31.宇宙へ!
翌日、私は残りの四十人の女性達を各村々に送り届けた。
そのうち、五人は居場所を失っていて連れ戻ってくることになったけど……。
これで、居場所を失った女性は合計十五人。
彼女達は、エリックにお願いしてX村で引き取ってもらう。
そして、さらに次の日、私は、この十五人とナツミ、アーノルドを連れて、
「転移!」
X村へと移動した。
村に着くと、
「早かったな!」
エリックが、いち早く私達に気付いて声をかけてくれた。
「これで野盗の軍勢は、殆ど壊滅したと思います」
「それは良かった」
「ただですね……。実は、一つお願いがありまして……。この女性達なんですけど……」
私はエリックに状況を説明した。
正直なところ、エリックには隠しても仕方が無い。と言うか、こっちが依頼する以上、正しく状況を理解していてもらう必要があるだろう。
なので、私は、
彼女達が野盗達の慰み者になっていたこと、
それが原因で亭主や彼氏の元に戻ることを最初は拒絶していたこと、
そこで、私が魔法で都合の悪い記憶を消去し、彼女達は、ただ奴隷のように働かされていたことしか覚えていないこと、
それで、彼女達は村に戻る決心をしてくれたこと、
でも、村に戻っても百人のうち、この十五人だけは旦那や彼氏に新しい相手が出来ていて居場所を失ってしまったこと、
これらを全部話したよ。
勿論、この女性達にも、他の村人達にも聞こえないようにしてね。
エリックは、
「まあ、来る者は拒まずってね。女手が欲しい家もあるだろうし、引き受けるよ」
と言ってくれた。本当に優しい人だ。
いやぁ、さすがエリック。マジで助かるよ!
「ありがとうございます! あと、この男なんですが」
「誰、この人?」
「アーノルドの完成形です。千人のチョンマゲ野盗達が融合した状態なんですけど、随分と風貌が変わりましたよね?」
「ま……まあ……」
正直、格闘漫画の準主人公くらいの風貌になったからね。
前の容姿とは全然違うんだもん。
エリックの反応も想定の範囲だよ。
「私は、彼に少しだけ魔力を授けました。あと、治癒魔法も」
ちなみに、アーノルドに与えた魔力は、魔力を吸収する魔法を使っていたヤツから奪った利息分なんだよね。
なので、私自身の魔力は初期値と全然変わらないんだ。
「じゃあ、彼は治癒魔法を使えるってこと?」
「そうです。実は、私は、これから女神様から与えられた最後の課題を片付けるべく旅立たなければなりません。しかも、行き先は宇宙です」
そう言いながら、私は天を指さした。
この世界には、地球と違って宇宙と言う概念は無い。
なので、この星を異星人が襲撃してきた時は、空の向こうから悪魔が襲来してきた程度の認識でしかなかったっぽい。
そして、さらに別の異星人が、襲撃してきた異星人の宇宙艦隊を撃破してくれた時は、神が悪魔を追い払うために来てくれたとの解釈だ。
なので、エリックには私の言葉の真意は理解できなかったと思う。
でも、
「数年前に襲ってきた悪魔達と戦うのかい?」
この世界の常識レベルで、これから私がしようとしていたことを理解してくれていたようだ。
結構、頭もイイんだよね、エリックは。
「そうです」
「一人でかい?」
「ナツミが同行してくれます」
「そうか」
「なので、治癒魔法はアーノルドに引き継ぎました。彼なら筋力自体も、かなりパワーアップしていますし、畑仕事も今まで以上にこなしますよ!」
人間性も問題無いし、アーノルドは、きっと村の最高戦力になるって思う。
残念ながら、その遺伝子をこの世界に残すことは出来けど。
「分かった。ラヤちゃんにも事情があるだろうし、女神様の課題じゃ無視するわけにも行かないってことだろうからね」
「はい」
「出発は、何時になるの?」
「もう出ます。ただ、その前に、あの辺の空き地に、彼女達の住むところを造らせて欲しいのですが」
「構わないけど、造るって、今から?」
「はい。では、早速」
私は、強大な魔力を放出し、物質創製魔法で約二十部屋の集合住宅を出した。
ここに、一先ず私が連れて来た十五人の女性に住んでもらう。
でも、こんなものまで出せるんだからね。
チート過ぎるよ。
やっぱり、この世界に居留まるべきじゃないね。行き過ぎると、周りの人達が私に依存し過ぎて堕落してしまう。
課題を終えたら、次にどうするかを女神様に相談しよう。
それから私は、
「出ろ!」
物質創製魔法でアダムスキー型UFOを出した。これに乗って敵地に向かう。
「では、今までありがとうございました」
「戻って来いよ」
「ありがとうございます」
私は、この地に戻ることを約束せずに誤魔化した。
『ありがとう』
って言葉は便利だね。
多分、私の心情を、エリックも十分理解していることだろう。
だからだろうね。それ以上、彼は何も言ってこなかった。
「では、転移!」
私はナツミと一緒にUFOの中に瞬間移動した。
