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上位存在の下請けを押し付けられたら、世界一マナが集まるポジションだった  作者: ヲワ・おわり


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第30話 霧島の言葉

 三ダンジョン分の月次レポートを仕上げるのに、丸一日かかった。


 第十七-A攻略型。第十七-B採掘型。第十七-C防衛型。それぞれ構造が違う。書類の書き方も違う。でも三人で手分けすれば、形になる。


「最後のページ、確認お願いします」と霧島さんが俺に書類を渡してきた。


 俺は数字を確認した。間違いはなかった。


「問題ありません」


「よし」と霧島さんが言った。それから少し間を置いた。


「……ねえ、神崎くん」


「はい」


「私、十年ここで働いてたんだけど」と霧島さんが言った。「こんなに達成感があるの、初めてです」


 宮代が作業の手を止めた。


「正直に言うと」と霧島さんが続けた。「スキルが事務処理強化で、ここに押し込まれたって思ってた。攻略者みたいに目立てないし、スキルも地味だし。でも最近……ここで良かったかもって」


「霧島さんの書類能力は、俺には代替できません」と俺は言った。


「え?」


「チームとして機能しているのは、三人の役割が分担されているからです。俺が分析して、宮代さんが現地を確認して、霧島さんが書類と記録を管理する。どれか欠けても成立しない」


 霧島さんがしばらく黙っていた。


「……そういうふうに考えてたんですか」


「そうです。最初から」


「神崎くんって、そういうことを言ってくれるんですね。あまり喋らない印象だったから」


「必要なことは言います」


「……ありがとうございます」と霧島さんが言った。声が少し変わった。


 宮代が「僕も観察眼スキルがやっと役立ててる感じがします」と言った。「攻略者のサポートとかじゃなくて、本当に使えてる感じ。ダンジョン内の確認とか、人の動きを見る時とか」


「そうです」


「地味スキル同士なんですよね、私たち」と霧島さんが言った。笑っていた。「管理スキル、事務処理強化、観察眼強化。どれもランキングに出てこないやつ」


「でも成果は出ています」と俺は言った。


 宮代がレポートの数字を見た。


「三ダンジョン合計の今月の収益……前担当時代比で、三倍超えてる」と宮代が言った。「三人の地味スキルで、三倍。……なんか、かっこいいですね」


「かっこいいかどうかはわかりませんが、正しい方法でやっています」


「それがかっこいいって言ってるんです」と宮代が言った。


 霧島さんが書類をまとめながら「次は何に対応するんですか?」と訊いた。


「防衛型の最適化方針を詰める必要があります。攻略型と採掘型は手法が確立できた。防衛型は別の設計が必要です」


「また新しいことをやるんだ」と霧島さんが言った。「終わらないね」


「終わらない方がいいです。やることがある方がいい」


「そうですね」と霧島さんが言って、ファイルを閉じた。


 翌週の朝、俺が端末を確認していると、ニュースが流れていた。


「ダンジョン管理の民営化に関する議員提言が衆議院に提出されました——」


 同じ頃、第十七-Aのダンジョン内から飯塚さんの声が聞こえてきた。宮代が現地確認のために中に入っていた。


「白瀬さん、動くの早かったな」という声だった。


 俺は端末で記事を確認した。提言の提出日は五日前。白瀬が視察に来た翌日だった。



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