↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の婚約契約書は嘘だったのね? 元引きこもり皇女は幸せになるため、お茶会を開き、お店を始めます。悪役たちにはざまぁを差し上げますわ  作者: 西野 歌夏
<終章> 幸せになるために

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/87

61. 【アリス視点】二十一歳の未亡人

 ゴーニュの森が、色づき始めている。

 私は館長代理に再任した。


 あの日、私の二十三年に及ぶ旅は、ようやく終わった。


 二十三年ぶりの我が家は、緊迫した状況を脱していた。モンフォール伯爵家が迅速な対応をしたおかげで、父も母も無事だった。


 父と母にとって、私は一晩だけ行方をくらませた娘だった。

 私にとっては、二十三年ぶりの我が家だった。 


 何より、昨晩より行方がわからなくなっていた私が無事に帰宅したことで、父と母には泣いて喜ばれた。


 一度四十代前半まで生きた身からすると、身体だけは、軽い二十一歳に戻ったのは、ご褒美に思えた。ただ、子はいなかったが、私を大事にしてくれたスペンサー伯爵のことは忘れられない。彼は数年前に亡くなっていたが、これからも彼のお墓には花を手向けに行こうと思う。


 家からは式魔はいなくなっていた。教授の命令を受けた式魔も、もう新たには生まれない。残された命令が尽きるのも、時間の問題だ。


 我がブレンジャー子爵邸の庭に、池はもうない。

 あの夏、造園業者が埋めてしまったから。


 ——それでも私は、そこに落ちて、帰ってきた。


 あの二階の窓から、真下には石畳が広がっている。

 私が落ちた窓だ。

 窓のそばに立つと、今でも落ち着かない気持ちになる。


 ——もう一度落ちたら、スペンサー伯爵に会えるのだろうか?

 ——いや。池はもうない。下は石畳だ。


 そんな感傷に浸っている場合ではない。

 私には責任があるのだから。

 投げ出さず、自分の仕事を全うしなければならない。


 隣の屋敷には、ロミィたちのおじさまがエーレンフェルト子爵となり、住んでいる。


 我がブレンジャー子爵家には、魔力を持つ子が生まれない。

 ロミィの母方のエーレンフェルト子爵家も、同じだ。


 魔法を守る家に、魔力はない。


 だから私は、魔力を買って使う。館長代理でありながら。


 ロミィ、アダム、ルイ皇太子の力は、父方のロクセンハンナ家に現れる力だ。


 力を持つ家は、狙われる。

 ——そして狙う者は、力を持たない者の手を使う。


 私のように。


 私は魔力を持たないのに、紋章を持つ。一歩間違えれば、反逆者の共犯者にされ得る。


 守らなければならないのは、紋章だけではない。自分自身の意思もだ。

 この戒めは、生涯私を律するのに役立つだろう。



 カイ・アッシュクロフトとロミィ皇女の婚約は、国中の者が知っている慶事だ。


 カイに溺愛されていることは知られていて、世界中の若い令嬢たちの嘆きの的だ。


 ロミィが強い魔力を持つこと自体は知られている。けれど、あの子が実際に何を、どこまでできるのかを知る者は少ない。私はその秘密を、生涯守り通すつもりだ。魔力が強く、正義感の強い伝説のブルクトゥアタとして、国内外に知られているが、その強さの程度はほとんどの人に知られていない。


 最後に、私を救うために四歳のロミィが仕込み、十五歳のロミィが唱えた呪文が、私の耳に残っている。


 「アリスと私は、ずっと幸せに生きるのよ」


 結局、シンプルな願いのような呪文が最強なのだ。


 王立魔術博物館館長代理として、ここに断言しよう。


 我々はすでに、この世で最も強い魔法に日々守られている。


 誰かの願いという形で。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。