61. 【アリス視点】二十一歳の未亡人
ゴーニュの森が、色づき始めている。
私は館長代理に再任した。
あの日、私の二十三年に及ぶ旅は、ようやく終わった。
二十三年ぶりの我が家は、緊迫した状況を脱していた。モンフォール伯爵家が迅速な対応をしたおかげで、父も母も無事だった。
父と母にとって、私は一晩だけ行方をくらませた娘だった。
私にとっては、二十三年ぶりの我が家だった。
何より、昨晩より行方がわからなくなっていた私が無事に帰宅したことで、父と母には泣いて喜ばれた。
一度四十代前半まで生きた身からすると、身体だけは、軽い二十一歳に戻ったのは、ご褒美に思えた。ただ、子はいなかったが、私を大事にしてくれたスペンサー伯爵のことは忘れられない。彼は数年前に亡くなっていたが、これからも彼のお墓には花を手向けに行こうと思う。
家からは式魔はいなくなっていた。教授の命令を受けた式魔も、もう新たには生まれない。残された命令が尽きるのも、時間の問題だ。
我がブレンジャー子爵邸の庭に、池はもうない。
あの夏、造園業者が埋めてしまったから。
——それでも私は、そこに落ちて、帰ってきた。
あの二階の窓から、真下には石畳が広がっている。
私が落ちた窓だ。
窓のそばに立つと、今でも落ち着かない気持ちになる。
——もう一度落ちたら、スペンサー伯爵に会えるのだろうか?
——いや。池はもうない。下は石畳だ。
そんな感傷に浸っている場合ではない。
私には責任があるのだから。
投げ出さず、自分の仕事を全うしなければならない。
隣の屋敷には、ロミィたちのおじさまがエーレンフェルト子爵となり、住んでいる。
我がブレンジャー子爵家には、魔力を持つ子が生まれない。
ロミィの母方のエーレンフェルト子爵家も、同じだ。
魔法を守る家に、魔力はない。
だから私は、魔力を買って使う。館長代理でありながら。
ロミィ、アダム、ルイ皇太子の力は、父方のロクセンハンナ家に現れる力だ。
力を持つ家は、狙われる。
——そして狙う者は、力を持たない者の手を使う。
私のように。
私は魔力を持たないのに、紋章を持つ。一歩間違えれば、反逆者の共犯者にされ得る。
守らなければならないのは、紋章だけではない。自分自身の意思もだ。
この戒めは、生涯私を律するのに役立つだろう。
カイ・アッシュクロフトとロミィ皇女の婚約は、国中の者が知っている慶事だ。
カイに溺愛されていることは知られていて、世界中の若い令嬢たちの嘆きの的だ。
ロミィが強い魔力を持つこと自体は知られている。けれど、あの子が実際に何を、どこまでできるのかを知る者は少ない。私はその秘密を、生涯守り通すつもりだ。魔力が強く、正義感の強い伝説のブルクトゥアタとして、国内外に知られているが、その強さの程度はほとんどの人に知られていない。
最後に、私を救うために四歳のロミィが仕込み、十五歳のロミィが唱えた呪文が、私の耳に残っている。
「アリスと私は、ずっと幸せに生きるのよ」
結局、シンプルな願いのような呪文が最強なのだ。
王立魔術博物館館長代理として、ここに断言しよう。
我々はすでに、この世で最も強い魔法に日々守られている。
誰かの願いという形で。




