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異世界に転生したのでダーツを布教してたら最強の投擲魔法になってました~最終目標は自分のダーツバーです~  作者: Pman


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第十三話:足りないもの

朝の空気は、酒場とは違って静かだった。


まだ人も少ない街の外れ。


俺は一人、木片――いや、今は職人製のダーツを手に立っていた。


(ここならいいか)


家から少し離れた場所。


人目も少ない。


壁の代わりに、木に印をつける。


いつものように、構える。


――投げる。


音は軽い。


中心に近い位置に刺さる。


二投目。


同じ軌道。


三投目。


わずかにズレるが、それでも内側。


(問題ないな)


精度は安定している。


酒場の中なら、負ける気はしない。


だが――


(それだけだ)


ダーツを抜きながら、思う。


当てることはできる。


だが、それだけで外に出られるかと言われれば、答えは違う。


「……外か」


小さく呟く。


街の門の方を見る。


人の出入りがある。


商人の荷車。護衛らしき男たち。


外へ行く者と、戻ってくる者。


その中の一人が、ふらつきながら歩いていた。


服が裂けている。


腕に巻かれた布が赤い。


(怪我……か)


近くにいた人間が、慌てて駆け寄る。


「どうした!」


「外で……やられた……」


「魔物か!?」


「……ああ」


短いやり取り。


それだけで、十分だった。


空気が少しだけ重くなる。


(これが、外か)


酒場とは違う。


遊びじゃない。


当たればいい、では終わらない。


当てられなければ、終わる。


それだけの場所。


「……」


手の中のダーツを見る。


まっすぐだ。


精度もある。


だが――


(足りないな)


何が足りないのかは、はっきりしている。


速さ。


反応。


そして――


「当てるだけじゃ、意味がない」


小さく言う。


動いている相手。


襲ってくる相手。


それに対して、同じように投げられるか。


(無理だな、今は)


認めるしかない。


その時だった。


「おい」


声がかかる。


振り返ると、荒い少年が立っていた。


「こんなとこで何してんだ」


「練習」


「朝からかよ」


呆れたように言うが、その目は真剣だ。


「……外、行くんだろ」


「ああ」


「見たか」


顎で門の方を指す。


さっきの怪我人。


「見た」


「やべえな」


短い一言。


「死ぬぞ」


「そうだな」


否定はしない。


「それでも行くのか」


「行く」


即答。


荒い少年は、少しだけ黙ってから笑った。


「馬鹿だな」


「よく言われる」


「……まあいい」


そのまま近づいてくる。


「俺もやる」


「何を」


「投げるに決まってんだろ」


当然のように言う。


一本、ダーツを取り出す。


「動くやつ、狙えばいいんだろ」


そう言って、近くの枝を蹴る。


揺れる。


不規則に動く。


「これでいいか」


「……いいな」


即席だが、悪くない。


「先やるぞ」


構えて、投げる。


枝に当たるが、狙いは外れている。


「くそ……!」


もう一度。


今度は少しだけ寄る。


三投目。


かすめる。


「……ちっ」


悔しそうに舌打ちする。


「難しいだろ」


「ああ」


短く答える。


「でも、やるしかねえ」


その通りだ。


俺は一本、手に取る。


揺れる枝。


不規則な動き。


タイミング。


(合わせる)


呼吸を止める。


動きを読む。


――投げる。


当たる。


だが、中心ではない。


「……浅いな」


刺さりも甘い。


「まだだな」


荒い少年が言う。


「まだだ」


そのまま、もう一本。


今度は少し遅らせる。


動きの先を読む。


――投げる。


さっきよりも、深く刺さる。


「おお」


「……でも、安定しねえ」


その通りだ。


止まっている的とは、まるで違う。


「これが外か」


荒い少年が言う。


「動いてんだよ、全部」


風も。


相手も。


状況も。


「当てるだけじゃ足りねえな」


「ああ」


ようやく、はっきりした。


足りないもの。


精度だけじゃない。


対応力。


応用。


「……魔法とか、いるんじゃねえのか」


ぽつりと呟く。


「魔法?」


「ほら、火とかよ」


「……どうだろうな」


考えたことはある。


だが、今はまだ遠い。


「まずはこれだ」


ダーツを軽く回す。


「これで当てられなきゃ意味がない」


「違いねえ」


荒い少年は笑う。


「やるか」


「やる」


短い会話。


それで十分だ。


二人で並んで、枝を見る。


揺れる。


不規則。


それを、狙う。


投げる。


外す。


また投げる。


繰り返し。


時間が過ぎる。


日が少しずつ上がる。


街の音が増えていく。


それでも、手は止めない。


(足りないなら、埋めるだけだ)


一年。


やることは決まった。


俺はもう一度、ダーツを構える。


揺れる的。


その先を読む。


――投げる。


今度は、少しだけ深く刺さった。


「……いいな」


小さく呟く。


まだ足りない。


だが、確実に近づいている。


それでいい。


ここから、全部揃える。

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