第七章 カワスジニウム
ある日、いつものように坑道を巡回していた時だった。
坑壁に、不思議な光を放つ鉱石が埋まっていた。
石炭の黒とは違う、深緑に青白く脈動するような輝き――。
(……なんだ、これ? こんな鉱石、見たことがない)
鑑定スキルを発動する。
【鑑定結果】
名称:カワスジニウム
特性:通常石炭の50倍以上の熱量を保持。燃焼時に有害ガスを一切排出しない。
備考:この世に存在しない未知の燃料。田川鉱脈限定。
「……マジかよ……これ、夢の燃料じゃねえか!」
◆◆◆
試しに小片をアイテムボックスに保存し、地上で炊き出し用の釜にくべる。
瞬間、轟音と共に白い炎が立ち上がり、釜はあっという間に沸騰した。
「なんじゃこりゃぁぁぁ!」
「米が一瞬で炊けたぞ!」
「しかも煙が出とらん……!」
炭鉱住宅の人々は目を丸くした。
炭鉱夫たちはざわめき、噂は瞬く間に広がっていった。
――田川の地下から、常識を覆す燃料が出た、と。
◆◆◆
その報告を受けた大田 仁も駆けつけてきた。
カワスジニウムの炎を目にした彼は、豪快に笑う。
「若旦那ァ! とんでもねぇもん見つけたな!
こいつがありゃ、炭鉱の未来どころか、日本そのものが変わっちまうぞ!」
「……ああ。だが同時に、国も外国も黙っちゃいない」
そう、カワスジニウムはあまりにも革命的すぎる。
炭鉱街を救うどころか、エネルギーの覇権を塗り替えてしまう。
◆◆◆
案の定、数日後。
通産省の役人が血相を変えてやってきた。
「君たちは……危険なものを掘り当てた。
その鉱石はすべて国が管理する。渡してもらう!」
背後には軍服姿の男たち。
どうやら政府だけではなく、アメリカGHQの影すらちらついていた。
だが、僕の隣で大田が一歩前に出る。
「ハッ! カワスジニウムは田川のもんや。仁義通さん連中にくれてやる筋合いはねぇ!」
背中合わせで構える僕と大田。
燃える炎のように輝くカワスジニウムが、坑道の奥で脈打っている。
(……これが、炭鉱の未来を賭けた第二の抗争になる……!)




