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雨上がり、2人の帰り道。  作者: 佐々木 栞
雨上がりの帰り道

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先輩、今日も残業ですか?

ここのところ忙しい日々が続く。

...今日も残業だった。

会議が長引いたのも大きかった。


「はぁー...」

私はおもいっきりため息をつく。

昨日よりは遅くないけど残業ってだけで疲れる。

上田くんは用事があるって言ってわたしに仕事投げて帰っちゃうし。

見かねた工藤先輩が手伝ってくれたからなんとかなったもののそうでなかったら帰りがもっと遅くなってた。


しかも今日も雨。

止んでくれたからよかったけど連日雨は憂鬱になる。

連日の雨で帰り道には水たまりがたくさんできていた。


...今日も回り道していこう。

...気分転換だ。

...帰ってもひとりだし。

昨日寄った自販機を見るとそこには人影があった。

近づいていくと瀬戸先輩だった。

先輩は飲み物を選んでいるようだった。


昨日も見た。

先輩も残業だったんだ。

なんだか少し安心した。

気付けばまた私は声をかけていた。


「おつかれさまです」

先輩はチラッとわたしを見て視線をまた自販機に戻した。


「...おつかれさまです」

自販機に照らされた瀬戸先輩は表情を変えない。

これも昨日と同じ。

もしかすると無表情に近いかもしれない。

社内の噂では先輩をクールだとかロボットみたいだとか口が悪い人は無愛想だとか言う人がいる。

わたしは全然気にならないけど。


「先輩、今日も残業ですか?」

先輩はブラックコーヒーのボタンを押した。

ピッ。


「...うん」


先輩はブラックコーヒーを取り出し、その場で缶の蓋を開けた。

カチッ。

静かな夜に、無機質な音だけが響く。


私も飲み物買おうかなと悩んでいると、

先輩はブラックコーヒーを片手に、そのまま歩き出した。

先輩の後ろ姿を見送りながらちょっとかっこいいと思っている自分がいた。


再び視線を自販機に戻す。

昨日と同じくアイスティーを選んだ。

取り出し口からアイスティーを取り出すときに近くのベンチが目に入った。

...こんなところにベンチあったんだ。

設置されて長いのか古めのベンチだ。

今日は雨が降っていたからまだ濡れている。


...今日晴れていたら社内で噂の瀬戸先輩と話す機会があったのかも。

なんてありもしない想像をしてしまう。

瀬戸先輩には社内でファンまでいる。

瀬戸伝説なんてものまで流れている。

わたしも上田くんからちょっと聞いただけで真相は確かではないんだけど。


上田くん曰く、

瀬戸先輩が振った男の数は100人を越えるのだとか。

社長に仕事のことで真っ向から反論したとか。

会社の人は瀬戸先輩の連絡先を誰も知らないだとか。

そんなようなことを言っていた。


どれも本当だとは思えないんだけど、

瀬戸先輩のファンの人は信じてるみたい。

ファンの1人の上田くんがこの間熱心に語ってた。


もしも機会があったら真相を確かめてみたいものだ。

まあ、そんな機会はきっとないんだろうけど。

わたしはアイスティーをバッグに入れて帰り道に戻った。


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