第16話 非公開資料の謎
※本作は第70話で完結予定です。
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「上位存在管理システムの内部構造(非公開版)」を読むのに三日かかった。
内容は想像以上に詳細だった。上位存在のシステム設計思想。収益分配のロジック。そして、担当者——アルダのような役職——の職権範囲。
後者に関する記述が特に重要だった。
〔担当者の職権は、規定の範囲内での承認および却下のみとする。規定を超える例外申請については、上位組織の承認を必要とする〕
つまり、アルダには例外申請を単独で通す権限がない。規定の範囲内のことしか判断できない。
「この本の情報で、アルダさんの権限がわかりました」と俺は霧島さんに言った。
「どういうこと?」
「アルダさんに頼めることと頼めないことの境界線です。規定の範囲内なら承認しなければならない。それを超えるなら本社に上げないと動かせない」
「本社……上位存在の本社?」
「そういうものがあるようです」
霧島さんが「……管理局にいながらそういうことがわかるんだ」と言った。
「管理権限があれば情報にアクセスできます」
宮代が「この本、なんか普通じゃない感じがします」と言った。「観察眼スキルがうまく使えているのか自信ないですが……普通の本と質感が違う気がして」
「非公開版と書いてあります。管理権限保持者向けの内部資料らしい」
「どうやって来たんでしょうね。申請リストにはなかったのに」
管理システムの発注記録を確認した。「自動補完購入」という項目があった。
「経費申請に連動して、関連資料が自動手配される機能があるようです」
「……そんな機能があったの?」と霧島さんが言った。
「管理システムが、申請内容に関連する資料を自動で手配してくれる設定になっているようです」
「それって……つまり、申請するたびに関連情報が来る?」
「可能性があります」
宮代が「じゃあ上位存在側が、管理員に情報を与えるような仕組みを作ってるってことですか?」と言った。
「設計上そういう機能があるということです。なぜそうなっているかはわかりません」
霧島さんが「次は何を申請するの?」と訊いた。
「ダンジョン追加申請の書類を確認します。もう一か所担当できれば、収益も倍近くなります」
「担当を増やすんですか」
「増やせるなら増やした方がいい。同じ手間で倍の結果が出ます」
霧島さんが「……書類が倍になる」と言った。
「書類も増えます」
「……わかった。やります」




