32.クリア!
一日二日じゃ私の体力は回復しなかった。それだけ疲弊していたってことだ。
でも、食って寝ての怠け者ライフサイクルを数日間繰り返したことで、ようやくエネルギー充填完了!
魔力も完全復活!
これで、最後の戦いに向けて出撃できる!
と言った状態なんだけど、ナツミは、
「カツ丼一丁追加!」
完全に食っちゃ寝生活が板についた模様。
なんか、ニート生活と大差ないように思うんだけど?
「もう、出発しますよ!」
「もう一杯だけお願い!」
「体重だって増えてません?」
「えっ?」
「せっかく綺麗なスタイルしているのに、崩れ去っても知りませんよ!」
「ええと、じゃあ、あと一杯だけ食べたらダイエット始めるから」
うーん……大丈夫だろうか?
でも、食べさせないと絶対にギャーギャー言って煩そうだよね。
仕方が無い。
「出ろ!」
私は御所望のカツ丼を出してあげた。
だけど、
「あとラーメンと半チャーハンも」
との追加リクエストが……。
「えっ?」
どれだけ食うんだよ?
ただ、悔しいけどナツミって、これだけ暴食し続けても全然ウエストが変わらないんだよね。
それで、あれだけ食べた質量が何処に消えているかって言うと……。
やっぱり胸?
胸の質量が追加されたのか?
でも、目を凝らして見たけど、別に胸のサイズが増えた感じもないし、マジで何処に消えているのか不思議だよね。
本当に全然サイズが変わらないよ。
それと、もう一つ気になるのがムダ毛のお手入れ。ナツミは、全然手入れをしていないんだよね。
なのに、脛も脇もツルツル。
それで私は、
「ところで、話は変わりますけど、ナツミさんが毛の処理しているところを見たことが無いんですけど?」
って聞いたら急にナツミが黙り込んじゃった。
箸を落とすし、ちょっと、うろたえている様子。
「ど……どうかしたんですか?」
「……いの」
「えっ?」
「……いのよ」
「はっ?」
「私、アソコの毛が無いのよ。だから、Vラインのお手入れをする必要は無いんだけど、でも、子供って思われるのがイヤで、それでエドガーとは一回も出来なくて」
「あのう、そこじゃなくて、脇とか脛の話なんですけど」
「えっ?」
「まあ、全体的に生えていないんで手入れの必要が無いってことですね」
「……」
「まあ、安心してください。私も、まだ生えていませんから」
って何のこっちゃ。
ただ、ナツミの容姿はアキと基本的に同じだから、アキも生えていないってことなんだろうね、きっと?
それにしても、エドガーとできなかった理由の一つが、それか……。
でも、アルセニコンも生えていなかった記憶があるんだけど?
剃ってたのかも知れないけど。
なので、もしかしたらエドガーは、生えていない方が趣味だったかも知れないよ!
でも、もうイイか。今更だもんね。
「変な話をして済みません。では、ラーメンと半チャーハンも出しますから、そこまで食べたら出発しますよ!」
「了解!」
食べ物を出すって言ったら急に元気になったよ。
さすが食欲魔人!
と言うわけで、私はラーメンと半チャーハンを物質創製魔法で出してあげた。
ただ、ここまでくると私自身も魔法に依存してしまうな。超便利過ぎるもん!
それから二十分くらいが過ぎた。
ナツミもカツ丼、ラーメン、半チャーハンを完食。
そして、
「デザート」
とナツミが言って来たので、
「はぁ?」
と私が答えたら、
「……は戦いの後でお願いします」
と、ナツミもこれ以上食べるのは諦めてくれた。
では、食器類やテーブル、イスを異次元の部屋に収納して、いよいよ出発!
「転移!」
私達を乗せたUFOは、一気にプルプップ星の地上まで移動した。
そこは、まさに戦火の渦状態だった。
空には宇宙要塞が浮かんでおり、そこからハエ男のような姿をした生物が、銃や火炎放射器などを身に着けて降りてくる。
地上では、銃撃や爆撃、さらには火炎放射器による攻撃を受けて逃げまどう、妖精のような姿をした体長三十センチ程度の生物達。
これを見て、ナツミは、
「何、このハエ男!」
と言いながらUFOに搭載されたレーザー砲の照準をハエ男に合わせた。
私は、急いで、
「フリーズ!」
ナツミの動きを魔法で止めた。だって、それはマズイもんね。
ただ、ナツミとしては、何故止められたのか、まるっきり分からない様子。
「何するのよ、ラヤ?」
「当たり前でしょ! ナツミが勘違いしているから」
「勘違いって何よ?」
「ここは、敵の星? 味方の星?」
「敵の星よ!」
「じゃあ、この星の生物が敵よね?」
「ええ」
「じゃあ、空から降りてくるのは、この星の生物かしら、それとも別の惑星から来た生物かしら?」
「侵略者っぽく見えるし、別の惑星の生物だと思うけど?」
そこまで分かってて、なんで敵味方の区別が付かないかな?
