第27話 三つ目のダンジョン
「対応可能ですか?」というアルダの問いに、俺は少し考えてから答えた。
「防衛型の管理方法を確認してから判断します。資料がありますか?」
「送ります」とアルダが言った。「……一点、伝えておきます。本社の担当部長が"この管理員の実績を把握するよう"という指示を出しています。神崎さん、あなたはどういうつもりですか?」
「管理業務を規定通りに行っているだけです」
間があった。
「……そうですね」とアルダが言った。明らかに信じていない口調だった。
通信が切れた。
第十七-Cダンジョンの資料が届いた。霧島さんと一緒に内容を確認した。
「防衛型か」と霧島さんが言った。「攻略型でも採掘型でもない。また違う種類なんですね」
「侵入者の排除と重要施設の守護が主な目的です。ユーザーは攻略者ではなく、守備担当の隊員」
「つまり……ダンジョン自体が、外敵を防ぐための仕組みってこと?」
「そうです。市街地の外縁部に設置されているケースが多い。第十七-Cも郊外の立地です」
「収益はどうなんですか?」と宮代が訊いた。
「防衛型は単価が低い。でも国家機関との契約で稼働が保証されている。攻略型は来客数に依存するが、防衛型は安定した需要がある」
「じゃあリスクが低い?」
「そうです。代わりに上限も低い」
霧島さんが「三つになったね」と言った。次に「書類が三倍になる……」と続けた。でも声は沈んでいなかった。「でも、なんか充実してる。最初はひとつもまともに動いていなかったのに」
「そうですね」
「アルダさん、また声が変だった」と宮代が言った。「"どういうつもりですか"って聞いてくるのは、怖がってる感じがします。観察眼スキルでいつも見てるわけじゃないけど、声のトーンで何となくわかって」
「怖がっているというより、想定の範囲外のことが起きているから混乱しているんだと思います」
「でも本社の担当部長が把握するよう指示を出したって……それって、どういうことですか?」
「本社が俺の実績を直接追い始めたということです。アルダさんを通じた間接的な情報ではなく」
霧島さんが「それって、いいこと?」と訊いた。
「どちらとも言えません。注目されることにはメリットとリスクの両方があります」
「でも動いてるってことですよね」と宮代が言った。「何かが変わり始めてる」
「そうです」
翌日、三つのダンジョンの総合収益レポートを作成した。第十七-Aの攻略型。第十七-Bの採掘型。そして第十七-Cは引き継ぎ準備中。
数字を見た。
一年間の見込み総マナ収益。経費を差し引いた純収益。そこから俺個人のマナとして蓄積された残余分。
数字を計算した。比率を出した。
経費として合法的に受け取ったマナは、全体の数パーセントにすぎない。上位存在が吸い上げる量と比べれば微小だ。
でも——。
俺はノートに書いた。「仕組みをさらに使えば、もっと増やせる」。
経費申請の種類を増やす。担当ダンジョンを増やす。収益の総量を増やす。そして残余マナの比率を、規定の範囲で最大化する。
段階的に。一つずつ。
この計算をしているとき、霧島さんが声をかけた。
「神崎くん、何を計算してるの?」
「長期の見通しです」
「どのくらい先まで考えてる?」
「まだ決めていませんが——やれることが増えれば、先まで考えられます」




