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上位存在の下請けを押し付けられたら、世界一マナが集まるポジションだった  作者: ヲワ・おわり


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第53話 設計層という概念

「なぜその質問を……」とヴァルドが言った。


「非公開版の管理マニュアルを読みました」と俺は言った。「合法的な経費申請で入手した資料です」


 ヴァルドが長い間を置いた。


「……そうか」とヴァルドが言った。「では話そう」


「管理者スキルは」とヴァルドが続けた。「ダンジョンシステムの設計層に直接アクセスできる権限を持つ。これが管理スキルの本質だ」


「設計層、というのは?」


「通常の攻略者や魔法使いは"ユーザー層"にいる。彼らはシステムが用意したルールの中でのみ行動できる」とヴァルドが言った。「しかし管理者は"設計層"にいる。システムのパラメータを変更できる。それが緊急停止権の本質であり、モンスター配置の調整の本質でもある」


「なるほど」と俺は言った。頭の中で繋がっていくものがあった。


「設計層には当然、制限がある」とヴァルドが続けた。「私たちが設定したロックは、現在の管理者権限では外せない。ダンジョンの基本構造を変えることはできない。マナの搾取率を直接変更することもできない」


「では」と俺は言った。


「では?」とヴァルドが繰り返した。


「そのロックの変更は、交渉できますか?」


 ヴァルドが止まった。


 一拍、二拍。


「……この管理員は」とヴァルドが言った。独り言のように。


「交渉できますか?」と俺はもう一度訊いた。


「設計層にアクセスできる者が交渉を求めてくる——というのは、想定したことがなかった」とヴァルドが言った。「原則として、管理者権限は私たちが与えたものだ。それを返上してロック解除を求める交渉、ということか」


「そうです」


「何のロックを外したいと思っている?」


「まず、手数料率です。現在は収益の八十パーセントが上位存在へ渡る。この比率について、話し合いたいと思っています」


 ヴァルドがしばらく俺を見た。


「……君は本当に面白い」とヴァルドが言った。笑っていない。真剣な顔だった。「ただし、交渉の場を設けるかどうかは本社の決定が必要だ。私一人では判断できない」


「わかりました」


「本社に持ち帰る」とヴァルドが言った。「返答は一週間以内に出す」


「了解しました」


「……一つだけ聞いていいか?」とヴァルドが言った。


「はい」


「なぜ君は、怒っていないんだ?」とヴァルドが訊いた。「人間がマナ生産のために設計されたと知って、怒らないのか?」


「怒っていないとは言っていません」と俺は言った。


「……そうか」とヴァルドが言った。「接続を終了しよう。また連絡する」


 白が、戻ってきた。



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