UFOの中には、窓の近くに私とナツミが座る二つの席があるだけ。あとは、必要に応じて機材を置けばイイや。
そして、早速、
「出発!」
私はUFOを空高く急上昇させた。そのまま一気に宇宙空間へ突き進む。
それから、私はステータス画面を検索画面に切り替えた。
これも、とても便利な機能だ。
早速、チャットボットに質問。
『Q:敵の星の位置は?』
『A:右30度に6,000光年』
『Q:星の名は?』
『A:プルプップ星』
変な名前だけど。まあ、イイか。
では、
「プルプップ星に向けて、ラヤ、行きます!」
私はUFOを長距離瞬間移動させた。
それにしても、毎回言うけどマジで便利だね。
気が付いたら目の前には青い部分と赤茶けた部分だけで構成された星が見えていた。なんだか、地球と火星を足したみたいだね。
プルプップ星人は、アルセニコスの魔法でエディアカラの世界に誘導され、その結果、侵攻してきたけど、その背景として、この星の置かれた状況がある。
元々、プルプップ星は、地球を思わせるような水と緑の星だったらしい。
でも、とある事情で緑がほとんど無い、海と赤茶けた大地だけの星になってしまったそうだ。
それで、新たな居住惑星を求めてエディアカラ世界に侵攻してきた。
ただ、エディアカラ世界で人類と共存できれば良かったんだけど、プルプップ星人の辞書に共存と言う文字は無かった。
基本的に自己中なんだよね。
人類を滅ぼしてエディアカラ世界を自分達だけの星にしようと、侵略行為に走ったってことだ。
一旦、私はプルプップ星の衛星にUFOを着陸させた。
それにしても、今日はムチャクチャ疲れた。
このUFOの瞬間移動には、私の魔力が消費される。つまり、超々長距離転移魔法を使ったってことになるらしい。
そりゃぁ、疲れて当然だよ。
一応、このUFOには私の魔力を百億倍に増幅させる装置が特別に組み込まれている。
実は、この時のために女神グエホイ様が私の魔法で出せるよう、予めプログラムしておいた特製のUFOらしいんだ。
でも、一光年が約九兆五千億キロだからね。私には、六千光年の百億分の一……つまり、五百七十万キロの転移魔法を使っただけの負荷がかかる。
言うなれば、地球を一気に百四十周以上しただけのエネルギーを必要としたってことだ。それでも、地球から太陽までの距離にも満たないんだけどね。
正直、ここまで疲れたのは生まれて初めてだ。
何回かに分けてやれば良かったんだけど、若気の至りってことで……。
相当無理をしたからね。
もう死にそうだよ。
多分、MPが超マイナス値になっているんじゃないかな?
見るのも怖いくらい。
なので、しばらくここで、私は休息をとることにした。
私は、操縦席をリクライニングさせた。
既に、とてつもない睡魔が襲ってきて、私は一気に深い眠りに着こうとしていたところだったんだけど……、
「お腹すいたんだけど!」
とナツミの一言。
「じゃあ、その辺のモノ、適当に食べてて」
「その辺って、何も無いんだけど?」
そうだった。まだ、操縦席しか置いていない状態だったんだっけ。
まあ、操縦席って言っても、ただ座るだけで、別に私もナツミも操縦するわけじゃないんだけどね。
私は、
「出ろ!」
物質創製魔法でカップラーメンとお湯の入ったヤカンを出した。面倒臭いので、もう、こんなんでイイかと。
でも、これにナツミは不満顔の様子。
「懐かしいけど、もっとマシな食べ物無いの?」
「うーん、じゃあ。出ろ!」
私の趣味でシュークリームとエクレヤを出した。これを学校帰りにコンビニで買って食べながら帰るとかヤリたかったなぁ。
でも、ナツミは、
「いきなりデザート!? せめてステーキくらいは出してよ!」
随分とワガママ言ってくれているよ。食欲魔人かい!
もう、仕方が無いなぁ。
「じゃあ、出ろ!」
私はTボーンステーキを出してあげた。もう、これでイイよね!?
でも、
「フォークとナイフも! あと、テーブルとイスも出してよ!」
これだけじゃ食えないと。
はいはい。じゃあ、それらも用意するからちょっと待っててね。
「出ろ!」
「ありがとう!」
「じゃあ、おやすみなさい」
そのまま、私は寝落ちした。
何時間経っただろう?
私が目を覚ますと、隣の席ではナツミが目いっぱいリクライニングして眠りこけていた。随分満足そうな寝顔。
私は、さっき出したカップラーメンでも食べようかと思ったんだけど……あれっ?
カップラーメンもシュークリームもエクレヤも無いんですけど?
今、この空間には私とナツミしかいない。ってことは、全部ナツミに食べられちゃったってことか。
やっぱり食欲魔人だよ。
仕方が無い。
なので、
「出ろ!」
私は、カップラーメンとカップの御汁粉を出した。それからヤカンの中には新しいお湯をね。
インスタント食品を食べるのって、久しぶりだなぁ。
なんか、もの凄くワクワクしてきたよ!
これから待ち受けている戦いのことなんか、今だけは、すっかり忘れちゃったよ!




