第15話 経費申請の連打
※本作は第70話で完結予定です。
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承認事例が一件になった時点で、俺はリストを見直した。
次に必要なものは明確だった。上位存在のシステムをもっと深く理解するための資料。管理スキルについての専門書。そして現地視察のための機材。
二度目の経費申請を出した。「マナ経済学の専門書および上位存在行政システムの解説書、計十五冊」。
翌日、アルダから問い合わせが来た。
「専門書は管理業務に必要ですか?」
「上位存在のシステムを理解することで、より適切な管理が可能になります。理解が深まれば収益への貢献も大きくなります」
間があった。
「……それは、私には反論できません」とアルダが言った。「……規定上、問題ありません」
「ありがとうございます」
三度目の申請は翌週。「月次現地視察費用。交通費および現地巡回記録用機材の購入費」。
今度はアルダからの問い合わせが一日で来た。
「現地視察費は何回分ですか?」
「月三回程度を予定しています。管理精度の向上のため」
「……わかりました」
アルダの「……わかりました」が早くなってきていた。
三回の申請で届いた荷物を宮代が整理していた。本の箱が二つ。機材の箱が一つ。
「これ全部読むんですか?」と宮代が言った。十五冊の本の山を見ながら。
「読みます」
「全部?」
「必要な部分は全部」
「……神崎さん、それが普通だと思ってるんですよね」と宮代が言った。少し呆れた顔だった。
「読まないと知識にならないので」
霧島さんが「なんか、アルダさんとのやり取りがもうパターンになってきてるね」と言った。「申請が来る→問い合わせが来る→神崎くんが反論できない理由を言う→アルダさんが渋々認める。このループ」
「ループで問題ありません」
「アルダさん、大変だろうな」
「規定通りのことをされているだけです」
本の整理をしていると、一冊だけ他と雰囲気が違う本があった。
「上位存在管理システムの内部構造(非公開版)」という表紙だった。他の本は一般書籍の体裁だったが、これだけ制作元が違う印刷物だった。
「これ、申請リストにありましたか?」と俺は言った。
「えっと……」と宮代が確認した。「リストにある十五冊の中にはないですね」
「じゃあどこから?」
「管理局への荷物に混入してたのかも。あるいは申請システムが自動で追加した?」
俺は表紙をもう一度見た。「非公開版」という言葉が気になった。
「一般には出回らない本です」と俺は言った。「どこで手に入れたんだろう」
「管理局に送ってくれるってことは、管理員に見せていいってことじゃないですか?」と宮代が言った。
「かもしれません」
俺は本を開いた。最初のページに「本書は管理権限保持者向けの内部資料です」と書いてあった。
つまり、管理スキルを持つ者だけが読める権限を持つ本らしかった。
読み始めた。




