第11話 1.イメチェンかな
「……」
街を歩く、一人の少女がいた。
十月も後半。長く続いた残暑はようやく去り、
街には秋の気配が広がり始めている。
数週間前まで薄着だった人々も、
今では長袖や上着を身にまとい、足早に行き交っていた。
穏やかな陽光が街並みを照らしている。
「……」
少女は足を止めた。
通り沿いのショーウィンドウの前に立ち、自分の姿を見つめる。
映っているのは、自分自身。
くるり、とその場で一回転する。
切り揃えられた前髪。
その奥にある赤い瞳は、どこか感情の色が薄い。
腰まで伸びたツインテール。
黒いセーラー服に、両脇へ大胆なスリットが入った黒のロングスカート。
足元には膝丈の厚底ブーツ。
以前とは違う装いだった。
「イメチェンかな?」
不意に声が掛けられる。
少女は振り向かない。
ただ、赤い瞳だけが声のした方へ向いた。
ショーウィンドウの店と隣の建物の間、昼間でも薄暗い裏路地。
そこに、一つの影が立っていた。
全身を覆う漆黒のマント。
風もないのに、その裾はゆらりと揺れている。
顔を覆うのは、模様一つない白い仮面。感情を映さない無機質な面。
そして――
頭上では赤い炎が静かに燃え続けていた。
「……まぁね」
少女は短く答える。
すると仮面の男は肩をすくめるように笑った。
「ほう。なかなか似合っているじゃないか、アヤカ君」
「そっちは済んだの?」
「あぁ、順調さ。全洋火薬庫から物資の調達も出来たよ」
アレクザールは裏路地から空を見上げた。
高層ビル群の隙間。
その向こうに、東京スカイツリーが青空へ伸びている。
人々の喧騒に車の走行音。
街を包む日常の音。
そのすべてを聞きながら、アレクザールは静かに呟いた。
「美しい街だ」
仮面の奥で微笑む。
「だからこそ、壊し甲斐がある。日本の中枢……花の都、大東京」
「……」
アレクザールの言葉に、アヤカは目を細めた。
「アレクザール」
「なんだい、アヤカ君」
「今どき、花の都大東京なんて言わない」
「え?」
思わず間の抜けた声が漏れる。
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