それだけ人間って、容姿によるイメージに左右されやすいってことなんだろうけど。
「そうね。じゃあ、ハエ男は別の惑星の生物で、妖精みたいなのがこの星の生物よね?」
「勿論!」
「じゃあ、ハエ男と妖精の、どっちが敵でどっちが味方?」
「えっ?」
「敵の星に住んでいるのが妖精まがいで、敵の星を攻めているのがハエ男でしょ!」
「あっ!」
見た目のイメージからすれば、妖精のような生物が善でハエ男のような生物が悪と感じるだろう。
しかし、イメージと実態は必ずしも一致しない。
見かけには寄らないってことだ。
ここでは妖精のような生物が敵で、ハエ男のような生物が数年前に敵の侵攻を止めてくれた味方の異星人なのだから。
まあ、言い換えれば、ナツミにもこれが適用できるってことだ。アキとナツミは、見た目は同じでも別の人間だからね。
地上から、ハエ男達の宇宙要塞に向けて多数のミサイル砲が撃ち放たれた。当然、この妖精達も高い科学力を誇っている。
そもそも、この妖精達……プルプップ星人達は、宇宙進出を果たしている。
それも、エディアカラ世界までの六千光年の距離を移動するだけの高い科学力を誇っているんだ。
当然、ミサイルを撃つことくらい可能だ。その容姿からは想像し難いけど……。
私は、
「転移!」
急いでUFOを宇宙要塞の前に瞬間移動させると、
「レーザー砲発射!」
宇宙要塞に向けて撃ち放たれたミサイル群を撃ち落として行った。
さらに、ハエ男達にテレパシーを送った。一応、検索機能による事前調査では、ハエ男達はテレパシーが使えるとのことだ。
さすがに魔法で火炎を出すとか雷を出すとかまでは出来ないらしいけど。
「(お願いです。一旦、要塞に全員戻るよう指示を出してください)」
「(お前は誰だ?)」
「(私の名前はラヤ。女神グエホイ様の依頼でここに来ました)」
「(しかし、どうやってプルプップ星人を一掃する?)」
「(魔力を全開放して無差別に首を刎ねます)」
「(そんなことが出来るのか?)」
「(できます。本来でしたら、この星の自然環境を戻す手伝いをして、他の惑星への侵攻を止めさせるべきなのですが……)」
「(それは、全く意味を成さない。そもそも、この星だってヤツ等が侵略……と言うか強奪したものだ。元々この惑星に住む知的生命体を皆殺しにしてな。それで、資源を全て食いつぶし、他の星へと移住する。ただ、それを繰り返しているだけだ……)」
それも辞書機能で前もって確認したよ。
プルプップ星人は資源と生物に恵まれた星に侵攻し、そこに先人となる知的生命体がいれば虐殺する。
そして、その星を手に入れて全てを貪り喰らう。
農耕や畜産は行わない。
ただ、喰い尽くすだけ。
まさに、池や川に放流された外来生物が、在来生物を全部捕食し尽くしてしまうのと同じだ。
しかも、繁殖力が高い。
ただ、池や川の外来生物と違うのは、全てを喰い尽くしたら別の惑星に移住すること。
そして、ひたすら同じことを繰り返す。
環境を汚染・破壊し、動植物もほぼ喰い尽くし、それで、この星の大地は赤茶けた部分が大半になっていた。
実は、そのせいで、この星は自然災害も頻発する状態になっていたんだ。
さすがにコイツ等も、植物プランクトンは食べないみたいなので、一応酸素は作られているみたいだけどね。
でも、酸素供給量が減っているから、このままじゃプルプップ星人も住めない星に変わってしまう。
もっとも、それ以前に、食料がマジで底を尽きかけているんだけどね。
そう言った危機的状態ってこともあって、数年前にエディアカラ世界に侵攻してきたんだけど、それに失敗したんで、プルプップ星人達は新たな星を探していたっぽい。
「(そのことは私も分かっています)」
「(我々の手でエディアカラ世界への侵攻は食い止められたが、今は、別の惑星への侵攻を開始した。これから宇宙艦隊を出撃させるところだったようだが、我々は、それを食い止めるべくここに来たんだ)」
「(そうでしたか。惑星外にいるプルプップ星人の数は?)」
「(惑星探査に行った二名だけだが、両名とも数時間前に我々の手で始末した)」
「(そうですか。お疲れ様です。では、これより大掃除を開始します。急いで撤退を!)」
「(了解した!)」
それから間もなく、ハエ男達は順次要塞へと引き上げて行った。一応、こんな小娘の言うことを信じてくれたらしい。
そうなるように、女神グエホイ様が手を回してくれたのかも知れないけどね。
とにかく、この星の連中を急いで一掃しなくちゃならない。
ただ、何かの番組に出てくる正義の味方みたいに、ピンチになるまで必殺技を出さないなんて戦い方をしても無意味なのは重々承知だ。
なので、ここは最初から必殺技一発勝負で行く!
