第10話 最初の逆転
※本作は第70話で完結予定です。
※毎日5話ずつ、07:00 / 12:00 / 18:00 / 21:00 / 23:00 に投稿予定です。
※もし続きが気になったら、評価で応援いただけると励みになります。
飯塚が帰った翌日、もう一度来た。
今度は一人じゃなかった。同じギルドの攻略者が二人ついていた。飯塚は管理局のドアを開けて、俺を見て、少し止まった。
「もう一回話したい」と飯塚が言った。
「どうぞ」
「難易度の件だ。規定で決まってるなら仕方ない。でも」
飯塚が腕を組んだ。
「別の方法はあるか。難易度を下げずに、Cランクの連中でも稼げるようにする方法」
俺は少し考えた。
「Cランク対応エリアを新設する方法があります。ダンジョンのフロア構成を変えて、低難度エリアと高難度エリアを分ける。収益は落とさず、育成利用も可能になります」
「そんなことができるのか?」
「管理権限の範囲内なら可能か確認します」
飯塚の顔から「お前は管理人ごとき」という空気が少し抜けていた。まだ残っていたが、最初より薄かった。
「……考えておいてくれ」と言って、今度は静かに帰った。
宮代が「飯塚さん、態度が変わりましたよ」と言った。
「少し変わりましたね」と俺は答えた。
「昨日と全然違う。観察眼スキルで見ると、怒りの感じがなくて、様子を見てる感じでした」
「それでいいと思います」
その日の夜、マニュアルBの読破を続けた。
十年分の累積版。内容は年々追加されていたらしく、機能の数が増えていた。
機能をカテゴリ別に書き出した。
「収益管理系」:収益レポート閲覧、マナ流量制御、収支調整。「構造変更系」:モンスター配置変更、難易度調整、地形構成変更。「管理運営系」:経費申請、担当ダンジョン追加申請、上位存在への報告書提出。「緊急機能系」:緊急停止権。
緊急停止権の項目を読み返した。〔管理員は安全確認その他の管理上の理由により、担当ダンジョンを最長七十二時間停止することができる。実施には理由書の提出を要し、記録は永続保存される〕。
「これ全部使えるの?」と霧島さんが言った。翌朝、俺のノートを見ていた。
「管理権限内のものは使えるはずです」
「緊急停止権って……ダンジョンを止められるってこと?」
「七十二時間まで」
「それ……すごくないですか? でも記録が残るって書いてある」
「はい。使うなら覚悟が必要な機能です」
宮代が「担当ダンジョン追加申請って、今のダンジョン以外も管理できるってことですか?」と訊いた。
「申請次第では」
「じゃあ増やせるってことですね。管理する範囲を」
「将来的には可能かもしれません」
「……神崎さん、私、観察眼スキルがあるので実地でダンジョンを見ればわかることも多いと思います。役に立てると思う」と宮代が言った。
「そうしてください。現地確認は重要です」
霧島さんが「私、ずっとここで働いてたのに、こんなの知らなかった」と言った。声に複雑なものがあった。
「前任者が読まなかっただけです」と俺は言った。「霧島さんのせいではありません」
「……そうかな」
「そうです」
最初の経費申請書を完成させた。高性能管理端末の購入申請。今の端末は処理が遅く、データ分析に時間がかかりすぎていた。理由欄に「管理データの処理速度向上により収益計算の精度が上がる」と書いた。
送信ボタンの前で一秒止まった。
アルダがどう出るか。
送信した。




