第9話 アルダの裁定
※本作は第70話で完結予定です。
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アルダからの返答は翌朝来た。
「報告書を受理した。本件の難易度変更要求については、規定第四条に照らし、収益目標に悪影響を及ぼすため却下とする。管理員の判断は適切と認める」
霧島さんが「……本当に通ったの?」と言った。
「通りました」
「え、アルダさんが飯塚さんの要求を却下するの? 自分で裁定を出すの?」
「規定上そういう仕組みのようです」
「でも前任者のときはそんな仕組み、全然使われてなかった」
「知らなかったからだと思います」
宮代が「これって……神崎さんが報告書を出したから、アルダさんが判断したってことですよね。すごくないですか?」と言った。
「動くべき仕組みが動いただけです」と俺は言った。
翌日、飯塚が管理局に飛び込んできた。
「なんで却下されてんだよ!」
霧島さんが席を立ちかけたが、俺は手で止めた。
「難易度を下げるとシステムの収益目標を達成できません。報告書の通りです」
「報告書?」
「送信しました。それをもとにアルダさんが裁定を出しました」
飯塚の顔が変わった。「……お前が申請したのか?」
「はい。管理員として収益影響の試算を提出しました。正当な手続きです」
「……管理局がこんな動き方をするとは思わなかった」と飯塚が言った。怒りが困惑に変わっていた。
「どういう意味ですか?」
「前任者は言われた通りにしてたって印象だったから」
「俺は違います」
飯塚がしばらく俺を見た。難しい顔をしていた。それから何も言わずに去った。
「飯塚さんが言葉に詰まるの、初めて見た」と宮代がつぶやいた。「あの人、ギルドでもそういうこと少ないって言われてるのに」
霧島さんが「神崎くん……なんか、違う人なのかもしれない」と言った。
「普通のことをやっているだけです」と俺は答えた。
アルダの返答文書をもう一度読んでいると、末尾に一行あった。
〔詳細については管理権限マニュアルB(別途送付済)を参照のこと〕
「送付済み?」と俺は言った。
「何ですか?」と宮代が訊いた。
「管理権限マニュアルBという文書が送付されていると書いてある。いつ届いたんだろう」
管理画面の受信ファイルフォルダを開いた。
ファイルが大量にあった。
「マニュアルB.pdf」というファイルが年度別に並んでいた。最も古いのは十年以上前。全部、未開封だった。
「十年分……」と霧島さんが言った。「ずっと送られてきてたのに、誰も開けてなかったのか」
「読みます」と俺は言った。
「全部ですか?」
「まず最新版から」
ファイルを開いた。管理権限の詳細マニュアル。目次を確認した。
俺は付箋を取り出した。