その方が時間のムダがないし、多分、魔力が最大の状態で攻撃できるから取りこぼしも出ないはず。そもそも取りこぼしを出しちゃマズいからね。
そして、
「(撤収完了!)」
ハエ男から、この言葉を聞いた直後、
「(死ねぇぇぇぇぇぇ!)」
私は、魔力を最大放出して、この惑星全体に向けて無差別に首ちょんぱ魔法を放った。もう、何も考えずに全殺しする。
勿論、私とナツミ、それからハエ男達の要塞だけは除外範囲設定だけどね。
それ以外の場所は無差別全殺しだよ!
本来なら、この星の動物達を救ってから……と思うだろう。
でも、この星の資源はほとんど全て喰い尽くされた。
って言うか、植物は一部残っていたけど、残念ながら動物は全て、妖精の顔をした悪魔達に捕えられて喰い殺された後だったんだ……って辞書機能には書いてあった。
このUFOに搭載された魔力増幅装置で私の魔力は百億倍になる。
プルプップ星人は全部で四十兆人もいるっぽいけど、有難いことに増幅器のお陰で、その百億分の一、つまり四千人程度を殺すくらいのエネルギーで済むようだ。
ここに来る時に使った転移魔法ほどのエネルギーを使わないで済みそうだね。
魔力のパワーを下げると、時間がかかって逃げられてしまうかもしれない。なので、ここは魔力最大放出で一気に行く。
それと、当然だけど射程距離も長くなる。
首ちょんぱ魔法の厳密な射程距離は知らないけど、今回はUFOの増幅機能で、この惑星全体が射程距離になっている。
まさに、女神様特製のUFO、恐るべしってところだ。
かかる時間だけど、私の最大出力単独なら一秒間に二十人くらい。それが増幅器を通しているから毎秒二千億人くらいイケることになっている。
なので、二百秒。三分二十秒ってところか。
カップラーメンが出来上がるね!
と言うことで、その間、私はずっと魔力を最大放出し続けた。
それにしても、四十兆人って、とんでもない数だなぁ。
よく、そこまで繁殖したよ。
コイツ等って、もしかして黒かったり茶色かったりする、遭遇すると正直思い切り嬉しくない昆虫Gと同じレベルじゃない?
それは、さて置き、魔法の方は手応えあり。
モニターを地上映像に切り替えると、妖精の姿をした悪魔達は、全て頭部と胴体が切り離された後だった。
これで任務完了だ。
ふと思ったんだけど、ここにナツミを連れてくる意味ってあったのかな?
私の魔法攻撃一発で全て終わったわけだし、ナツミは、ただ、この空間の中で食っちゃ寝していただけだもん。
まあ、イイか。
ただ、この直後、突然、私は気を失った。
別に倒れるほど疲労していたわけではないと思うんだけど、何故か意識が飛んだんだ。
当然、このUFOもコントロールも出来ない。墜落しちゃうかな?
