第6話 初めての現場
※本作は第70話で完結予定です。
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宮代誠のスキルは「観察眼強化」だった。
「細かいものが見えるようになるスキルです」と宮代は説明した。「攻略向けじゃないと言われたんですが、なんか役に立つかと思って。管理局なら使えるかもと思って来ました」
「なぜ管理局だと思ったんですか」と霧島さんが訊いた。
「……なんとなくです」
なんとなくで就職先を決めるというのは、よくわからない判断だったが、俺はそれを口にしなかった。
宮代は霧島さんに職場の案内をしてもらっている間、机の上の俺のノートをちらちら見ていた。
「神崎さん、それ何ですか?」
「管理システムの機能リストです。申請予定の経費も書いてあります」
「経費?」
「管理員には経費を申請できる権限があります。規定書に書いてあった」
「経費を……申請するんですか。管理局って、そういうことができるんですね」
「できます。アルダさんという上位存在の担当者が、規定の範囲内の申請は承認しなければならない」
宮代が目を丸くした。「え……じゃあここって、もしかしてすごいところなんですか?」
「可能性はあります」
「私もよくわからないまま働いてます」と霧島さんが言った。「でも、ここ最近で一番動きがある気がしてる」
三人でダンジョンへの現地巡回に行くことにした。
「現地巡回なんて行ったことなかった」と霧島さんが呟いた。「前任者は行かなかったから」
「現地確認は管理業務に含まれます。経費申請も可能です」と俺は言った。「行きましょう」
第十七Aダンジョンは、管理局から徒歩十五分の場所にあった。地下に続く大きな入口に、攻略者たちが列を作っていた。重武装した人間や魔法の光を纏った人間が多い中、俺たちスーツ姿の三人組はずいぶん浮いていた。
管理画面を端末で開きながら、ダンジョン内の構造データと実際の状況を照合した。モンスターの配置座標がデータと一致しているか、通路の状態はどうか。
「神崎さん、左のエリア、データより少しモンスターが多いですよ」と宮代が言った。「観察眼スキルで見ると、三体のはずが五体います」
「メモします。データに反映します」
「あの……本当に端末でダンジョンの中が見えるんですか?」
「一部は見えます。センサーが埋まっているようです」
「すごい」と宮代が言った。「管理局って、こういうことができる場所だったんですね」
霧島さんが「私、十年ここで働いていて、こんなこと初めてしてる」と小声で言った。
帰りの道、俺は経費申請のリストを確認した。まず管理用の高性能端末。次に業務学習資料。現地視察費用も加える。
申請が規定の範囲内であれば、承認しなければならない。
アルダが承認を拒否できないなら、これは使えるツールだ。合法的に、規定の範囲内で動ける。
そこまで考えたとき、ダンジョン入口の方から声がした。
「あー、管理局の人? ご苦労さん」
振り返ると、重い剣を背負った若い男が立っていた。ランクB相当の攻略者装備。竜牙ギルドのエンブレムがついていた。
「で、俺の要望はいつ対応してくれる?」
傲慢な声だった。俺を見ているようで、俺を見ていないような目だった。




