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2. 神々の領域


「ようこそ、ルーカス殿。私の名はガブリエル、叡智の神。神々の領域へようこそ」彼は微笑みを浮かべながら私にそう言った。


予想していなかった返答に、私は一瞬呆然とした。ようやく我に返ると、うっかりこう尋ねてしまった。


「もしかして、例の噂の中二病というやつですか?」


「中二病? それは何だ?」彼は困惑した表情で私に尋ね返した。


「異世界の存在から特別な力を授かったと妄想する、あれのことです。確か『厨二病』と呼ばれていたはずです」


私のその言葉に再び衝撃を受けたのか、彼の瞼がぴくりと痙攣し、笑みがぎこちなく固まった。「ん? 何かまずいことでも言ったか?」と思っている間に、二人の間の空気が何とも気まずいものへと変わっていった……


「失礼、つい思ったことを口にしてしまいました」私は表情一つ変えずにそう言った。彼の言葉に驚いたのは事実で、少々失礼な返答をしてしまった。だが考えてみれば、死んだはずの私が自称『神』とやらに迎えられているというのも、それはそれで筋が通っている気がした……たぶん。


いずれにせよ、出会ったばかりの相手にひどく失礼な口を利いてしまった。謝ろうとしたその時、彼が不意に話し始めた。


「ああ、気にしないでくれ。君の状況はよく分かる。神も魔法も存在しない世界で生きてきたのだから、今の状況を理解するのは相当難しいだろう。それと、私を妄想癖のある者と一緒にしないでくれよ、傷つくじゃないか」


彼はいささか不満げにそう言った。それでも、今自分が置かれているこの状況を、私はまだ信じがたく思っていた。私は間違いなく死んだはずだ。しかし今もこの体のまま、傷一つなく無事でいる。何度考え直してみても、彼の言葉は馬鹿げているとはいえ、唯一筋の通る説明のように思えた。特に、地球では感じたことのない、あらゆる種類のエネルギーをしばらく前から感じ続けているのだから。


まるで私の考えを読み取ったかのように、目の前の男が答えた。「君は死んでいない。我々は召喚の儀式で君を地球から引き寄せた。つまり、君はまだ生きているということだ」


「どういうことですか?」私は困惑した口調で聞き返した。


「今の自分の状況について詳しく知りたいなら、ここは話すのに適した場所ではない。ついてきてくれ」


ガブリエルが手を横に払うと、黄金の門が自動的に開いた。彼はそのまま前へと歩き出し、私は静かにその後を追った。まだ聞きたいことは山ほどあったが、それは後回しにするしかなさそうだ。


門をくぐると、周囲に広がっていた何もない草原が消え去り、代わりに空に浮かぶ島々の光景が現れた。この光景はただただ驚異的で、まさにここが地球のどこにも存在しない場所であることを物語っていた。息をのむ、という言葉以外に表現のしようがなかった。私は畏敬の念を抱きながら周囲を見渡し、前を歩く彼に思わず尋ねた。


「すみませんが、島から島へはどうやって移動するのですか?」


「ああ、それか? 飛ぶ者もいれば、瞬間移動する者もいる。君は来たばかりだし、せっかくだから飛びながら案内してあげよう」


私は静かに頷いて応えた。今いる島の端に近づくと、ガブリエルの体がふわりと浮き上がり、私の体もそれに続いた。数秒間は妙な感覚だったが、すぐに慣れることができ、それからさらに数秒後には自在に体を操れるようになっていた。


「これは気よりもずっと扱いやすいな」私はそう思った。


背後でのこの上達ぶりを目にしたガブリエルは、呆気に取られたように口を大きく開けていた。


「ガブリエル殿、口を開けたままだと虫が入りますよ」私はそう言いながら、周囲の景色をさらに観察し続けた。


私の言葉を聞いて、彼はすぐにいつもの落ち着きを取り戻したが、その瞳にはまだ困惑の色が残っていた。


「君は本当に変わった人間だな。どうしてそんなに自在に操れる? この飛行魔法を発動させるためのマナは私を起点としている。つまり、それを制御するには相当な熟練が必要なはずだ」彼はまるで不可能な光景を目の当たりにしたかのように尋ねた。


私は一瞬戸惑った。「魔法? マナ? どうやら創作の中だけの力というのは、本当に存在するらしい。だが、そこまで驚くようなことだろうか。このマナという代物の原理は、気に比べればかなり分かりやすい。いわば簡略版のようなものだ。気の原理と循環法を土台にすれば、体内を巡った瞬間にその仕組みを理解できた」


