第63話 民営化の損失試算
「では民営化法案についての試算を確認させてください」と俺は言った。
別の資料を提示した。
「現在、ダンジョン収益の八十パーセントが上位存在に渡ります。民営化法案が成立した場合——ギルドが管理を担当することで、手数料の一部がギルドのマージンとして流れます。試算では保守的に見積もって十二パーセント、最悪ケースで二十五パーセントの収益減少が見込まれます」
「その試算は君が作ったものだろう」とゼクスが言った。「根拠の信頼性がない」
「この試算を作成したデータソースをお見せします」と俺は言った。「御社の収益レポートです」
管理画面から引き出したデータを提示した。
ゼクスが止まった。
「私は管理者として、このデータを合法的に閲覧する権限があります」と俺は言った。「管理権限の範囲内で収益レポートにアクセスし、計算しました。数字の正確性は、御社の内部データが証明しています」
沈黙があった。
「……」とゼクスが何かを言いかけて、止まった。
別の代表が「計算を確認したい」と言った。穏やかな声の人物だった。
「どうぞ」と俺は言って、計算式を展開した。前提条件、数値の引用元、計算過程。一つひとつを示した。
確認する沈黙が続いた。
「さらに」と俺は言った。「管理クオリティの低下による収益減少の試算も含まれています。民営化後、管理スキルを持たないギルドが担当した場合——緊急停止権のような管理機能が使えなくなります。ダンジョンの稼働安定性が下がれば、収益はさらに減少します」
「……」とヴァルドが言った。「この三日間の停止は、そのための実例でもあったのか」
「そうです。管理権限なしに再起動できないという事実を記録に残しました」
「抜け目がないな」とヴァルドが言った。苦笑いしながら。「内部データを根拠に使ってくるとは」
「合法的な手続きで得たデータです」
「規定上の問題はない」とヴァルドが言った。「それはわかっている」
ゼクスがまだ黙っていた。
「ではこの問題を解決する提案をさせてください」と俺は言った。
場が、変わった。




