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私の婚約契約書は嘘だったのね? 元引きこもり皇女は幸せになるため、お茶会を開き、お店を始めます。悪役たちにはざまぁを差し上げますわ  作者: 西野 歌夏
後日談 ショコラケーキと裏切りの指輪

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82. 【アリス視点】もう、二度と嘘の恋の手紙なんか書かないっ!

◆**アリス視点**◆



「カイとロミィの婚約はアッシュクロフト領でまとまったでしょう?聖セレスティーヌ女学院とセント・エントン王立学院に二人が戻ったあの日、駅であのおじいさんに渡されたのよ。アルベルト王太子か、フェリクス殿下に見せろって」


 コンスタンツェが言ったその時、私は叫んだ。


「あなた、あの後取り調べを受けたわよね?私たちに追及されたわよね?」


 王立魔術博物館の館長代理として、コンスタンツェが何度も教授に利用されるのは、許せなかった。コンスタンツェが取り調べの最中に、全てを私たちに話していないのも、許せない。


 私の剣幕にコンスタンツェはたじたじとなり、後ずさった。


「なぜあの時そのことを話さないの?」

「だって……おじいさんの渡した封筒の紙なんて、重要じゃないと思うじゃない。あなたたちは、私の書いた嘘の恋の手紙が、全てをひっくり返したとか……教授とか……ずっとそのっ」


 コンスタンツェは下を向いて涙をこぼした。手が震えている。

 ——違う。私に話さないように重要ではないと思わされていた?


「もう、二度と嘘の手紙なんか書かないっ!書くならこの世に存在しない人の話にするわっ!私の恋の相手に関する手紙は二度と書かないっ!」


 コンスタンツェは泣き叫ぶように言った。

 そこで、エミリアが静かに話した。


「昨晩、エリオットと話しているコンスタンツェを見つけて、彼女を問い詰めたの。エリオットからの伝言をあなたに話すと言うコンスタンツェに、『伝言だったら全部伝えるの?よく考えて!』と言ったら、彼女がそういえば、もう一つ伝言を預かっていたと言って、そのおじいさんの話をしたのよ」


 エミリアはコンスタンツェの肩をそっと抱きしめた。


「で、昨晩はイヴォンヌがコンスタンツェの鞄の中身を取り替えていたでしょう?彼女が大事な書類や宝石をエリオットに渡さないように。私がイヴォンヌから預かっていたその鞄をコンスタンツェに返しそびれていたことに気づいたの。で、私が鞄を開けて、その封筒を見つけたのよ。そのおじいさんに渡されたという封筒の中身を見たの」


 エミリアは、フェリクス殿下の方を向いた。


「昨晩、初めてコンスタンツェも封の中を見たの。エイトレンスの王太子の死亡診断書なんて、とんでもないわ」


 彼女はまっすぐに私を見た。


「アルバ公爵家の者に頼んで、殿下の宿を突き止めさせ、私がこれを届けたの」


 エミリアはそう言った。

 そこで、コンスタンツェが私の顔をまっすぐに見た。


「私は馬車の中でエミリアを待っていたけれど、フェリクス殿下がエミリアを連れてやってきて、私たちを尋問しようとしたのよ」


 私はコンスタンツェを見つめた。


「この場合、最も信頼できるのは、アリス、あなたしか思いつかなかった。だから、フェリクス殿下を連れてここまで来たの。あなたと一緒でなければ、どうやって手に入れたか話せないと私が言ったの。エリオットの伝言を伝えてごめんなさい」



 コンスタンツェの瞳はライトブラウンだ。


 式魔からも教授からも解放された、本来の瞳で、私をまっすぐに見つめていた。


「よく分かった。ロミィ皇女の店にこの死亡診断書は持ち込む」


 フェリクス殿下はそれだけ言った。


「君たちは、レスパーニュのアルバ公爵領に向けて出発するんだろ?」


「ちょっと出発を遅らせるわ。もう九時半だから」


 コンスタンツェが、気まずそうに彼女を見た。

 けれど、エミリアはその肩に回した手を離さなかった。


「皆で朝食を食べましょう」


 私はそう言って、呼び鈴に手を伸ばした。


「ロミィの店はまだ開かないから。殿下も、お付き合いくださいますか?」

「ぜひ。昨夜から、何も食べていないんだ」


 その返事を聞いた途端、私も空腹だったことを思い出した。

 メイドに四人分の朝食を頼むと、コンスタンツェがおずおずと私を見た。


「……私も、いただいていいの?」

「もちろんよ。あなたも一緒に食べるの」


 彼女は唇を噛んで、小さく頷いた。


 そのライトブラウンの瞳に、また涙が浮かんだ。


 フェリクス殿下は死亡診断書を封筒へ戻し、傍らに置いた。


 窓から差し込む朝の光が、四人分の食器を照らしていた。


 まだ、何もかもが片づいたわけではない。

 それでも今は、温かい朝食を、この人たちと食べたかった。




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