第35話 飯塚の疑問
宮代の報告を踏まえて、試算を続けた。
飯塚の言葉——「ギルドが管理するようになれば、手続きが増える」「攻略者に良いとは限らない」——は攻略者視点のデータとして使える。俺が出している上位存在への影響試算とは別の角度だが、「民営化が誰の得にもならない」という結論を補強できる。
「攻略者の声って、どのくらい影響力がありますか?」と霧島さんが訊いた。
「法案の審議段階では、現場の声は一定の重さを持ちます」と俺は言った。「特に竜牙ギルドが支援している法案であれば、攻略者側の反対が割れていることは意味がある」
「飯塚さんが公式に反対するってことはないですよね」と宮代が言った。
「今の段階では難しいと思います。でも反対意見があるという事実だけでも、使えます」
俺は試算に戻った。ギルドの手数料率を複数のシナリオで設定する。公開情報から得た一般的なギルドの管理費率。それを現在の収益データに掛け合わせる。
計算を続けた。
保守的な推計では——。
「神崎さん」と霧島さんが言った。「対照表、できました。条文ごとに影響範囲を整理してあります」
「ありがとうございます」
俺は表を受け取った。見やすかった。どの条文が収益に関係し、どれが権限に関係し、どれが契約に関係するか、色分けして整理されていた。
「霧島さんの書類整理は本当に使いやすい」
「……ありがとうございます」と霧島さんが少し照れた顔をした。
「試算の計算、もう少しで出ます」と俺は言った。「保守的に見積もって——上位存在への収益影響は、約十五パーセントの減少になります」
霧島さんが「十五パーセント」と繰り返した。「それって、アルダさんにとって大きい数字ですか?」
「ノルマがある担当者にとっては、大きい数字です。誤送信文書でQ2コスト削減が指示されていたことを考えれば——逆に十五パーセント以上の損失が見込まれる法案は、阻止する理由になります」
「……数字って、強いですね」と霧島さんが言った。
「動く理由を作るのが、一番強い武器です」




