第68話 帰還と余波
目の前に管理局の天井があった。
管理端末の画面に「接続終了」という表示があった。
三人が立っていた。霧島さん、宮代、飯塚。
俺は少しの間、三人の顔を見た。
「……成立しました」
霧島さんが椅子に崩れ落ちた。力が抜けたように。
「……よかった」と霧島さんが言った。
宮代が「やったー!」と声を上げた。素直な声だった。
「飯塚さんは?」と俺は飯塚を見た。
「……そうか」と飯塚が言った。しばらく黙った。「よくやった」
「ありがとうございます」
「お前、すごいことしたんだぞ」と飯塚が言った。「……まあ、な」と続けた。自分でも信じられないような声だった。
「霧島さん」と俺は言った。「大丈夫ですか?」
「……私、泣いていいですか」と霧島さんが言った。苦笑いしながら。「もう力が入らない」
「いいですよ」
「……本当に成立したんですか?」と宮代が訊いた。「手数料七十五パーセント? 全国の管理権? 民営化法案も?」
「全部です。合意文書も保存してあります」
「……すごい」と宮代が言った。「神崎さん、本当にすごい」
「準備した通りにやっただけです」
「準備した通りにやれる人が一番すごいんです」と宮代が言った。
管理端末にアルダからの通信が届いた。
「神崎さん。合意確認の通知が届いています」とアルダが言った。「……お疲れ様でした」
「珍しい言葉ですね」と俺は言った。
「……珍しい結果になったので」とアルダが言った。声が普段より穏やかだった。「神崎さん。私は……あなたの担当者で良かったと思っています」
「そうですか。こちらこそ」
「……引き続きよろしくお願いします」と俺は返信した。
飯塚が「俺、戻る」と立ち上がった。「竜牙ギルドの奴らに、白瀬副会長の法案の話を聞かせてもらわないといけない」
「よろしくお願いします」
「……あんたの話、いつかみんなに言えるようになったら言う」と飯塚が言った。「今はまだ言えないけど」
「それで十分です」
飯塚が出ていった。
「今夜はもう帰りましょう」と霧島さんが言った。「続きは明日から始まります」
「そうですね」と俺は言った。
管理端末を閉じた。




