第46話 白瀬との直接対峙
「行きます」と俺は言った。
霧島さんが「一人で? 私も一緒に行きます」と言った。
「来なくていいです。ここで対応の準備をしていてください」
「でも——」
「規定の問題はない。対応できます」
竜牙ギルド本部の会議室に通された。大きな机。窓から夜の街が見えた。白瀬が上座に座っていた。笑顔ではなかった。
「神崎さん」と白瀬が言った。「座ってください」
「失礼します」
「あの三日間の停止で、うちのギルドに相当な損失が出ました」と白瀬が言った。「管理局の判断でそんなことをしていいはずがない。謝罪と補償を求めます」
「規定第九条の緊急停止権の行使です」と俺は言った。「事前に安全確認の理由書を提出しています。申請手続きは規定に従っています」
「規定?」と白瀬が言った。「規定があれば何でもやっていいんですか?」
「規定の範囲内であれば、管理員の判断として認められています」
「損失はどう説明するんですか?」
「管理の安全確認に伴う一時的な稼働停止は、規定上想定されているリスクです。この点についてはダンジョン庁の運営基準にも記載があります」
白瀬の笑顔が完全に消えていた。
「神崎さん」と白瀬が言った。今度は声のトーンが変わった。「あなたは何をしたいんですか?」
「管理業務を規定通りに行いたいと思っています。それだけです」
「……それだけ、とは言えない状況でしょう」と白瀬が言った。「試算書を上位存在に送った。緊急停止を実行した。民営化法案に対して動いている。これは"規定通り"の話ではないでしょう」
「全て規定の範囲内の行動です」
「ダンジョン庁に申し立てを行います」と白瀬が言った。
「ご自由にどうぞ」と俺は言った。
白瀬が俺を見た。しばらく、何も言わなかった。
「……神崎さん」と白瀬が言った。声が少し低くなった。「あなたは、怖くないんですか。竜牙ギルドを相手にして」
「規定の範囲内で動いています。怖い理由がわかりません」
「……そうか」と白瀬が言った。「わかりました。今日はここまでにしましょう」
立ち上がって会議室を出た。廊下に出ると、少し離れた場所に飯塚が立っていた。目が合った。飯塚が何かを言いたそうな顔をしたが、何も言わなかった。
管理局に戻ると、宮代が「飯塚さんが来てます」と言った。「神崎さんのことを心配して。白瀬副会長に呼ばれたと聞いて」
「白瀬との場所で会いましたね」
「……一人で乗り込んだのかって顔してました」と宮代が言った。「観察眼で見てたら」
飯塚が廊下に立っていた。
「……どうだった?」と飯塚が言った。
「規定の問題はありませんでした」
「あんたが謝らないのはわかってた」と飯塚が言った。「でも……大丈夫か?」
「大丈夫です」と俺は言った。「ありがとうございます」




