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雨上がり、2人の帰り道。  作者: 佐々木 栞
雨上がりの帰り道

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3/3

気まずくない。

鈴木side


「ふぅ...」

エレベーター前で一息つく。

今日はいつもより仕事が長く感じたなぁ。

じっとりとした疲れが背中にまとまりつく。

帰ったら何しよう。

久しぶりに『氷の花』でも見ようかな。

そんなことを考えていたらエレベーターが着いた。

扉が開くと瀬戸先輩が乗っていた。

びっくりして頭が真っ白になった。

……挨拶しなきゃ。


「おつかれさまです!」


「...おつかれ」

瀬戸先輩は相変わらず無表情。


エレベーターの扉が閉まりゆっくりと降りていく。


瀬戸先輩と2人きりなんて初めてだ。


...何か話した方がいいのかな。


天気?


仕事?


思いきって瀬戸伝説のこと聞いちゃう?

...なんてダメに決まってる。


……だめだ。


何も思いつかない。


沈黙が2人の間を流れる


……あれ?


何だろう。


気まずくない。


不思議と居心地が悪くない。


その理由を考えているうちに、


エレベーターは1階へ着いた。


「お先です」


先輩に挨拶して先にエレベーターから降りた。


エレベーターを降りても、さっきの静かな時間が頭から離れなかった。


────


瀬戸 side


終業間際。

渡辺課長に急な会議が入った。

その際急ぎの資料作成を頼まれた。

頼まれた資料を早急に作り5階の会議室にいる渡辺課長に届けた。

資料を渡して、私の仕事は終わった。


階段とエレベーターどちらで降りるか迷った。

普段なら階段を使うがこの日は面倒な気持ちが勝ってしまった。

エレベーターの前に立ち、ボタンを押す。

...でもエレベーターは苦手。

一人だったらまだいいが誰かと一緒になる空間がちょっと苦痛。

幸い一緒に乗る人はいなかった。

エレベーターが5階に着き、扉が開く。


誰もいないエレベーターに乗り込む。

このままストレートで降りてほしい。

エレベーターのデジタルパネルが3階を表示するとポーンと音が鳴った。

わたしの願いは届かず途中の階で止まる。


エレベーター前には一人の女性が立っていた。


扉が開いた瞬間、


その人は目を丸くした。


……ああ。


最近よく会う後輩。


...確か...鈴木さん。

私は人の顔を覚えるのが苦手。

鈴木さんは低く結ばれたお団子の髪型がよく似合っていて印象的だった。


「おつかれさまです!」


「...おつかれ」


鈴木さんが乗り込みエレベーターが動き出す。


なんであんなに驚いていたのだろう。


私の顔に何かついていたのだろうか。


……まあいいか。


2人の間に沈黙が流れる。


誰かと2人きり。

いつもなら気まずい雰囲気が流れるのにそれがない。


……なんだろう。


この感じ。


今まで感じたことがない。


答えが出ないままエレベーターは1階に着いた


鈴木さんは一言。


「お先です」


それだけだった。


私はその背中を少しだけ目で追った。


……変な感じだ。


でも嫌じゃなかった。


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