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第15話 ちょっとしたおまけじゃないか

そんなに驚かなくても。驚いたまま固まっているメルナを置いて奥で作業をしている先生に声を掛ける。


「先生ー、入門書の教本余ってたら貰っていいですかー?」

「ん、その辺の本棚にあるだろ。この前ライが片付けしてたからすぐ分かるはずだが」


きっちり並べられた本棚を確認して必要な本を抜き出す。それにしてもすごいマメさだな、ライル……。

魔法の入門書を数冊と一般教養の本を選んでテーブルに積み上げてメルナを呼ぶ。


「さて、これから色々基礎の勉強からになるんだけど……。まずは魔法以外のところね。文字の読み書きと計算の基礎は分かる?」

「あ、はい。難しいものは無理ですけど共通語の読み書きと計算の基礎は村で教えてもらってました」

「おっけ~。文字が読めるなら魔法の勉強にすぐに入れるわね。とは言っても魔法関係は内容も特殊だし説明しながらにするわ」


選んだ本のうち文字の読み書き入門書や計算の入門書を棚に戻す。


「あのー、ミルさ……ミル先生?師匠……?」


ゴンッ!

予想外の呼びかけに思わず本棚に突っ込んでしまった。


「み、ミルでいいわ……今まで通り。何か勉強の事で希望とかある?あ、数日はここの寮に泊めてもらえるから宿泊は気にしなくていいわよ」

「あ、ありがとうございます。ちょっと気になったんですけど……さっき言ってた影響がどうとか決めたからとか言うのは……」

「あぁ……。そうねー。これから長い付き合いになるしちゃんと話しておかないとね」


勝手知ったる先生の研究室なので奥の棚からお茶のセットを出してきて淹れる。


「メルナは何となく、でいいから魔力を感じることは出来る?」

「魔力を感じる……ですか。えーっと何となく中にある良く分からない力みたいなこれですかね?」

「自分の中の魔力を感じることが出来たらそれと同じように他の人の魔力も感じ取ることが出来るはず。特に大きな魔力を持ってる人相手ならすぐ分かるはずだからそういう感覚も覚えて行くようにね」


と説明をしたところで魔力封じのブレスレットを外していつも意識して抑えている魔力を開放する。


「み、ミルさん……?今すごい圧力が……」

「今感じてるそれが魔力ね。ちょっとばかり私は普通の人より魔力が多くていつもは道具で抑えて尚且つ意識して抑えている状態なの」


魔力に中てられて顔色が悪くなりかけたのを見て魔力の開放をやめる。ちょっと苦笑してお茶を奨める。


「ごめんごめん、ちょっとやりすぎちゃった。とにかくこんな感じなんで魔導師連中とかの間では有名なのよ。でも見ての通りの年齢だし今まで師弟とか仕事の一部とかは結構断ってたのもあってね~……。もしかしたら、私の弟子となるとやっかみの対象になったり七光りとか言われたりで嫌な思いをさせちゃうことがあるかもしれない。だから、もしも私との師弟が嫌になったらすぐに言うこと。ちゃんと信用できる人を紹介するから」

「ミル、メルナ。出来たぞ。適当に加工したから好みがあれば変更できるがどうだ?」


シャラリ、と音を立てて卵型に加工されたプレートが下がったペンダントを受け取る。いやー、相変わらずいい趣味ですね。

滑らかな卵型のプレートに刻まれる虹色の魔方陣。華美にならない程度に周囲の縁取りがある。そして……


「先生ちょっとこの裏のはやりすぎじゃないでしょーか」

「いいじゃないか。かわいい生徒の初めての弟子なんだぞ。ちょっとしたおまけじゃないか」

「いや、ちょっとしたおまけで魔力強化の魔道具効果を追加なんてしませんから……」


プレートの裏側にあるのは淡い紫色で描かれる一対の翼。翼の真ん中には孔雀色をした小さな魔石が埋め込まれている。

緑色の石と翼が強化する属性は風。紫色で描くシンボルが強化する属性は闇。二つ以上の魔力を強化するような魔道具は作成が難しい。というわけでやりすぎじゃないか、ってことなんだけど……。


「わー、かわいいですねぇ」

「ほら、本人も気に入ったみたいだし」

「はぁ~……まぁいいんですけどね。じゃあメルナ、これが魔導師の弟子の証明になるから常に持っておくこと。この魔方陣が描かれているのが表側ね。裏面の


これはこのおっさんのちょっとしたお茶目なおまけってことで……」


おまけの意味が良く分からず首をかしげる小さな弟子に簡単にどういう効果があるかを説明する。予想外の効果が付いたことで価値がやたら跳ね上がっていることを聞いてフリーズするメルナ。まぁそうだよねぇ。普通に二属性の魔力強化をするモノなんて買ったらちょっとした一財産だし。


「こっここここ、これどうすればいいんですか!?」

「なんかニワトリみたいになってるわよ。肌身離さず持っておくこと、かな……。身分証明書としても使えるから無くさないようにね」


かくかくと頷き首から下げられたそれを握り締めるメルナ。後で魔力の測定だけはしたほうがいいかな……適正とかもあるし。と考えているとメルナの正面で薄紫の光が現れ魔霊が現れた。


「あれ?ノチェルだ。珍しいねー、まだ夜でもないのに出てくるなんて」

「メルナの適正が闇が高いんだろうな。俺の所も夕方くらいにたまに遊びに来るが……」

「えっ!嘘!?ノチェルねーさん私のところほとんど来てくれないじゃない!シャインも遊びたがってたのに!」


良く遊びに来る魔霊たちの中でも闇の魔霊ノチェルはお姉さんの性格らしく他の子たちも慕っている。気に入った子を気にかけるほうだけど見た目は切れ長な目のクールなお姉さん。

どうやらメルナの事が気に入ったようで遊びに来たようだった。レマたちから何か聞いたのかメルナの肩に陣取って手を伸ばし頭をなでなでしていた。

なんか和む風景だなぁ……



●登場人物?紹介●


●ノチェル

髪:薄紫色

目:青紫色

闇の魔霊。切れ長な目のクールなお姉さん。お気に入りの人には甘い。

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