第12話 モンスター配置変更の実験
※本作は第70話で完結予定です。
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高性能端末が届いた翌週、モンスター配置変更の実験をすることにした。
「実験、というのは?」と霧島さんが訊いた。
「B3フロアのゴブリンエリアを、一か所だけ変えてみます。宮代さんに現地で変化を確認してもらいます」
「ダンジョンの中身を本当に変えるんですか」と宮代が言った。
「機能がある以上、使えるかどうか試した方がいい。失敗しても元に戻せるか確認しています」
「元に戻せるんですか?」
「変更後三十分以内なら戻せる設定があります」
「じゃあ安全ですね」と宮代が言った。「行きます」
管理画面でB3フロアのゴブリン配置を一区画だけ変更した。配置変更は三十分後に反映されるという表示が出た。
「三十分待ちます」と俺は言った。
三十分後、宮代が現地に向かった。
俺は管理画面でマナ流量のデータを見ていた。変更直後から微妙に数値が変化している。攻略者が違う動きをしているらしかった。
四十分後、宮代が戻った。
「変わってました!」と宮代が興奮した声で言った。「本当にゴブリンがいなくなってた。周辺の他のモンスターの行動パターンも変わって、B3が少し難しくなってます」
「難しくなった?」
「ゴブリンがいなくなった分、周りのモンスターが広いエリアをカバーするようになったみたいで。攻略者たちが少し苦戦してました」
俺は数値を確認した。マナ流量が上がっていた。
「苦戦するとマナ消費が増えるわけですね」と霧島さんが言った。
「はい。適切な難易度で苦戦させれば、収益が上がる」
「配置を変えるだけで収益が変わるの?」
「変わりました。実証できました」
宮代が「神崎さん、これって全フロアでやったら?」と言った。
「次にやります。今回はまず機能確認でした」
「次はもっと大規模に変えるんですか」
「攻略者にとって"ちょうど良い難しさ"になるように最適化します。難しすぎると入らなくなる。簡単すぎると収益が下がる。中間点を探す」
「ゲームのバランス調整みたいですね」と宮代が言った。
「同じ考え方です」
霧島さんが「ダンジョンって変えられるんですね……」と言った。しばらく黙って、「私、ここで十年いて、そういう発想がなかった」と続けた。
「管理権限があるから変えられるんです。持っていない人には発想しようがない」
「そうか。……でも、もし大きく変えたら、攻略者が気づきますよね」と霧島さんが言った。
「気づきます。たぶん飯塚さんが来ます」
「来たらどうするんですか?」
「データで対応します」と俺は言った。「来てもらった方が、説明しやすい」




