第22話 採掘型の最適化
採掘型ダンジョンの鉱脈発掘スケジュールの設計に三日かかった。
データを分析すると、高品質の鉱脈が出る間隔が以前より長くなっていた原因は、管理されないまま放置されてダンジョン内のマナ分布が偏ったためだった。
鉱脈の出現位置を管理画面から調整した。高価値鉱脈が二週間に一度のペースで定期的に出るように設定する。採掘業者が来た時に必ず当たりが出る確率を上げる設計だ。
宮代に観察眼スキルで鉱脈位置を現地確認してもらいながら、細かく調整した。
「また良い鉱脈が出た」という声が採掘業者の間で広まり始めた。一週間後、宮代が「当たりダンジョンって有名になってきてます」と報告してきた。「採掘業者の人たちが喜んでて、遠くから来る人も増えてる」
月次収益レポートを確認した。第十七-Bの前月比、四十パーセント増。
「また増えた」と霧島さんが言った。「今度は採掘型で」
「種類が違っても最適化の考え方は同じです。ちょうど良い頻度で当たりを出す。それだけです」
「でもそれを実行できるのが管理権限なんですよね」と霧島さんが言った。
「そうです」
アルダから通信が来た。「十七-Bの収益向上について報告書を……また最適化したのですか」
「鉱脈の出現スケジュールを調整しました。管理権限内の操作です」
「……はい」とアルダが言った。少し間があって、「神崎さん、あなたは管理スキルの機能を全部把握しているのですか?」
初めての直接的な問いかけだった。
「まだ全部ではありませんが、主要な機能は把握しています」
「……マニュアルBを読んだんですか?」
「読みました。着任翌週に」
「……担当者の交代記録を確認する限り、マニュアルBを読んだ管理員は今までいませんでした」
「誰も開けていなかったので」
長い間があった。
「……そうですか」とアルダが言った。「わかりました。継続してください」
通信が切れた。
「アルダさん、なんか変わってきましたよ」と宮代が言った。「声の感じが。困惑から、別の何かに変わってる気がします」
「警戒じゃないかな」と霧島さんが言った。「良い方向の警戒。"この管理員は何かある"という感じの」
「どちらでも問題ありません」と俺は言った。「仕事は変わらないので」
その夜、今月の収益レポートをまとめながら、俺は考えた。
アルダが「前例がない」と言った。管理員がマニュアルを読むのも、収益最適化を進めるのも、前例がない。
前例がないということは——逆に言えば、俺が最初にやれることがある。これを次の手に繋げる。




