第24話 一番楽しみにしていたのです
「おや。ミル殿?今日から授業でしたよね?どうでした?」
リシュネラ様の部屋に向かっているとリネイル様とすれ違った。山のような書類の束を抱え走り回って執務に忙しそうだ。
せっかくなのでミリュエル様の意識改革対策を伝えると面白がって城にいる人全員にその日のうちに指令が行き渡っていた。
『ミリュエル様は学ぶことがお嫌いなので何も教えてはいけない』と。
手配が早くてびっくりしますね?そして家庭教師を依頼したのにこれでいいんですか王様……。
「学ぶ必要があるということに気付くことも勉強であろう?」
と言って面白そうに片目を瞑っていたから良し……ってことなんだろう。
まぁこれでミリュエル様対策は良しとしますか。しばらくは様子見ーっと。
リシュネラ様は今まで振り回されていた分、知識に飢えているようだった。
社交のルールや礼儀作法は今までの授業でほとんど終わっていたし、経済や歴史でもとにかく基礎は一通りあっという間に覚えてしまった。学院はそのあたりの授業は初級で確実にやる上に上級クラスになると実践ということで舞い込んだ仕事で使う機会も多く知識もばっちりです。
基礎以外はもっと学びたければ専門を依頼することにして私の専門ということで魔法の授業となった。
「リシュネラ様は物覚えがいいですね……。基礎だけとはいえこれだけ広範囲の授業が短期間で終わるとは思いませんでしたよ」
「リーシュで構いませんわ、ミル様。そうですね……学ばなくてはいけないことはたくさんあるとずっと思ってはいたのです……」
そっとお茶の入ったカップを机に戻しながら遠くを見つめて言った。
「王族である以上いずれはこの国を出て他の国に行くことになるのでしょう。もちろん必要があれば国内で婚姻することもありますが……ですが国外に出た時、何も知らずにいたらと思うと怖いのです。場に合わないことをすればランドールの名に傷をつけることになるでしょう。何も知らず話に加われなければ間違えたことを吹き込まれても気付けず命を落とすこともあるでしょう……」
「そうですね。よくわかっていらっしゃると思いますよ。知らないことがある、学ぶ必要があるということを知っていることは何よりの強みとなると思いますよ」
「はい。だからどうかよろしくお願いしますね?先生」
くすくすと二人で笑いあう。
「さてそれでは、本日から魔法の授業に本格的に取り掛かりましょう」
「えぇ、よろしくお願いします。実は魔法の授業を一番楽しみにしていたのです」
初級用の教本は先に渡しておいたのですでに目を通したようだった。
「えーっと……なんかすごい数の付箋が見えますが……。さすがにそれ全部一日では答えられそうにないですね」
「魔法は難しいですわ……。読んでもよくわからないことが多すぎて……」
「魔法は感覚的なものや実際見てみる、体験してみないと分からないも多いですからね……目を通されただけでも十分です。最後まで見たのがすごいかと」
ぱらぱらと渡しておいた教本を見るとたくさんの付箋やクエスチョンマークで賑やかなことになっている。
「魔導師の方の数が少ないわけが少しわかりましたわ……。基礎全てを理解し新しく作り出すことも可能となると一体どれだけの知識が必要かと思うと……」
「全てをすぐに理解せずとも構わないのです。基礎を理解すれば入口に立つことは出来ますからね。基礎だけの理解では確かに今まであるものを使うことしかできませんが使える、と使えないでは大きな差があるのです」
「私でも魔法は使える、ということですね?」
「えぇ、最近私が取ったばかりの弟子も今まで魔法が誰でも使えるとは知らなかったですが既に初級の魔法を使えるようになっていますよ。さて、理論を最初から詰め込んでも仕方がないですしまずは使ってみることから始めましょうか」
せっかくなので広い場所に、ということで王宮魔導師の人たちが使う訓練場の一画を借りることに。てくてくと並んで向かいつつ雑談。
「お弟子さん、にはちょっと申し訳ないですよね……ミルさんをお借りしてしまって」
「うーん、まぁ日中は信頼できる相手に預けていますし実はこの近場にずっといるのですよ。預けた相手が図書館勤務なので」
「まぁそうなんですか?年齢も近いと伺ってますし出来れば一緒に魔法の練習が出来ればいいですわね。同年代の友達は楽しみですわ」
しかし一緒に練習となるとメルナのほうががちがちになりそうな気がする。でも一人でやるよりは複数でやるほうがいいかもしれないと思いつつ訓練場に到着。
さーて、がんばりましょー!
最近魔法を使ってる場面が全然ない……!
次回はきっとバンバンと……使えたらいいなぁ……




