第16話 だからやっぱりイチオシはこれね!
「さて、メルナの適正魔力が闇というのが分かったことだし。明日の午後にでもローブとか買わないとねー。色は適正的に紫になるかな」
「紫?色って何か決まりごとがあるんですか?」
魔力には六種類の属性があり、それぞれを現す色が決まっている。火が赤、水が青、風が緑、土が黄、光が白、闇が紫。
魔術師や魔導師はそれぞれ得意とする適正魔力に沿った物を使う傾向がある。自分の得意をひと目で分かるようにしているとも言う。それゆえに有名な魔導師に付く二つ名は色が入った物が多い。拳で語る赤紫の令嬢とかいたしね。ただの二つ名なら自由に名乗れるので人から勝手に付けられた物や本人が好きな物を名乗っていたりで無限にある。公式な認定によって付けられる称号はまた別にあり、そちらは勝手に名乗ることが出来ず称号自体に力がある。
「そのうちメルナにも付くんじゃないか?ミルが有名人だしその初めての公式な弟子だからなー。いっそもう作っておいて自分から名乗るか?」
「えっ!い、いや恥ずかしいので遠慮します……」
「薄紫……薄闇?いやここは色というかアメジストとかにするのも……」
「ミルさーーん!?やめてーー!?」
「花とかでライラックとかラベンダーとか瞳の色も合うし菫とか……」
「ダルディナーさんもやめて下さいぃぃー!?」
残念……。
学院の宿舎で夜を過ごして翌日。せっかくだからということで午前中は学院の授業風景をちらっと見学。
初級の教室ではまだまだ小さな子からメルナと同じくらいの子まで一緒になって授業を受けている。魔法の基礎、歴史、礼儀作法、教養などなど。学院はその後の進路や依頼を受けるにあたって必要になりそうな物の基礎はすべて授業に組み込まれている。詳しいものは上級のクラスになってからとなる。
校舎を一通り見てから実習棟に向かう。卒業生であれば申請すれば授業で使っていない時などに借りることができるので実験や訓練でよく卒業生も訪れる。今日は実際に魔法を使うことをやってみたかったので午前中の一時間を借りてみた。
「さてとー。じゃあまずは六つの属性それぞれの魔法を使ってみましょうか。起動句は覚えてきた?」
「は、はい。えっと、じゃあ火から行きますね……輝き燃ゆる赤き炎。熱く燃える灯火となれ。炎の小妖精!」
ほわん、と前に突き出した掌の上に拳サイズの火の玉が現れる。
「うん、上出来ね。イメージを変えたり供給する魔力を調整することで火のサイズは変えられるようになるから出来るだけ毎日トレーニングすること」
「わかりました。じゃあ次は水行きます~。轟き流るる蒼き水。喉を潤す清き水で満たせ。潤いの水!」
「はい、オッケー。あとは応用になるけど今作った水をそのまま維持しながら火も使うことでお湯を作ったりもできるわ。まぁ同時に使うのはそのうち魔法を使うことに慣れたらやっていきましょ」
「はーい。じゃあ残りも順番に行きますね。囁き渉る翠の風。舞い踊る風の刃。風の悪戯!」
ヒュンッ!ザシュザシュッザンッ!
「あー」
「あ、あれ……」
切り刻まれて崩れた木の人形を見て目が点になるメルナ。注意するの忘れてたー。
「昨日ダルディナー先生が加工した師弟の証明証あったでしょ?あれの効果で風と闇の魔法が強化されているのよ」
「強化……ってこんなに効果あるものなんですか!?いや、まぁちょっと忘れてましたケド……」
「風と闇に関しては籠める魔力を控えめにしても大丈夫と思う。んー……今の見る感じだと半分くらいでちゃんと予定の効果が出ると思うわ」
という説明をした上で残りの魔法も実践。イメージは初級に関しては教本のイラストや私が使った魔法を見てばっちりできている様子。起動句の暗記も問題なし。魔術師、くらいならすぐにでも名乗れるようになりそうで筋は良い。特に闇との相性が良いので今後に期待ってとこですかね。
午後からは街に買い物へ。やっぱり衣装選びはテンション上がるよね!ということでわくわくしながら二人で出掛ける。私は普段用のシンプルな黒の上下とマントに着替えて学院生も御用達「ベルベットの店」に向かう。
「フレアおねーさーーん。こんにちは~」
「あら、珍しいわね。ミルが来るなんて?ローブを作り直す気になったかしら?」
「遠慮します。私じゃなくて今日はこの子のを選びにですね~。魔力的には紫ですが淡い色のほうがいいかなーって思いますけどどうでしょう?」
そういって後ろにいたメルナを押し出すと興味はすぐにそっちに移ったようだった。断固自分の衣装作成は拒否する。派手派手は勘弁です!
「あらあら……ずいぶん綺麗な紫色。そうねぇ、"色"は紫紺と言っていいくらいしっかりした色だけど本人の雰囲気的にも淡い紫がおすすめね。所々に入れるアクセントを濃い目にするのがいいかしら……」
「あ、アクセントにするなら私の弟子なのでそっちの"色"を使ってもいいと思うんですけどどうでしょうね?」
「ミルの?まぁ……じゃあ飾りに使いたいものがあるのよね~。楽しみ~♪」
とりあえずこっちにいらっしゃい~というお姉様の後ろについて奥へ向かっているとこそこそとメルナが尋ねてくる。
「あの、ミルさん……?色がどうとかいうのは……普通魔力の色なんて見えないですよね?あるとかないとかくらいは感じ取れますけど……」
「ここが魔法を使う人たちの衣装の仕立てに人気なのはそれなのよね。フレアさんがちょっと特殊で魔法色が見える人だからそれを生かしたものを作ってくれるのよ。趣味もいいし腕は確かだから仕上がりが楽しみね~♪さー、奥いきましょ」
そしてついた奥は小さな応接セットが窓際にあるだけで壁一面に布やらリボンやら装飾品が。相変わらずすごい数……
フレアさんは先についてルンルンと楽しそうに使いそうな布をテーブルの上に積み上げている。紫って言っても幅広いのねぇ。でもこの山盛り状態でどうするんだろう……。
「さーてと。じゃあざっと見ておすすめはこんな感じなんだけど。一番大きく使う部分はやっぱり淡い色が良さそうねぇ。だからやっぱりイチオシはこれね!それで中のローブはこういう感じで下はズボンよりは可愛くひざ丈のキュロットがいいわよね!それから飾りはミルちゃんの色を使ってもいいってことだから白金のビーズとボタンを使って淵には濃い紫色のこの糸で刺繍を入れたいのよ!それから全体のシルエットは……」
その後、彼女の力説は二時間に渡って続いたのであった……




