第19話 最初のマナ
※本作は第70話で完結予定です。
※毎日5話ずつ、07:00 / 12:00 / 18:00 / 21:00 / 23:00 に投稿予定です。
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三か月分の経費計上の記録を確認した。
管理端末の購入。業務学習資料。現地視察費。その合計が管理収益から差し引かれた後、残余マナとして管理者アカウントに計上されていた。
数値を見た。
少なかった。攻略者一人が一日に使うマナ量にも満たない。
でもゼロではなかった。
「……量は少ないが、これは間違いなく俺のマナだ」
「何ですか?」と宮代が訊いた。
「独り言です。残余マナを確認していました」
「どのくらい溜まったんですか?」
「数値は少ないですが、蓄積が始まっています」
残余マナで何ができるかを調べた。管理者アカウントのマナは、ダンジョン設備の拡張、モンスターの質の向上、ダンジョン空間の拡大に使えると記載があった。
試しに、ダンジョン空間の拡大を一単位試した。
翌日、宮代が現地確認から戻った。
「第十七Aが少し広くなってます」と宮代が言った。「攻略者たちが"あれ、広くなってないか"と話してました」
「機能しましたね」
「神崎さん、今度は広さを変えたんですか」と霧島さんが言った。「本当にいろんなことができるんだ」
「規定の範囲内であれば」と俺は言った。
宮代が「飯塚さんも"このダンジョン、なんか変わってるよな"と仲間に言ってましたよ」と報告した。「ちょっと楽しそうな顔してました」
マナを蓄積するほど、使えることが増える。
今は少量だが、担当ダンジョンが増えれば収益も増え、経費計上の規模も増え、残余マナも増える。雪だるま式に積み上がる構造だ。
いつか、この規模が大きくなれば——。
あまり先のことを考えるのは俺の習慣ではなかった。まずは目の前のことだ。
「担当追加申請の書類を送信します」と俺は言った。
「いつ結果が出ますか?」と霧島さんが訊いた。
「一週間前後だと思います」
送信した。
その夜、管理システムの受信ファイルフォルダを整理していると、見慣れないファイルがあった。
差出人はアルダだった。件名が「Re: 本社ノルマ変更Q2(担当者回覧用)」となっていた。
本社ノルマ変更——担当者回覧用。
俺は画面を見た。
これは……誤送信だろうか。




