第56話 なぜ使いこなせるのか
二回目の接続はヴァルドの提案だった。
「交渉前に、確認したいことがある」とヴァルドが言った。「君は、なぜ管理スキルを使いこなせるのか」
「どういう意味ですか?」
「マニュアルBは十年以上前から管理員に送付していた」とヴァルドが言った。「しかしそれを最初に使いこなした管理員が君だ。なぜか、ずっと気になっていた」
「答えてもいいですか?」
「聞かせてほしい」
「ゲームの管理コンソールと同じ構造でした」と俺は言った。
ヴァルドが止まった。
「……ゲーム?」
「はい。コンピューターゲームが好きで、昔からゲームのシステムを解析するのが趣味でした。管理画面を初めて開いた時、見覚えのある構造に見えた。パラメータの変更、フラグ管理、トリガー設定——全部、ゲームの管理コンソールで見てきたものと似ていた」
ヴァルドが長い間を置いた。
「……ゲーム」とヴァルドがもう一度言った。「そうか」
「設計側には意外でしたか?」
「意外どころではない」とヴァルドが言った。少し苦い顔で。「私たちは人間が最大限のマナを使う環境を作ることに特化していた。娯楽のひとつとして"ゲーム"という文化も生まれたが……まさかそれが管理システムの解析に使われるとは想定していなかった」
「盲点だったんですね」
「……そうだ」とヴァルドが言った。「上位存在の設計に、人間の娯楽文化が盲点として存在していた。それが"前例がない管理員"を生んだ、か」
俺は黙って聞いた。
「神崎凌」とヴァルドが言った。「君は管理スキルを"ゲームのように"使いこなした。設計側として言えるのは——その発想を、我々は防ぎようがなかった」
「防ぐ気はあったんですか?」
「……なかった。想定していなかったから」とヴァルドが言った。「それが正直な答えだ」
「ではその盲点は、交渉でも有効ですか?」と俺は訊いた。
ヴァルドが少し笑った。
「相変わらず直接的だな」とヴァルドが言った。「聞こう。それで——民営化法案についての本社の見解を、改めて聞かせてほしい。前回は途中だった」
「そうです。聞かせてください」
「内部では賛否両論だ」とヴァルドが言った。「ただ……君の試算書は相当インパクトがあった」