何も分からないよ……。
…
…
…
気が付くと、私は真っ白な空間の中にいた。
隣にはナツミの姿もあった。
「気が付いた?」
「ここは?」
「私にも分からない。ラヤの魔力放出が終わった後、UFOの中が真っ白な光に覆われてさ。私も意識を失っちゃって。それで、気が付いたらここにいたのよ」
「そう……」
この時だった。
突如、頭上に光の球体が現れて、私達の目の前まで降りてきた。
その雰囲気から、私は、この球体が女神グエホイ様であることを直感した。
女神様の声が、私達の頭の中に響いて来た。
「これで課題は全てクリアされました」
なるほどね。
それで、私達は強制的に、この空間に連れて来られたんだ。
その時に、気を失ったみたいになったんだ。
「良かったです。ホッとしました」
「でも、宇宙艦隊の出撃に間に合って良かったですね。間に合わなければ、一部取りこぼしが出るところでした。宇宙に出られてしまったら、何処でまた繁殖するか分かりませんでしたからね。これで、妖精の姿をした悪魔は完全に一掃されました」
「そうですか……」
でもね。完全な悪でも全殺しするのは、私だって本当は抵抗があったんだよ。
どんなにイイ人でも、状況次第でおかしくなる。環境次第では、善から悪に急降下することだって起こり得るんだ。
でも、既にグエホイ様は、プルプップ星人への救済を色々考えて、それでダメだったから、こう言った強行策に出たんだろうけどね。
なので、良かったとは思っても嬉しいとは思えなかったよ。
「ですので、次なる世界……バージェス世界に転移していただきます。今回の世界は比較的平和です。統治する女神はギガンテア。私の先輩にあたります」
「分かりました」
「あと、魔力は制限させていただきます。さすがに、地球を百四十周以上するほどのパワーは不要でしょうから」
「そうですよね」
「あと、使える魔法も限定します。殺人魔法も不要でしょう」
「そうですね」
今回は、プルプップ星人を根絶やしにすることが目的だったから、これだけ異常な魔力とか魔法を与えられていたけど、普通は不要だもんね。
「治癒魔法も、四肢欠損を繋ぐのはともかく、再生するレベルの上級魔法は無しにします。飽くまでも通常の治療・回復のみに制限します。ただ、強度は、これまで通り最上級レベルとしましょう。それから、一応、アイテムボックスは与えましょう。前に使っていたものを、そのまま使っていただきます」
「分かりました」
さすがに四肢再生まで行くと反則ってことかな?
それが必要な患者もいるから、使えないのは残念だけど。
でも、アイテムボックスが使えるのは有難いよ。
「それからナツミ」
「はい?」
「アナタにもバージェス世界に行っていただきます。ラヤのボディガードとしてご活躍ください」
「ええと、無敵のラヤにボディガードは不要では?」
「今度の世界では、ラヤが使えるのは医療に関する魔法と物質創製魔法、探査魔法、それから護身のための電撃魔法+αと言ったところです。しかも、物質創製魔法は飲食物と日用品と簡単な武器を出すことだけに限定します」
「そうなんですか?」
「はい。一応、ラヤのステータス画面の機能は、今まで通りにしますけどね。それで、ラヤの能力を限定する代わりに、ナツミに転移魔法と火炎魔法を授けます」
「私にですか?」
ナツミが転移魔法を使えるってのは有難い。
これで移動が楽になるし、私にとっては嬉しいよ。
転移魔法の重要性を、どれだけナツミが気付いているかは分からないけど。
「そうです。それと、ラヤ同様に護身のための電撃魔法は与えます。特にアナタは性的に危ない身体をしていますので」
「……」
「では、新世界では姉妹として協力し合いなさい。二人の活躍に期待します。医院を開設して生きるも良し、冒険者になるも良しです」
そう言われた直後、私とナツミは、何故か、赤茶けた地面が剥き出しになった路上に座っていた。強制的に転移させられたんだ。
道の両脇には草原が広がり、前方には街が見える。
困ったことに無一文だ。先ずは、あの街に行って少しお金を稼がないといけないね。
「じゃあ、ナツミお姉ちゃん」
「今まで通りナツミでイイよ。それじゃ、転移魔法で街のすぐ近くまで行くね」
「お願い」
「初めてだから、巧くできるかどうか分からないけど。失敗したらゴメンね」
「おいおい」
「それと、プルプップ星で食べ損ねたデザート。着いたところでお願いね!」
「はいはい」
「では、初体験転移。ナツミ、イキまーす!(初体験だけど?)」
と言うわけで、多少の不安を持ちながらだけど、私とナツミは、前方の街の五十メートル手前辺りを目掛けて転移に入った。
次回からは普通に(?)異世界です。
このイカれたエディアカラ世界が宇宙人の襲撃に遭っていたとの設定でしたので、その宇宙人を倒すところまで強引に入れさせていただきました。
あと、パワーが百億倍で射程距離も百億倍と言うのは計算上はおかしいと思っております。
射程距離が通常と同じ距離ならばパワーが百億倍になり、百億の平方根、つまり射程距離の十万倍の距離の位置に通常のパワーが到達するとの話ではなければならない気がします。
しかし、ここでは女神が超ご都合主義の「何でも百億倍」を与えてくれたとの解釈でお願い致します。




