第13話 収益最適化
※本作は第70話で完結予定です。
※毎日5話ずつ、07:00 / 12:00 / 18:00 / 21:00 / 23:00 に投稿予定です。
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全フロアの最適化に一週間かかった。
第十七Aダンジョンは全十二フロアで構成されていた。各フロアのモンスター配置を、攻略者のランク帯と行動パターンのデータを参照しながら調整した。「ちょうど苦戦する難易度」を維持しながら、マナ消費量を最大化するポイントを探った。
宮代が毎日現地に行き、変化を確認して報告してきた。
「B4が少し難しくなりすぎてます。攻略者が撤退し始めてる」
「B4の東エリアの配置を戻します」
「B7は今がちょうどいいです。みんな苦戦してるけど誰も死んでない」
「B7の設定を記録します。他のフロアの基準にします」
霧島さんが週次収益レポートを出してきた。
「……前月比、二十二パーセント増加してます」
「想定より少し上振れしましたね」と俺は言った。
「二十二パーセント……神崎くん、これすごいことなんじゃないの?」
「悪くはないです」
「悪くない? 前月比二十二パーセントが? 前任者は毎月マイナスだったんだよ」
「マイナスは管理をしていなかったからです。管理をすれば上がります」
宮代が「管理するだけでここまで変わるんですね。ダンジョンって」と言った。
アルダからの定例連絡が来た。
「今月の収益向上について報告を受けた。方法を説明してください」
「モンスター配置を調整して、攻略者のマナ消費効率を上げました」
「……それは管理権限内の操作ですが」とアルダが言った。少し間があった。「こんな使い方をした担当者は初めてです」
「問題はありましたか?」
「……ありません。継続してください」
通信が切れた。
「アルダさん、口調が変わりましたよ」と宮代が言った。「観察眼スキルとは違うけど、声の感じが。最初より少し……丁寧になってる気がする」
「そうですか」
「神崎さんは気づきませんでした?」
「気づいてはいましたが、方針に影響しないので」
霧島さんが「……でも意味があることだよ」と言った。「アルダさんが口調を変えたってことは、見方が変わったってこと」
そうかもしれなかった。
翌週、飯塚が来た。
「なんかダンジョンの雰囲気が変わってるんだが」と飯塚が言った。「B4が前より歯ごたえある。なんで?」
「モンスター配置を調整しました」
「……お前が変えたのか?」
「はい」
「管理局の人間がダンジョンをいじれるとは知らなかった」と飯塚が言った。驚いているようだった。
「管理権限内の変更です。問題はありましたか?」
「問題というか……なんか妙に手ごたえがある。悪くはない」
宮代が後で「飯塚さん、怒ってないですよ。驚いてる」と言った。「観察眼スキルで表情を見てたんですが、困惑と……なんか、認めてる感じが混じってました」
「どちらでもいいです」と俺は言った。
「気にしないんですか?」
「飯塚さんがどう思うかより、数字の方が重要です」
「それはそうですけど」と宮代が笑った。「でも飯塚さんが認めるのって、珍しいことだと思うので」
翌日から、二か所目の経費申請を準備した。業務学習資料の購入。管理スキルの専門書と、ダンジョン設計に関する資料。承認事例が一件あるので、今度は通りやすいはずだ。




