第25話 自分の加減って物をもう少し考えなさいよね
「あら、ミルじゃない。もう魔法の授業に入ったの?」
訓練場に付くと足音に気づいた人物が振り返って声を掛けてくる、って……
「あれ、リメイとメルナだ。二人も実践練習?」
「はい!イメージの為にも実際に見てみるほうが早いってことで場所を貸してもらえることになったんですよー。簡単な物はいいんですけどやっぱり大掛かりな物は広い場所じゃないとって言われてここをお借りしても良いと許可を頂いたんです!」
出来たばかりの薄紫のローブに身を包んで嬉しそうなメルナ。全体の色は薄紫のローブとキュロットにところどころアクセントで濃い紫の飾りや銀糸の刺繍が入っている。ふわふわした蜂蜜色の髪も今はローブと同じ色のリボンでまとめられている。
「なるほどねー。まぁちょうど良かった。こっちも今日から魔法の授業にと思ってたから一緒にやる?リメイも手伝ってくれるっしょ?」
「私は構わないけど……リシュネラ様はよろしいのですか?」
「大勢のほうが楽しそうですし私は大歓迎ですわ。どうぞリーシュと呼んでくださいね」
にこにことリーシュ様が頷くのを見てリメイも軽く頭を下げる。
「リシュ、ネラ様……?お、王女様!?わ、わわわっ!ミルさんどうしましょうどうすればいいんですっけ!?」
「うん、何となくメルナはそうなる気がしてたのよねー。とりあえず落ち着いて。ほら、三回回ってニャーって言うと落ち着けるわよ」
「さ、さんかいまわって、にゃ……」
「弟子で遊ぶんじゃないわよ、ミル!リーシュ様も笑ってないで止めて下さいよ!?」
「ふふふ……だってメルナさんがやったら可愛いだろうなぁってちょっと思ってしまったので」
パニックになるメルナをからかっているとリメイに怒られました。はいはーい、真面目に授業に入りましょうか~。
最初のパニックが過ぎてしまえば年齢も近い二人は仲良くなった様子。先に魔法を習い始めていたメルナが簡単な魔法を使って見せていたりと和やかな雰囲気。
「さてと、小さな魔法は今までも見てきたと思うので良しとして、ちょっと大きめの魔法を今日は実践してみまーす」
「そしてせっかく二人いるので演習的なものもやってみますわ。こちらは最後に少しだけ、となると思いますけど」
リメイと二人で手分けしてさまざまな属性の魔法を起動していく。
「じゃ、まずは水の派生ね。轟き流るる蒼き水。氷の息吹!」
ピシッ!パキパキ……
訓練場に設置した木製の的に向かって飛んだ氷の塊がぶつかり的そのものが凍っていく。こっそりと借りてきた魔力抑制の道具を増やしたのでそこそこ抑えられた威力になったのを確認。句を詠んで使うならこれくらい抑えないと城内にクレーターが出来てしまう。
「続いて火の派生を行きますわ。輝き燃える赤き炎、我が意に従い集いて爆ぜよ!炎の爆発!」
ドーーンッ!シュウゥゥゥ……
丁寧に分かりやすい句を唱えて炎の玉を投げつけ凍った的に当て、氷を粉砕する。あっという間に砕けた氷も蒸発して白い蒸気が上がる。
「わぁー、すごい蒸気です……」
「起動の後は何でもいい、というのは本当なんですねぇ。無くても教本の例と違っていても同じ魔法でしたわ」
仲良く授業や教本を思い出して雑談してる姿は微笑ましい。そんな流れでどんな言葉で精霊たちにイメージを伝えるか、や今までに聞いたことがある詠唱について少し話したり。
「はいはーい、じゃあ続いてさっきの氷の上位バージョンね。轟き流るる蒼き水。蒼き飛礫に打たれ凍れ!蒼き氷結!って、ああぁぁ~……」
五個前後の氷球を作る予定が詠んだ詠唱に反応して二桁を超える氷が発生して飛び交う。的を中心に当たり、それによってできた氷像を中心にどんどん周りにも被弾して凍りつく。
キキキキィンッ……
「ミルさーん、寒いですぅ~……」
「うん、ごめん、ちょっとやりすぎた……」
「あんた、自分の加減って物をもう少し考えなさいよね……」
ついうっかりリメイに合わせて丁寧に詠唱してみたら予想外の数の氷球が生まれて飛び交ってしまった。的の周囲に収まらず訓練場の半分ほどが氷で埋まる状況が出来上がり。
「ミルさんの魔力は桁違いなんですわね……。っくしゅん!」
「全く困った物ですわ……。輝き燃える赤き炎、我が意に従い凍てつく蒼を打ち消せ、燃え育つ蔦!」
ボウッ……シュルッ!シュワー……
若干こめかみに青筋を浮かべながら炎を操り氷を消し、ゆっくりとこちらを振り向く。
「い、いやーさすがリメイ。火を扱わせたら右に出る者は無いって感じよねー。コントロールもバッチリ!はは、ははは……」
お、怒ってますかー、怒ってますねー!?




