第44話 緊急停止
管理画面に「停止完了。記録保存済み」という表示が出た。
霧島さんが「……動かなくなった」と言った。
「七十二時間の停止です。三ダンジョン全部」
「全部?」
「全部」
霧島さんが深呼吸した。「わかりました。電話の対応、やります」
数分後、管理局の電話が鳴り始めた。
「ダンジョン庁から問い合わせが入っています」と霧島さんが言いながら受話器を取った。「はい、第十七支部管理局です——はい、緊急停止は規定第九条に基づく安全確認のためです。規定上の手続きに従っています——はい、七十二時間で再稼働します——ご不便をおかけします」
電話が終わる前に、別の電話が鳴った。
宮代が「第十七-Aの前、見てきます」と外に出た。
管理端末にアルダからの緊急通信が入った。
「神崎さん、これは……」とアルダが言った。
「規定第九条の緊急停止権を行使しました。理由は管理上の安全確認です」
「……規定上は、問題ありません」とアルダが言った。「しかし、なぜこのタイミングで?」
「安全確認が必要と判断したためです」
間があった。
「……わかりました」とアルダが言った。「記録は残ります」
「記録を残すことが目的のひとつです」
また間があった。
「……そうですか」とアルダが言った。それだけで通信が切れた。
宮代が戻ってきた。
「すごいことになってます」と宮代が言った。「ダンジョンの前に攻略者が五十人くらい集まって、"ダンジョンが閉まってる"ってざわついてます。ギルドの人たちが"障害か? 管理側の問題か?"って話してました」
「記録しましたか?」
「はい。観察眼スキルで人数と反応を全部メモしました」
「続けてください。三日間分、全部記録します」
霧島さんが電話を終えながら「ギルド各社から連絡が来てます」と言った。「内容はほぼ同じ。"システム障害ですか?""いつ再開しますか?"です」
「規定通りに対応してください」
「はい」と霧島さんが言った。落ち着いて次の電話を取った。「はい、第十七支部管理局です——」
竜牙ギルド。別の複数のギルド。問い合わせが続いた。霧島さんは全員に同じ対応をした。「安全確認のための緊急停止です。規定上の手続きです」。
三日間続く。
この間、ギルドが「では代わりに管理する」と申し出たとしても——管理スキルなしには再起動できない。それが事実として記録されていく。
飯塚から短いメッセージが入った。「来たな。三日間だな」。
「そうです」と返信した。
管理画面を確認した。三ダンジョン全て停止中。記録保存済み。
あとは七十二時間、このまま待つ。




