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異世界に転生したのでダーツを布教してたら最強の投擲魔法になってました~最終目標は自分のダーツバーです~  作者: Pman


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第十七話:実戦という現実

「……あれ、魔物じゃねえか」


荒い少年の声が、いつもより低かった。


視線の先。


草むらが、不自然に揺れている。


さっきまでの風とは違う動き。


一定じゃない。重さがある。


「……いるな」


俺も小さく答える。


街の外れ。


門から少し離れた場所。


普段は人の気配があるが、今は少ない。


その隙を突くように、何かが出てきていた。


ガサ、と音がして――


姿を現した。


犬に似ているが、目が濁っている。


毛並みも荒く、牙が剥き出しだ。


「……野犬か?」


「違うな」


俺は首を振る。


「魔物だ」


空気が一気に変わる。


酒場とは違う。


練習とも違う。


目の前にあるのは、“襲ってくる存在”だ。


低く唸る。


一歩、近づく。


「……どうする」


荒い少年が、小さく言う。


いつもの強気はない。


当然だ。


初めてだ。


「やる」


俺は答える。


短く。


「正気かよ」


「逃げるか?」


「……」


沈黙。


逃げるのが正しい。


分かっている。


だが――


(ここで逃げたら、意味がない)


一年。


外に出るための準備。


その最初が、これだ。


「下がれ」


俺は一歩前に出る。


ダーツを構える。


距離は、中距離。


(動く)


枝とは違う。


速い。


読めない。


「……来るぞ!」


荒い少年が叫ぶ。


魔物が、地面を蹴った。


一気に距離を詰めてくる。


(速いな)


だが、止まらない。


――投げる。


外れる。


「ちっ!」


「外した!」


荒い少年の声。


魔物は止まらない。


さらに近づく。


(距離が近い)


判断が遅れる。


もう一本。


構える。


(落ち着け)


呼吸。


動き。


軌道。


――投げる。


当たる。


だが、浅い。


「……効いてねえ!」


魔物は止まらない。


むしろ、さらに速くなる。


牙が近い。


(まずいな)


もう一本。


だが、時間がない。


「避けろ!」


荒い少年が叫ぶ。


体が勝手に動く。


横に飛ぶ。


地面に転がる。


風を切る音。


すぐ横を、魔物が通り抜けた。


「……っ!」


息が詰まる。


心臓がうるさい。


(これが……実戦)


練習とは違う。


余裕がない。


考える時間がない。


「おい、どうすんだ!」


荒い少年が叫ぶ。


魔物が向きを変える。


再び、こちらを見る。


低く唸る。


(落ち着け)


焦るな。


さっきの失敗。


距離。


タイミング。


全部、思い出す。


(動きは単純だ)


直線的。


突っ込んでくる。


(なら)


構える。


呼吸を止める。


魔物が踏み込む。


その瞬間。


(ここだ)


――投げる。


今度は、早い。


軌道を先に置く。


当たる。


目の近く。


深く刺さる。


「ギャッ!?」


魔物が悲鳴を上げる。


動きが止まる。


「今だ!」


荒い少年が叫ぶ。


俺はもう一本、構える。


距離は近い。


確実に。


――投げる。


喉元。


深く刺さる。


魔物が倒れる。


動かない。


静寂。


風の音だけが戻る。


「……はあ……」


荒い少年が、その場に座り込む。


「や、やったのか……?」


「……ああ」


俺も息を整える。


手が、少し震えている。


(怖かったな)


正直に思う。


酒場とは違う。


当たれば終わり、じゃない。


当てなければ、終わる。


それだけの差。


「……やべえな、これ」


荒い少年が笑う。


だが、声は少し震えている。


「死ぬかと思った」


「俺もだ」


隠す必要はない。


「でも、やれたな」


「ああ」


短く答える。


魔物を見る。


倒れている。


さっきまで動いていたものが、もう動かない。


(……現実だな)


これが外。


これが戦い。


「……まだ足りねえな」


荒い少年が言う。


「ああ」


同意する。


当てた。


だが、ギリギリだ。


一歩間違えれば、終わっていた。


「さっき外してたら、終わってたぞ」


「分かってる」


だからこそ――


(もっとだ)


精度。


速さ。


判断。


全部、足りない。


俺はダーツを握り直す。


血の付いた先端を見る。


(……これも必要か)


避けては通れない。


なら、慣れるしかない。


「やること増えたな」


荒い少年が立ち上がる。


「だな」


俺も立ち上がる。


枝を見る。


さっきまでの練習。


それが、少し違って見える。


「続けるか」


「ああ」


短く答える。


怖さは残っている。


だが、それでいい。


それを含めて、慣れる。


俺はダーツを構える。


揺れる枝。


さっきの感覚を思い出す。


――投げる。


当たる。


さっきよりも、少しだけ深く。


「……いいな」


小さく呟く。


実戦を知った。


それだけで、変わる。


まだ足りない。


だが――


確実に、近づいている。

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