「君は『気』というものを知っているのか?」


「気、ですか?」


「知らないのか? では『内力』はどうだ?」


「内力ですか……申し訳ありませんが、私は貴方がたの世界の知識のほとんどに触れることを許されていないのです。私にも、そして他の者にも同様に制限がかけられています。私が貴方の世界について知っていることといえば、『科学』と呼ばれるこの概念において、他の世界に比べて遥かに進んでいるということくらいです」


どうやら神々はこの種のエネルギーの存在を知らないらしい。「叡智の神にしては、随分と物足りないな」と私は心の中で思った。


「今、頭の中で私をディスったな。私がその気になれば、君の心を読むことだってできるんだぞ?」


「気のせいでしょう。それより、早く案内してください」


「なんと生意気な小僧だ、神である私をこき使うとは」ガブリエルは苦笑いを浮かべながら、心の中でそう思った。


「それにしても、本当に美しい場所ですね。どこを見渡しても、美しい景色ばかりだ」


「それはそうだろう。ここは我が主の手による作品なのだからな。我が主が創り出すものはすべて美しい、それは言うまでもないことだ」


「なるほど。差し支えなければ、その主というのはどなたですか? どちらの神なのでしょう?」ガブリエルがこれほど称賛するとは、一体どんな神なのかと興味が湧き、私はそう尋ねた。


「万物、だ」


「万物、ですか?」


「我が主は、存在するすべてのものを創り出した者だ。万物と言えば、それは文字通り『すべてのもの』を意味する。つまり、彼女こそが絶対なる存在なのだ」


その言葉に、私は目を見開いた。絶対なる存在だと? 驚きのあまり、言葉が見つからなかった。


「驚いたか? はっはっは、そうなると思っていたよ。何しろ、創造の神の話をしているのだからな」


この短い会話の後、私はしばしその神がどのような姿をしているのか、そしてどれほどの力を持っているのかについて考えを巡らせた。理由は分からないが、その瞬間、ある女性の姿が頭に浮かんだ。


「ガブリエル殿、貴方の主は女性なのですか?」


「敬称はいらない、ただガブリエルと呼んでくれ。我が主については、彼女は望むどんな姿にもなれる存在だ。性別や性そのものを超越した存在なのだよ。だが彼女は、女性の姿を取ることを好んでいる。それがどうかしたか?」


「いえ、何でもありません。少し気になっただけです。質問に付き合っていただき、ありがとうございます」


「他にも質問があれば、遠慮なく聞いてくれ」彼は親しみのこもった表情でそう答えた。


その後、私たちは沈黙のまま約6分ほど移動を続けた。ガブリエルが時折いくつかの場所を紹介してくれる中、私は周囲の景色を眺め続けた。そしてついに、中央に王国のようなものを擁する、途方もなく巨大な浮遊島へとたどり着いた。


「さあ、着いたぞ。ようこそ、楽園エデリアへ」


目の前に広がっていたのは、まさに天上の光景だった。この楽園の光景を目にしているだけで、心が安らぎ、まるでここでなら心置きなく警戒を解いてもよいのだと感じさせられる。神々が暮らす場所というのは、こういうものなのだろう。


しばらくして、私たちは島の中心にそびえる巨大な城の、これまた巨大な正面扉の前に降り立った。扉の両脇には二体の巨大な騎士像が立っており、一方は剣を、もう一方は大盾を構えていた。ガブリエルの到着を見て、二体の騎士像は巨大な扉を押し開いた。


ガブリエルは私の方を振り返り、前へ進むよう手で促した。


「行こう。神々が君の到着を待っている」


私は軽く頷き、共に中へと足を踏み入れた。背後で大きな音が響き、扉が閉ざされたのが分かった。


外の光景と同様に、この城の内部もまた、地球では感じることのできない神聖さと荘厳さに満ちていた。あらゆる種類の豪奢な建造物を見てきたはずの私でさえ、その規模と壮麗さには息を呑まざるを得なかった。さらに8分ほど歩き、大広間らしき場所の扉にたどり着いた。扉の外には、銀の騎士甲冑をまとった4人の衛兵が控えており、ガブリエルの姿を見るなり片膝をつき、剣を地に突き立てて広間の扉を開いた。


そして私の目に映ったのは、広大な広間の中で何らかの宴を催している、およそ千柱もの神々の姿だった。誰もが優雅な衣装や法衣に身を包み、荘厳なオーラを漂わせている。私は思わず一瞬息を深く吸い込んだが、すぐに平静を取り戻した。


先ほどの4人の衛兵の一人が、ゆっくりと私たちの前に進み出て、広間全体を包み込むような朗々とした声で叫んだ。


「叡智の神、ご到着!」

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