第7話 3.楽しいひと時
「うわぁーーー! すっご!」
チェックインを終え、部屋に足を踏み入れた瞬間――
目の前に広がったのは、まさに極上の空間だった。
「へぇーー……ここに二泊するのね……」
麦は思わず言葉を失う。
まず目に飛び込んできたのは、大理石の内装。
壁も天井も、汚れひとつない白い輝きに包まれている。足元には、ふかふかと沈み込む赤い絨毯。
普段とはかけ離れた光景に圧倒されながら進むと、最初に三人を迎えたのは――三つ並んだベッドだった。
「でっか……!」
キングサイズのベッドがゆったりと配置され、
壁の装飾や調度品も、どれも高級ホテルらしい品のある輝きを放っている。
見上げれば、天井には堂々とシャンデリアが鎮座していた。
「これ、ほんとに当たりで来ていいやつ……?」
さらに左右にも部屋があり、右側の部屋に入ると、今度は巨大なテレビが二人の視線を奪う。
「でっか!? 映画館じゃんこれ!」
壁一面を覆うほどの画面。
その前には、黒い大理石とガラスでできたテーブル。ソファは重厚感のある黒革で、棚の木材も一目で高級と分かる質感だった。
「すご……全部高そう……」
そして反対側の部屋が気になった華と麦は、中央の部屋を抜け、そちらへ足を踏み入れる。
――次の瞬間、二人の足が止まった。
目の前にあったのは、ガラス張りの壁。
その向こうには、大きなバスタブ。一般的な家庭の風呂が小さく見えるほどの広さだ。
白いレンガ調の壁に、真っ白な床と棚。シャワーヘッドまで統一されたその空間は、どこか非現実的ですらあった。
「このお風呂……エッチだ……」
華が目を丸くする。
「丸見えよね……」
隣の麦は、少し引いたような眼差しで見ていた。少し遅れて入ってきた冷が、その様子を見て一言。
「落ち着いて。お風呂入る時は見えない様にできるから」
「え、そうなの!?」
「じゃなきゃ問題でしょ」
「だよね……」
ほっとしたような、少し残念そうな表情を浮かべる華に、麦が小さく吹き出した。
「さて、と……」
部屋を一通り見た三人は、ベッドのある部屋へ戻る。中央のベッドに集まり、冷がパンフレットを広げた。
「ホテルのロビーにあったの、持ってきた」
「おおぉ! さすが冷!」
「へぇ~、国際通りって色んなお店あるのね」
三人は頭を寄せ合い、パンフレットを覗き込む。
「二人は行きたいところある?」
「はい! はーい! 私はサーターアンダギーと紅芋タルト食べたい!」
「アタシは……サイコロステーキ食べたいのよね。冷ちゃんは?」
「えっと、わたしは……」
パンフレットの上をなぞっていた冷の指が、ぴたりと止まる。
視界に入ったのは、国際通りの中央付近にある
一軒のTシャツショップだった。
「……このお店、行きたい」
「どれどれー……ほほーん、これって文字入りTシャツのお店?」
「うん。一度でいいから、こういうの着てみたくて……」
「へー! じゃあアタシも何か作ろっかな」
「私も作る!」
ぱっと場の空気が明るくなる。
その様子を見ながら――
冷と麦は、それぞれ心の中で同じようなことを思っていた。
(華が食べ物以外に興味を……?)
(いったいどんなTシャツを作る気なのかしら……)
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