも一口食べて、

「「……」」

 絶句した。

 正直、美味しくない。

 これが一番美味しいって、どんだけマズイの?


 すると、ハルが、

「まあ、こんなもんよ。ラヤが出す食事の方がずっと美味しいんだから……」

 と不満顔で呟いた。


 どうやら彼女は、この最悪な味を最初から知っていたってことだ。

 それで外食の話が出た時に今一つ反応が悪かったんだね。



 コースで頼んじゃったし、一先ず、全部食べ終えたけど、さすがに……。

 飲食店を出ると、私達は急いで宿に戻り、

「出ろ!」

 口直しに、私が物質創製魔法で出したピザを三人で食べた。

 Lサイズのピザを三枚出したけど、私はツーピースしか入らなかった。

 コースメニューを食べた後だったしね。


 だけど、ナツミとハルはLサイズを一枚ずつ平らげた上に、私が残した分も二人で分けて全部食べてしまった。

 うーん。凄い食欲だよ、二人とも。

 なんで、それで太らないのか不思議だ!

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