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異世界に転生したのでダーツを布教してたら最強の投擲魔法になってました~最終目標は自分のダーツバーです~  作者: Pman


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第十話:常連という存在

酒場の扉を開けた瞬間、視線が集まった。


「来たぞ」


誰かが言う。


それに合わせるように、何人かが手を上げた。


「おう、今日もやるんだろ」


「昨日の続きだ」


「順番、俺のとこからな!」


昨日と同じ場所。


同じ壁。


だが、空気はまるで違っていた。


(……もう待ってるのか)


俺は軽く周りを見渡す。


顔ぶれが、ほとんど同じだ。


昨日、最後まで残っていた連中。


あの大人の男。荒い少年。最初に投げていた子供。


そして、他にも何人か。


全員が、自然と同じ場所に集まっている。


「遅えぞ」


荒い少年が腕を組んで言う。


「まだ開いたばっかだろ」


「関係ねえよ」


だが、その顔は笑っていた。


最初の子供は、すでに壁の前に立っている。


手には、銀貨で買ったダーツ。


「……先に投げていいか?」


「いいぞ」


頷くと、すぐに構える。


一投目。


中。


「三!」


誰かがすぐに声を上げる。


二投目。


外。


「一!」


三投目。


中。


「三!」


「合計七!」


自然に、誰かが数える。


(もう回ってるな)


俺がいなくても、成立している。


ルールも、流れも、共有されている。


「次俺!」


別の男が前に出る。


同じように投げる。


外して、笑って、またやる。


それを見て、また誰かが前に出る。


繰り返し。


途切れない。


「……すげえな」


荒い少年がぼそりと呟く。


「何がだ」


「勝手に回ってる」


「そうだな」


それでいい。


俺が全部やる必要はない。


場があれば、人は勝手に動く。


「おい」


低い声。


あの男だ。


銀貨を出したやつ。


いつの間にか、カウンターの近くに立っている。


「今日もやるぞ」


「どうぞ」


短く返す。


男は一本のダーツを手に取る。


昨日買ったやつだ。


「この前の続きだ」


「同点だったな」


「ああ」


わずかに口元を上げる。


「今日は決める」


「好きにしろ」


俺は壁の前に立つ。


周りが自然と少し下がる。


空間ができる。


誰も指示していないのに。


(いいな)


これだ。


「三投」


俺が言う。


「合計」


男がうなずく。


先攻は、男。


一投目。


中。


「三」


二投目。


中。


「三」


三投目。


中心に近い。


「五」


「合計十一!」


昨日と同じ。


だが、精度は上がっている。


「来い」


男が言う。


俺は前に出る。


構える。


一投目。


中。


「三」


二投目。


中。


「三」


周りが息を呑む。


三投目。


静かに、中心を狙う。


――投げる。


音が、吸い込まれる。


中心。


「五!」


「同点だ!」


ざわめき。


だが、すぐに笑いに変わる。


「またかよ!」


「決まんねえな!」


「いい勝負すぎるだろ!」


男が、小さく笑う。


「やっぱりな」


「悪くないだろ」


「ああ」


短い会話。


それだけで、十分だった。


「もう一回だ!」


誰かが叫ぶ。


「次は俺も混ぜろ!」


「順番だって!」


声が重なる。


さらに人が増えている。


昨日よりも、明らかに。


「おい、場所足りねえぞ」


「詰めろ詰めろ!」


誰かがテーブルを動かす。


椅子をずらす。


空間が広がる。


勝手に整えられていく。


(……いい)


場が、できている。


ただの遊びじゃない。


ただの勝負でもない。


人が集まって、続いていく場所。


それが、ここにある。


俺は少しだけ壁から離れて、全体を見る。


投げるやつ。


数えるやつ。


笑うやつ。


悔しがるやつ。


それぞれが勝手に動いている。


誰も無理をしていない。


それでも、続いている。


「なあ」


最初の子供が、俺の横に来る。


「これ、明日もやるのか?」


少しだけ不安そうな顔。


俺は答える。


「やるだろ」


「……そっか」


それだけで、安心した顔になる。


荒い少年も、ちらりとこちらを見る。


「逃げんなよ」


「逃げねえよ」


「ならいい」


ぶっきらぼうに言って、また前に出る。


その背中を見て、俺は小さく息を吐いた。


(これだな)


探していたもの。


前の世界で、作れなかったもの。


それが、少しだけ形になっている。


まだ小さい。


まだ不安定だ。


それでも、確かにある。


人が集まって、繋がっている場所。


「次!」


声が響く。


また一人、前に出る。


ダーツを構える。


投げる。


笑いが起きる。


その繰り返し。


――ここはもう、ただの壁じゃない。


場になっていた。

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