第61話 交渉の場
会議室の空気は重かった。
机が中央にあった。一方の側に椅子が一つ。対面に五つ。俺は一つの側に座った。五人が向かいに座った。
ヴァルドが真ん中にいた。その右隣に、明らかに表情が硬い上位存在がいた。左側の二人は穏やかな顔をしていた。一番端は中立的な表情。
「こちらが本社の交渉窓口担当です」とヴァルドが言った。「神崎凌、よく来た」
「はじめまして」と俺は五人に向かって言った。
「……本社で人間の管理員と交渉の場を持つのは初めてだ」とヴァルドが続けた。「進行は、君が望む形で」
「わかりました」と俺は言った。
「ご紹介します」とヴァルドが言った。「隣のゼクスは、今回の交渉に懸念を持っている代表です。他は、聞く立場で来ています」
ゼクスが俺を見た。冷たい目だった。「この人間に何ができる」という感情が見えた。
「では始めましょうか」と俺は言った。
場の空気が変わった。
ヴァルドが少し目を細めた。「進めてください」。
「ありがとうございます」と俺は言った。「三つのフェーズで話します。第一に現状の確認。第二に民営化法案の影響試算。第三に条件提案です。質問があれば随時どうぞ」
「……ずいぶん準備している」とゼクスが言った。
「準備してきました」と俺は言った。
「人間の下請け管理員が本社に条件交渉に来るとは」とゼクスが言った。「滑稽だとは思わないか?」
「思いません」と俺は言った。「双方にとって利益になる提案を持ってきたので、場として成立すると判断しています」
「利益になる、と君が思っているだけだ」
「そのために数字を用意しました。数字が証明します」
ゼクスが黙った。
「では始めます」と俺は言った。




