表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生したのでダーツを布教してたら最強の投擲魔法になってました~最終目標は自分のダーツバーです~  作者: Pman


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/18

第八話:作るという価値

酒場の壁には、いくつもの傷が増えていた。


木片が刺さった跡。外れた痕。何度も何度も投げられた証拠だ。


「これ、先が潰れてきてるぞ」


誰かが不満げに言う。


「さっきより刺さりにくい」


「曲がってねえか?」


別の声も続く。


俺は一本、木片を手に取った。


確かに、先端が丸くなっている。軸もわずかに歪んでいる。


(当然だな)


元はただの木片だ。


削っただけの簡単なもの。数が増えれば、質は落ちる。


「新しいのはねえのか?」


「これ使いづらいぞ」


声が増えていく。


――来たな。


「ある」


俺は短く答えた。


視線が集まる。


「ちゃんとしたの、作る」


「ちゃんと?」


「今のより、まっすぐ飛ぶやつ」


ざわめき。


「そんなの作れんのか?」


「作る」


言い切る。


「ただし、有料だ」


空気が少し変わる。


「また金かよ」


「当たり前だろ」


俺は木片を指で回す。


「道具だ」


「道具……」


「いいやつは、ちゃんと飛ぶ」


単純な話だ。


それでも、響くやつには響く。


「いくらだ?」


誰かが聞く。


「一本、銅貨二枚」


「高えな」


「さっきの倍じゃねえか」


予想通りの反応。


だが、問題ない。


「試すか?」


俺は一本、まだ使っていない木片を取り出す。


少しだけ丁寧に削ったものだ。


軸を整え、重さを揃えた。


簡単だが、“意識して作った”一本。


「見てろ」


壁の前に立つ。


構えて、投げる。


――音が違う。


軽く、深く刺さる。


中心。


「……おい」


誰かが呟く。


もう一本。


同じように投げる。


ほぼ同じ場所。


「違うな……」


「さっきより安定してる」


「なんだそれ」


ざわめきが広がる。


荒い少年が、手を伸ばす。


「貸せ」


渡す。


構えて、投げる。


外側だが、明らかに軌道が安定している。


「……投げやすい」


小さく呟く。


最初の子供も試す。


「あ、これ……」


外したが、壁にはしっかり刺さる。


「さっきのよりいい」


その一言で、流れが決まった。


「俺も欲しい」


「二枚だろ?出す」


「三本くれ」


硬貨が、机に置かれていく。


(成立だな)


俺は一本ずつ渡していく。


同時に、頭の中で考える。


数が足りない。


削るだけじゃ追いつかない。


(時間がいる)


その時だった。


「……雑だな」


低い声。


振り返ると、カウンターの端に一人の男が座っていた。


小柄だが、がっしりした体。


腕が太い。指が分厚い。


目が、道具を見ている。


(……職人か)


男は俺の持っている木片を指さした。


「それ、誰が作った」


「俺だ」


「ほう」


立ち上がる。


ゆっくりと近づいてくる。


一本、手に取る。


重さを確かめ、軸を転がす。


それから、鼻で笑った。


「真っ直ぐにする気はあるらしいが……甘いな」


「どこがだ」


「全部だ」


即答。


「重さがバラバラだ。軸も微妙に歪んでる。先端の角度も一定じゃねえ」


淡々と指摘される。


「それでも飛ぶが、無駄が多い」


「……詳しいな」


「当たり前だ」


男は肩を鳴らす。


「俺は作る側だ」


やはり、か。


「じゃあ、作れるのか」


「作れる」


即答。


迷いがない。


「もっといいやつをな」


酒場の空気が、少し変わる。


「おい、できるのかよ」


「すげえの出てきたな」


ざわめき。


男は俺を見る。


「どうする」


試すような目。


俺は一瞬だけ考えて――答えた。


「やるか」


「いいだろう」


男は口元を歪めた。


「材料と場所、貸せ」


「分かった」


店主が奥を指さす。


「裏使え」


「助かる」


短く言って、男は歩き出す。


途中で振り返る。


「見てろ」


それだけ言って、奥へ消えた。


静かな自信だった。


周りがざわつく。


「どうなんだよ」


「もっとすげえの出てくんのか?」


荒い少年が俺を見る。


「どうする」


「決まってる」


俺は短く答える。


「いいやつができるなら、それを使う」


単純だ。


良いものは残る。


それだけの話。


俺は壁を見る。


傷だらけの木。


刺さった跡。


外れた跡。


全部、積み重なっている。


(次だな)


ただ投げるだけじゃない。


作る。


選ぶ。


広げる。


ダーツは、もう一段上に行く。


奥の方から、削る音が聞こえてきた。


新しいものが、生まれようとしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