第7話 5.光るセンス
「じゃじゃーん! かわいいー!」
ホテルに荷物を置いた三人は、国際通りを訪れていた。
照りつける太陽。
この日の最高気温は、三十九度目前。
アスファルトから立ち上る熱気と、行き交う人々のざわめき。
むっとする空気の中、三人が立ち寄ったのは――土産物のTシャツショップだった。
その店内で、華が満面の笑みで掲げているのは――
一枚のTシャツ。
「……えびふりゃい」
「ぱらだいす……?」
冷と麦は、華の胸元に大きくプリントされた文字を読み上げる。
中央には、やたらデフォルメされた海老のイラスト。
無駄にキラキラした背景。
その上に踊る、謎の文字列。
――『えびふりゃい☆ぱらだいす』
「見てみて! このエビかわいい! ほら、おいしそう!」
華は裾をぴんっと引っ張り、ぐいっと前に突き出す。
無邪気そのものの笑顔。
対して、冷と麦は――
「……」
「……」
わずかに眉をひそめ、口を半開きにしたまま固まっていた。
(どういうセンスなんだろう……)
(……華ちゃんって、頭の中お花畑なのかしら)
数秒の沈黙。
そして――
「似合ってるよ、ね?」
「う、うん。似合ってるわね」
「ほんと!? でしょー!!」
ぱあっと顔を輝かせる華。
その様子を見て、冷と麦は小さくため息をついた。
(…まぁ、楽しそうだし、いっか)
(これはこれでアリなのかも、うん…)
店内の冷房の中、三人の温度差だけが、
少しだけ際立っていた。
「あ……そろそろ時間だね」
気づいた冷が、取り出したスマホの画面に目を落とす。
「バナナボートの?!」
「そうだよ。予約してあるから、時間までに行かないと後回しになるんだよね」
「じゃあ急がなきゃだ!」
「うんうん!」
店内のレジへ向かう麦に続いて、冷と華も早足でついていく。
「ところで、冷ちゃん。何のTシャツ買ったの? さっき店員さんに頼んでたわよね?」
「えっ?! え、えーっと……」
冷は動揺したように、視線を泳がせる。
「……秘密、かな」
「へぇー?」
首をかしげる麦は、不思議そうな顔をしていた。
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