第64話 条件提案
「提案内容です」と俺は言った。
「手数料を現在の八十パーセントから七十五パーセントに変更する。代わりに、日本国内全ダンジョンの管理権を私が引き受ける」
場が静かになった。
「七十五パーセントでも」と俺は続けた。「人間が使うマナの量より圧倒的に多いマナが上位存在に渡ります。着任当初に収益レポートでマナの流量を確認した時に計算した数値と同じです。七十五パーセントの手数料でも、上位存在の取り分は人間の消費量の数十倍になります」
「しかし八十より低い」とゼクスが言った。
「管理の質向上で収益総量が増加すれば、七十五パーセントでも現在の八十パーセントより多いマナが得られます」と俺は言った。「私の担当区域では既に証明されています。前担当時代比で三倍超の収益。手数料率は変わっていません。収益総量が増えれば、比率が少し下がっても絶対量は増える」
「……それは理論だ」とゼクスが言った。
「試算があります」と俺は言った。「全国のダンジョンに同等の管理最適化を行った場合の収益増加シミュレーションです」
データを提示した。収益の変化。手数料率七十五パーセントと収益増加を組み合わせた試算。現在の収益との比較。
「もう一点」と俺は言った。「民営化法案を撤回するよう、上位存在側から影響力を行使してほしい。これにより私の管理体制が継続される。管理体制が継続されれば、この試算の実現可能性が維持される」
「……」とゼクスが言った。「手数料を下げることは——前例がない」
「規定上、管理者は担当業務の条件について提案できます」と俺は言った。「アルダさんからいつも"規定上の問題があれば"という確認がありました。規定上の問題はありません。この提案は合法的な権限行使です」
ヴァルドが長い沈黙の後に口を開いた。
「……この提案は、本社全体の議決が必要だ」とヴァルドが言った。「今ここで答えは出せない」
「それは想定していました」と俺は言った。「ただ、この場で方向性として受け入れ可能かどうかを確認させてください。数字の反証があれば今ここで提示してください。反証がなければ、方向性として検討に入る根拠があります」
ゼクスが「受け入れられない」と言った。「これは人間側の要求でしかない」
「数字に対する反証はありますか?」と俺は訊いた。
「……」とゼクスが黙った。




