第23話 いい子ぶるつもりなの!?
図書館にメルナを迎えに行ってリメイも誘って夕食にする。ちゃちゃっとシチューを作りつつ買ってきたパンをメルナが切って並べている。
「そういえばリメイ、双子の姫たちの事って何か知ってる?クーアちょっと野菜洗うの手伝ってー」
「うーん、図書館にもあまり来られないから良く知らないのよね。元宮廷魔導師長が教師やってたやつでしょ?歴史の授業が終わって魔法の事になったら手伝ってもらうかもって話してはいたんだけど終わらなかったみたいだしねー。元、とはいえあのおじーさんも忙しいからしょうがないだろうけど。あ、レマこの鍋の火加減ちょっと見てて」
「最後まで教えられなかったことをだいぶ気にしてたからねぇ……おじーちゃんも。よろしく頼むって言われたわ」
「……魔霊って一応そのあたりに浮遊している精霊より上位な存在って習ったはずなのに料理の手伝いというか雑用に駆り出されてるって一体……」
魔霊たちに手伝ってもらいながら料理をしていたらパンを切って並べ終えたメルナにぼそっと突っ込まれていた。そんなことは気にしない!仲が良ければ意思を読み取ってくれるからお手伝いも簡単にしてくれるってこと。普段から仲良くしておくに越したことはない。意図を読み取ってもらうには触れ合いが多い子が一番なのだ。
「メルナも精霊や魔霊との意思疎通は暇なときこそやるように心がけたほうがいいわよ」
「そうですわね。結構便利ですからね。対価として彼らの糧になる魔力を分けてあげればいいですわ。集中して指示を出さなくても助けてもらえるようになるのは便利ですわよ」
「え、はい……。がんばります」
野菜を洗い終わってちょろちょろしている水の魔霊クーアと鍋をのぞいたりして楽しげにしているレマを見て不安そうにするメルナであった。
あ、料理はおいしかったです。
――翌日――
王女二人が待つ部屋に案内される。
「おはようございます。ミリュエル様、リシュエラ様。本日から授業に入りますが分からないことなどあれば都度仰って下さい。後に回すとどこがなぜ分からなかったか忘れてしまいますから」
「はい、よろしくお願いします」
「……。ほんとに貴方が教えるの?冗談だと思っていたわ」
「そうですか?ですがこの時間は教師として立ちますのでご容赦下さいね。そうそう、以前に教えて頂いていた方達にも話を伺ってきました。今までの続きということで基本の授業は進めたいと思います」
二人を促し席についてもらう。科目によって進度に相当の差があって主に姉のミリュエル様が興味を示したものはほとんど終了に近いほど進んでいる。壊滅的に遅れているのが歴史でそれが終わってからといっていた魔法に関する授業は全く手付かず。
「ダンスと教養に関しては王太子妃殿下からお墨付きを頂いています。特にダンスはミリュエル様を褒めていらっしゃいましたよ。何の心配もないとの事です」
「さすがはお姉様。本当にお姉様のダンスは優雅で美しいですから」
「ふふ、当然ですわ」
「ただ、歴史の授業がやや遅れ気味とのことですので今日からはそちらをメインに進めます。ある程度目処が付くようであれば魔法の授業も平行して開始しますね。何かご意見や質問がありますか?」
ガタン!
突然立ち上がるミリュエル様。
「いやですわ!勉強なんて楽しくないもの!ライルお兄様だけずるいわ!一人で街に遊びに行って……!勉強なんてしたい人がしたいだけすればいいのよ!」
「そうですか」
なんとなく予想はしていましたけどね~。根本的な勉強以前の部分からカリキュラムの見直しが必要になるような気がした。
いくつかやるべきことを考えている間にも王女はヒステリーを起こしている。
……学びたいと思ってもどれだけの人が思う存分、学ぶことが出来るか知っているのだろうか。
ヒステリー気味に叫んだ王女の言葉に幾人かの侍女はピクリと反応していた。
魔法にしても剣術にしてもその他の知識にしても存分に満足いくまで学ぼうと思えば相当な問題がある。
資金はもちろんのこと、学びたいことを教えてくれる師を探すことも、そのための時間を作ることも。
城で働く人たちの中にも学びたいことのために資金や師が必要となりそのために貯金をする人も多いのではないだろうか。
「ミリー……でも外は危ないわよ。ライルお兄様はちゃんと自分を護ることが出来るよう勉強されてるから許されているのよ」
おずおずとリシュネラ様が嗜めているがきっと今の彼女には効果はないだろう。
「なによ!リーシュだって本当は街を見に行きたいって言ってたじゃない!先生がいるときだけいい子ぶるつもりなの!?」
「そ、そういうわけじゃ……それに街を見に行きたいのは遊ぶためだけじゃ……」
「とにかく私は授業なんて受けないんだから!しかもこんなチビの子供を先生なんて認めないんだから!」
ぶっちーん。
「……わかりました。根本的にカリキュラムを変えることにしましょう。本日のミリュエル様の授業はこれで終了とします」
『え?』
「ミリュエル様とリシュエラ様はそれぞれに別の授業とさせて頂きます。学ぶことを拒否されている方に教えることなど何もありません」
学ぶことが出来る幸せや学ぶことの必要性を考えないミリュエル様にいつもリシュネラ様は合わせて授業をされていたのだろう。
始める前の彼女の眼にあったのは楽しみ。だが姉が騒ぎ始めてからは焦りや諦めがあった。
きっと今まで教師たちが来てもいつもまともに授業が受けられずにいたのではないだろうか?
「あ、あのでも私は……」
急な提案と授業の打ち切りに慌てるリシュネラ様ににっこりと微笑みかける。
「リシュネラ様は学びたいことがあると伺っております。リシュネラ様のお部屋で授業の続きと致しましょう。それではミリュエル様ご機嫌よう」
完璧な礼を返し、退室の際に部屋付きの侍女達に一つの指示を与える。『何を質問されてもミリュエル様に何も答えてはいけない』と。
学ぶことが出来ない、ということを体験してみればいいと思うのだ。
あれ、クーアは既に出ていると思っていた…
もしかして出てない…?
●登場人物?紹介●
●クーア
髪:紺色
目:水色
水の魔霊。人魚さんな姿。おっとりたれ目。風の魔霊ルフと仲が良い。ピッドが近づくとルフに撃退される。おっとりしているので本人は特に気にしていない。が、しつこすぎると水攻めに……




