第17話 霧島の変化
※本作は第70話で完結予定です。
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「私も何かできないかな」と霧島さんが言った。
朝の掃除をしながらだった。宮代が資料を整理していて、俺が管理画面を開いていた。
「行政手続きと書類管理なら私の方が詳しいです」と霧島さんは続けた。「アルダへの報告書フォーマットも長年見てきたから。何をやればいいか教えてくれれば」
「では、承認事例リストの清書をお願いできますか」と俺は言った。「今はノートに書き連ねているだけで整理できていないので。それと、次の経費申請の書類準備も」
「どんな書式?」
「管理画面の申請フォームに沿った書式です。管理画面の操作は俺がやるので、中身の文章を整理してもらえると助かります」
「わかった。やってみる」
霧島さんが動き始めた。俺のノートを見ながら、承認事例を一覧表に清書した。承認日、申請内容、理由、アルダの反応。きちんと並んでいると、次の申請の根拠として使いやすくなる。
「宮代さんは現地確認を続けてもらえますか」と俺は言った。「データ記録もセットで」
「任せてください」と宮代が言った。「巡回記録のフォーマットも自分で作ってみます。観察眼スキルで見た変化を数値化できないか試してみます」
「それは助かります」
三人の役割が定まった。俺が分析と方針決定。霧島さんが書類と行政手続き。宮代が現地確認とデータ記録。
アルダから業務連絡が来たのは翌日だった。
「今月の収益レポート提出期限が三日後です。例月より詳細なデータを求めます。モンスター配置変更前後の収益比較、フロア別のマナ流量データ、攻略者動態の分析を含めること」
霧島さんが「詳細なデータを求めてきた……今まではそんなこと言わなかったのに」と言った。
「管理局のレポートが以前より詳しくなっているのを認識したんだと思います。だから要求も上がった」
「それって……俺たちを試してるってこと?」
「信頼しようとしているのかもしれません。詳しいデータが欲しいということは、参考にしている証拠です」
「三日で間に合いますか」と宮代が訊いた。
「チームで分担すれば間に合います」
三日間、三人でレポートを作った。俺が分析枠組みを設計し、宮代が現地データを収集し、霧島さんが文書を整理してフォーマットに落とした。
提出前日の夜、霧島さんが「……私、十年ここで働いてきて、こんなに仕事が充実するの初めてかもしれない」と言った。独り言のような声だった。
「今まではどうでしたか」と俺は訊いた。
「書類を作って送って怒られての繰り返し。何が目的でやってるのかよくわからなかった」
「今は目的が見えていますか」
「少しだけ。管理局がちゃんと機能する場所になれるかどうか、が目的、みたいな感じ」
「それでいいと思います」
「神崎くん、それ以上何か言わないの?」と霧島さんが言った。
「言うことがないので」
「……まあ、そういう人だったね」と霧島さんが笑った。
三日後、レポートを提出した。




